精神障害者保健福祉手帳とは?等級別のサービスと申請方法を解説

手帳型の冊子と申請書類、3段階の木製ブロックを木目のデスクに並べた写真 障害者手帳

Q. 精神障害者保健福祉手帳とは? → A. 精神疾患で長く生活に制約がある人に交付される、1級〜3級の障害者手帳です。うつ病・統合失調症・発達障害なども対象です。税金の控除や障害者雇用枠に加え、2025年4月からはJRの運賃割引も使えるようになりました。

手帳の所持者は年々増えています。厚生労働省の統計では、令和6年度末の交付台帳登載数は約154万7千人でした。前年度より7.6%増え、5年前の約1.3倍です。それでも「どんな病気で取れるのか」「何級だと何が使えるのか」がわかりにくい制度でもあります。私自身、調べ始めた当初は身体障害者手帳と同じ仕組みだと思い込んでいました。この記事では、対象・等級・サービス・申請と更新の流れを順に整理します。

この記事でわかること

  • 精神障害者保健福祉手帳の対象になる病気と、対象外になるケース
  • 1級・2級・3級の基準と、等級ごとの所持者数
  • 等級別に受けられるサービス(全国共通・地域ごと)
  • 2025年4月に始まったJR運賃割引の条件
  • 申請に必要な書類と、2年ごとの更新の流れ
  • 施設職員・支援者が手帳の相談を受けたときのポイント

精神障害者保健福祉手帳とは?制度の目的と対象

どんな人が取れる手帳なのでしょうか。精神疾患のため、長期にわたり日常生活や社会生活に制約がある人が対象です。根拠は精神保健福祉法で、1995年に創設されました。目的は、精神障害のある人の自立と社会参加を後押しすることです。

病名による限定はありません。国立精神・神経医療研究センターのこころの情報サイトでは、主な対象として次の病気を挙げています。

区分主な病気の例
統合失調症統合失調症
気分障害うつ病、双極性障害(躁うつ病)
てんかんてんかん
依存症薬物・アルコール依存症
器質性の障害高次脳機能障害、認知症
発達障害自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害
その他ストレス関連障害など

知的障害だけの場合は療育手帳

知的障害だけの人は、この手帳ではなく療育手帳の対象です。ただし、知的障害とあわせて精神疾患がある人は、精神障害者保健福祉手帳も申請できます。

また、手帳は初診日から6か月以上たってから申請します。診断されてすぐは申請できない点に注意してください。

3種類の障害者手帳の違いは、障害者手帳のメリットの記事で比較しています。

1級・2級・3級の違いは?等級の基準と所持者数

等級は何で決まるのでしょうか。病気の状態と、生活にどれだけ支障があるか(能力障害)の両面から総合的に判断されます。病名だけで等級が決まるわけではありません。

等級基準(厚生労働省の判定基準の要旨)令和6年度末の所持者数
1級日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度13万9,406人
2級日常生活が著しい制限を受けるか、著しい制限を加える必要がある程度89万7,292人
3級日常生活・社会生活が制限を受けるか、制限を加える必要がある程度51万735人

※所持者数は厚生労働省「令和6年度衛生行政報告例の概況」(有効期限切れを除く)より。

もっとも多いのは2級で、全体の約58%です。前年度からの伸びは3級が10.0%と最も大きくなっています。

言葉が抽象的なので、イメージに置き換えてみます。あくまで目安ですが、1級は身のまわりのことにほぼ常に援助が必要な状態です。2級は、援助がなければ日常生活が難しい場面が多い状態。3級は、日常生活はおおむね送れるものの、仕事や対人関係に配慮が必要な状態を指します。

等級の判定は、主治医の診断書をもとに都道府県・指定都市の審査で決まります。身体障害者手帳・療育手帳の等級との違いは、障害者手帳の等級の記事で整理しています。

等級別に受けられるサービスは?全国共通の支援

手帳を持つと何が使えるのでしょうか。全国どこでも共通のサービスと、自治体や事業者ごとに異なるサービスの2種類があります。まずは全国共通のものです。

サービス1級2級3級
所得税の障害者控除40万円(特別障害者)27万円27万円
住民税の障害者控除30万円(特別障害者)26万円26万円
相続税の障害者控除対象対象対象
NHK受信料の減免全額免除・半額免除全額免除全額免除
障害者雇用率へのカウント対象対象対象
生活福祉資金の貸付対象対象対象

