障害者手帳のタクシー割引は10%?福祉タクシー券も解説

タクシーのミニチュアと手帳型IDカード、乗車チケットを並べた障害者手帳のタクシー割引のイメージ 障害者手帳

Q. 障害者手帳があるとタクシーは安くなる?
A. 多くのタクシー会社で、メーター料金から10%引きになる割引があります。全国一律の法律による制度ではなく、タクシー事業者ごとの判断による割引です。身体障害者手帳・療育手帳(愛の手帳)・精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持つ方が対象になります。

この記事でわかること

  • タクシー会社の10%割引の対象になる手帳と仕組み
  • 自治体が発行する「福祉タクシー券」とタクシー会社の割引の違い
  • 福祉タクシー券の内容は自治体によってどう違うか(比較表)
  • 乗車時の提示方法とミライロIDへの対応状況
  • 迎車料金・同乗する介護者の扱い

タクシーの障害者割引は「10%引き」の一言で説明されがちです。しかし実際には、仕組みの異なる2つの制度があります。タクシー会社による運賃そのものの割引と、自治体が発行する福祉タクシー券です。この2つを混同すると、使えるはずの助成を見落とすことがあります。まずはタクシー会社の割引から確認していきましょう。

タクシー会社の10%割引とは?対象になる手帳と仕組み

Q. タクシー会社の割引はどんな仕組み?
A. メーター料金に0.9を掛けた金額になり、10円未満は切り捨てです。対象になるのは、身体障害者手帳・療育手帳(愛の手帳)・精神障害者保健福祉手帳のいずれかを持つ方です。

この割引は国が定めた制度ではありません。タクシー事業者が独自に行っている割引です。筆者が練馬区・神奈川県・鳥取県など複数の自治体の案内を確認しました。割引率はどこもメーター料金の10%で共通していました。一方で、対応する手帳の範囲には差があります。

手帳の種類対応状況の目安
身体障害者手帳ほぼ全事業者が対応
療育手帳(愛の手帳)ほぼ全事業者が対応
精神障害者保健福祉手帳対応が広がっているが、未対応の事業者も残る

精神障害者保健福祉手帳は、事業者によって対応が分かれる手帳です。鳥取県では、県内のタクシー会社全社が割引に対応しています。一方、一部の事業者のみが対応している地域もあります。乗車前に「精神障害者保健福祉手帳の割引はありますか」と確認すると確実です。

この10%割引には、等級による制限がありません。身体障害者手帳の1級から7級まで、どの等級でも同じ割引を受けられます。障害者手帳の等級によって対象が絞られる制度とは、この点が異なります。

利用方法はシンプルです。乗車時に手帳の写真が貼られた面を提示するだけで、特別な事前申請はいりません。手帳のコピーでは割引を受けられないため、原本を携帯しておく必要があります。すべてのタクシーで利用できるわけではないため、乗車前に乗務員へ確認する習慣をつけておきましょう。

福祉タクシー券とタクシー会社の割引はどう違う?

Q. 福祉タクシー券と10%割引は同じ制度?
A. 別の制度です。10%割引はタクシー会社による運賃そのものの割引です。福祉タクシー券は市区町村が発行する利用券で、1枚につき一定額が助成されます。

福祉タクシー券は、対象者に年に数十枚が交付される利用券です。1回の乗車で1枚(または料金に応じて複数枚)を使うと、運賃からその分が差し引かれます。タクシー会社の10%割引と違い、所得制限や等級による対象の絞り込みがある自治体が多いのが特徴です。利用には事前の申請と交付の手続きが必要になります。

項目タクシー会社の10%割引自治体の福祉タクシー券
運営主体タクシー事業者市区町村
対象対象手帳の提示があれば誰でも等級・所得制限など自治体ごとの条件あり
割引・助成の内容メーター料金の10%引き1枚500円前後の利用券(自治体差あり)
手続き不要(乗車時に手帳を提示)事前の申請・交付が必要
併用一部自治体では両方使える同上