税金の控除

もっとも多くの人が使うのが、所得税・住民税の障害者控除です。1級は「特別障害者」として控除額が大きくなります。家族の扶養に入っている場合は、家族の税金が安くなる仕組みです。詳しい金額や手続きは障害者控除の記事で解説しています。

NHK受信料の減免

NHK受信料は2つの条件で減免されます。全額免除は、手帳を持つ人がいて世帯全員が市町村民税非課税の場合です。半額免除は、1級の人が世帯主で受信契約者の場合に限られます。2級・3級は半額免除の対象にならない点に気をつけてください。

障害者雇用枠での就職

手帳があると、企業の障害者雇用枠に応募できます。2018年から精神障害者も企業の雇用義務の対象になりました。2026年7月には民間企業の法定雇用率が2.7%に引き上げられ、求人の選択肢は広がっています。

このほか、1級の人は自動車税・軽自動車税の減免が受けられる場合があります。条件は都道府県ごとに異なるため、税事務所で確認してください。

2025年4月からJR運賃割引が始まった

鉄道の割引は使えるのでしょうか。2025年4月1日から、JRグループで精神障害者保健福祉手帳による運賃割引が始まりました。長年、身体・知的障害だけが対象だった制度が、精神障害にも広がった形です。割引率はいずれも5割です。

区分対象の等級本人だけで乗る場合介護者と乗る場合
第1種1級片道100キロ超の普通乗車券など本人・介護者1名とも普通乗車券・定期券などが割引
第2種2級・3級片道100キロ超の普通乗車券など12歳未満の本人の定期券のみ介護者も割引

※神戸市・山口県などの自治体案内をもとに整理。詳細は各JRの案内で確認してください。

注意したいのは手帳の記載です。割引を使うには、手帳の「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額」欄に第1種または第2種の記載が必要です。有効期限切れの手帳や、刻印入りの顔写真が貼られていない手帳では割引を受けられません。

以前の精神障害者保健福祉手帳は、写真の貼付が任意でした。古い手帳を写真なしのまま使っている人は、更新のタイミングなどで窓口に相談してください。

私が自治体の案内を読み比べていて気づいたことがあります。「写真」と「減額欄」の注意書きが、どの自治体でも目立つ位置にあるのです。窓口での問い合わせが多い論点なのだと感じました。

私鉄・バス・タクシー・航空の割引は、事業者ごとに対象や割引率が違います。乗る前に各事業者のサイトを確認しておくと安心です。

地域・事業者ごとに異なるサービス

自治体独自の支援はあるのでしょうか。多くの自治体・事業者が、交通・住まい・通信などで独自の支援を用意しています。代表的なものは次のとおりです。

  • 公営バス・地下鉄などの運賃割引や無料乗車券
  • 公営住宅の優先入居
  • 携帯電話料金の割引
  • 自治体独自の福祉手当
  • 美術館・映画館・公共施設の入場料割引

内容は自治体によって大きく違います。手帳を受け取るときに、窓口でサービスの一覧(しおり)をもらっておくと便利です。

生活保護を受けている場合は、1級・2級で障害者加算の対象になることがあります。条件は生活保護の障害者加算の記事で整理しています。

申請方法と必要書類

どうやって申請するのでしょうか。住んでいる市区町村の障害福祉の窓口に、申請書・診断書・写真を出すのが基本です。審査は都道府県・指定都市が行い、交付まではおおむね2か月かかります。

必要なものは次のとおりです(東京都福祉局の案内をもとに整理)。

書類ポイント
申請書市区町村の窓口でもらえます
医師の診断書初診日から6か月以上たってから作成。申請日から3か月以内のもの
本人の写真縦4cm×横3cm、脱帽・上半身、1年以内に撮影
マイナンバーがわかるもの個人番号カードなど

障害年金を受けている人は年金証書で申請できる

精神の障害で障害年金を受けている人は、診断書の代わりに年金証書の写しなどで申請できます。この場合、手帳は年金と同じ等級で交付されます。診断書代がかからないため、費用を抑えられます。

診断書の作成には、医療機関によって数千円程度の費用がかかることが多いです。また多くの自治体では、自立支援医療(精神通院医療)と同時に申請すると、診断書を1通にまとめられます。通院費の負担も気になる人は、窓口で同時申請できるか聞いてみてください。

申請の全体の流れは障害者手帳の申請方法の記事で3種類別に解説しています。

有効期限は2年|更新と等級変更の手続き

期限はあるのでしょうか。精神障害者保健福祉手帳の有効期間は2年間で、更新が必要です。身体障害者手帳には原則として期限がないため、ここが大きな違いです。

更新は、有効期限の3か月前から申請できます(東京都の場合)。必要書類は新規申請とほぼ同じで、改めて診断書か年金証書の写しを出します。更新を忘れて期限が切れると、税の控除やJR割引が使えなくなるため注意してください。

症状が重くなった場合は、期限を待たずに等級変更を申請できます。反対に症状が軽くなって手帳が不要になれば、返還も可能です。更新手続きの詳細は障害者手帳の更新の記事も参考にしてください。

手帳を持つデメリットや注意点はある?