東京都練馬区の案内では、タクシー会社の割引と福祉タクシー券は併用できるとされています。1回の乗車で両方を使えば、負担をさらに抑えられます。お住まいの自治体の案内で、併用の可否を確認してみましょう。障害者手帳そのものの基本的なメリットを広く知りたい方は、障害者手帳のメリットもあわせてご覧ください。

福祉タクシー券の内容は自治体でどう違う?主な例を比較

Q. 福祉タクシー券はどこでも同じ内容?
A. 自治体によって対象者・助成額・交付枚数が大きく異なります。住んでいる市区町村の制度を個別に確認する必要があります。

筆者がさいたま市など複数の自治体の案内を調べました。助成額は1枚500円前後というケースが多い一方で、対象になる手帳の等級や所得制限にはかなり幅がありました。主な例を一覧にしました。

自治体対象の目安助成額・枚数の目安
さいたま市市民税非課税、身体1・2級など1枚500円上限、乗車1回1枚(料金が2倍以上なら2枚)
横浜市各区で定める対象者1枚500円上限、有効期間は10月〜翌年9月
新宿区区の対象基準に該当する方月額4,000円分(燃料費助成と併給不可)
世田谷区下肢・体幹等1〜3級、愛の手帳1・2度など施設入所・長期入院の方は対象外
長崎市身体1・2級で車椅子常用、療育A判定など500円券48枚で1冊

(各市区のウェブサイトの案内をもとに作成。条件・金額は自治体ごとに異なり、見直しが行われることもあります。最新の内容は、お住まいの自治体の障害福祉担当窓口で確認してください)

表からも分かるとおり、「身体障害者手帳1・2級」という条件は比較的よく見られます。しかし所得制限の有無や除外条件は、自治体ごとに個別です。施設入所中や長期入院中の方を対象外とする自治体がある点にも注意しましょう。助成額や対象条件がここまで違うのは、福祉タクシー券が市区町村の独自事業として運営されているためです。国が一律に金額や対象を定めている制度ではありません。

乗車するときの提示方法とミライロIDへの対応

Q. タクシーに乗るとき、何を見せればいい?
A. 原則として、手帳の写真が貼られた面を乗務員に見せるだけです。一部の地域では、スマートフォンアプリ「ミライロID」での提示にも対応しています。

ミライロIDは、障害者手帳の情報をスマートフォンに登録し、画面提示で本人確認に使えるアプリです。秋田県では、県内タクシーの利用時にミライロIDでの本人確認に対応したと案内されています。対象は身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳です。紙の手帳での提示も、従来どおり引き続き利用できます。

ただし、ミライロIDへの対応は事業者ごとに違います。一部のタクシー会社のみが対応している地域もあれば、地域全体で対応が進んでいる地域もあります。日の丸交通のように、会社単位でミライロIDに協力している例も見られます。スマートフォンの故障や電池切れで提示できなくなることもあります。紙の手帳も必ず携帯しておくと安心です。

迎車料金・同乗する介護者の扱いは?

Q. 迎車料金や介護者の同乗も割引の対象になる?
A. 迎車料金は多くの自治体で割引の対象外です。介護者の扱いも、同乗区間のみ対象とする自治体と、一定の条件で広く対象とする自治体に分かれます。

横浜市の案内によると、迎車料金(配車の際にかかる料金)は割引の対象になりません。割引されるのは、乗車してからのメーター料金部分のみです。配車を依頼する際は、迎車料金が別途かかることを前提に考えておきましょう。

介護者の同乗についても、自治体によって扱いが異なります。横浜市では、介護者も割引の対象になりますが、手帳を持つ本人と同乗している区間に限られます。一方、鹿児島市のように第1種の手帳を持つ方の介護者を広く対象とする案内もあります。「介護者も割引になる」と思い込まず、乗車前に確認しておくことが欠かせません。

移動手段ごとに同伴者の扱いが違うのは珍しくありません。飛行機の障害者割引では介護者1人まで同一便で割引されます。一方、ETC割引では運転する本人が条件になるなど、制度ごとに条件は変わります。タクシー会社によっては、深夜早朝割引などの他の割引と障害者割引を重ねて使えないことがあります。両方を適用できるかどうかも、乗車時に乗務員へ確認しておきましょう。

福祉タクシー券と自動車燃料費助成、どちらを選ぶべき?