取って困ることはないのでしょうか。手帳を持っていることが、本人の同意なく周囲に知られる仕組みはありません。使うかどうか、誰に見せるかは本人が選べます。

ただし、いくつか負担はあります。2年ごとに診断書を用意する手間と費用。サービスを使うたびに手帳を提示する心理的な負担もあります。一般雇用で働く場合、会社に伝える義務はありません。

手帳と障害年金は別の制度で、等級も別々に判定されます。手帳が2級でも、障害年金は不支給になることがあります。年金の金額や等級の目安は、障害年金の金額の記事に、精神の障害での等級の目安は精神疾患と障害年金の記事にまとめています。デメリットの詳しい整理は障害者手帳のデメリットの記事をご覧ください。

施設職員・支援者が相談を受けたときのポイント

福祉の現場で、手帳について相談を受けることは多いはずです。支援者ができることは、情報を整理して本人が選べるようにすることです。

1つ目は、更新時期の把握です。精神の手帳は2年ごとに期限が来ます。本人の同意を得て期限を記録しておくと、更新漏れによる控除や割引の空白を防げます。

2つ目は、JR割引の条件の確認です。写真のない古い手帳を持っている利用者はいないでしょうか。遠出の予定がある人には、減額欄の記載も含めて早めに確認を促してください。

3つ目は、取得を勧めすぎないことです。手帳を持つかどうかは本人が決めることです。メリットとデメリットを並べて伝え、判断は本人に委ねるという線引きが、信頼関係を守ります。

障害福祉サービスそのものは手帳がなくても使える場合があります。制度の全体像は障害者総合支援法の記事で解説しています。

よくある質問

Q1: 精神障害者保健福祉手帳は何の病気で取れますか?

A1: 統合失調症、うつ病・双極性障害、てんかん、依存症、高次脳機能障害、発達障害などが対象です。病名による限定はなく、長期にわたり日常生活や社会生活に制約があるかどうかで判断されます。知的障害だけの場合は療育手帳の対象です。

Q2: 精神の手帳は何級が多いですか?

A2: 令和6年度末の時点では2級が約89万7千人で最も多く、全体の約58%です。3級が約51万1千人、1級が約13万9千人と続きます。前年度からの伸びは3級が10.0%と最も大きくなっています。

Q3: 精神障害者保健福祉手帳でJRの割引は使えますか?

A3: 2025年4月1日から使えるようになりました。1級は第1種、2級・3級は第2種として5割引が受けられます。ただし手帳の減額欄に第1種・第2種の記載があり、刻印入りの顔写真が貼られている必要があります。

Q4: 手帳の申請はいつからできますか?

A4: 精神疾患で初めて医師の診察を受けた日から6か月以上たってから申請できます。診断書は申請日から3か月以内に作成されたものが必要です。精神の障害で障害年金を受けている人は、年金証書の写しで申請できます。

Q5: 精神障害者保健福祉手帳に有効期限はありますか?

A5: 有効期間は2年間で、更新が必要です。東京都の場合、有効期限の3か月前から更新の申請ができます。期限が切れると、税の控除やJR割引などが使えなくなるため注意してください。

Q6: 手帳を持っていると会社に知られますか?

A6: 手帳の所持が本人の同意なく会社に伝わる仕組みはありません。一般雇用で働く場合、会社に伝える義務もありません。障害者雇用枠で働く場合や、年末調整で障害者控除を受ける場合は、会社に知らせることになります。

Q7: 手帳を取ると障害年金ももらえますか?

A7: 手帳と障害年金は別の制度で、等級も別々に審査されます。手帳を持っていても障害年金が受給できるとは限りません。反対に、精神の障害で障害年金を受けている人は、年金証書の写しで同じ等級の手帳を申請できます。

この記事を書いた人:support-s-log編集部

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