Q. 福祉タクシー券と自動車燃料費助成は両方使える?
A. 多くの自治体で、同じ年度内の併用はできません。どちらか一方を選ぶ必要があります。

さいたま市・新宿区をはじめ、複数の自治体で福祉タクシー券と自動車燃料費助成は同一年度内に併用できないと案内されています。自分の車(または家族が運転する車)を日常的に使う機会が多いなら、燃料費助成が向いています。外出のたびにタクシーを利用する機会が多いなら、福祉タクシー券が向いています。障害者用駐車場(パーキングパーミット)を使って自分の車で外出する方は、燃料費助成の方が実態に合っていることもあります。

どちらを選ぶべきか迷ったときは、直近半年ほどの外出手段を振り返ってみましょう。タクシーの利用頻度が月に数回程度なら、福祉タクシー券が向いています。ほぼ毎日自分の車で外出するなら、燃料費助成が向いています。年度の途中からの切り替えができるかどうかも、申請窓口に確認しておくとよいでしょう。

施設職員・家族が利用をすすめるときの3つのポイント

障害福祉施設で働く方や、ご家族の外出をサポートする立場の方向けに、実務で押さえておきたい点を3つ紹介します。

1つ目は、タクシー会社の10%割引と福祉タクシー券を分けて案内することです。この2つを混同したまま案内すると、利用者が「もう割引を使っている」と思い込んでしまいます。その結果、福祉タクシー券の申請を見送ってしまうことがあります。別の制度であることを最初に伝えましょう。

2つ目は、精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方には、事前に乗務員へ確認するよう案内することです。対応が分かれる手帳のため、当日になって割引を断られると利用者が気落ちしてしまいます。事前確認のひと手間が、気持ちの負担を減らします。

3つ目は、福祉タクシー券と燃料費助成の併用不可ルールを、申請の前に伝えることです。すでに燃料費助成を受けている利用者が、後から福祉タクシー券を申請して断られるケースを防げます。

よくある質問

Q1. タクシー会社の割引は、全国どこのタクシーでも使える?

A: いいえ。国の法律で統一された制度ではなく、タクシー事業者ごとの判断による割引です。地域や会社によって対応が分かれるため、乗車前に乗務員へ確認してください。

Q2. 精神障害者保健福祉手帳でも10%割引は使える?

A: 対応する自治体・事業者は増えていますが、一部の事業者はまだ対応していません。乗車前に確認すると確実です。

Q3. 福祉タクシー券はどこで申請できる?

A: お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口(福祉事務所・区役所の福祉保健センターなど)で申請します。手帳と印鑑が必要になることが多く、所得に関する書類の提出を求められる自治体もあります。

Q4. 福祉タクシー券は使い切れなかったら翌年に持ち越せる?

A: 多くの自治体で、交付された年度内のみ有効です。使い切れなかった分を翌年度に持ち越せる自治体は多くありません。期限は交付時に確認してください。

Q5. ミライロIDに対応していないタクシー会社ではどうすればいい?

A: 紙の手帳を提示すれば、通常どおり割引を受けられます。ミライロIDは提示方法の選択肢の一つで、紙の手帳の代わりに必須というわけではありません。

Q6. 介護保険の訪問介護サービスとしての「介護タクシー」とこの記事の割引は同じもの?

A: 違います。この記事で紹介しているのは、一般のタクシーに適用される運賃割引・利用券です。介護保険の訪問介護サービスとしての介護タクシーは、要介護認定を受けた方の通院などを介助付きで送迎する別の制度で、利用条件や料金の仕組みも異なります。

Q7. 迎車料金がかかる場合、全額を支払う必要がある?

A: 多くの自治体・事業者で、迎車料金は割引の対象外とされています。配車を依頼する際は、迎車料金が別途発生することを前提に考えておきましょう。

Q8. 手帳を忘れてしまったら、割引は受けられない?

A: 原則として、乗車時に手帳(またはミライロID)を提示できない場合、割引は適用されません。外出の際は、手帳を必ず携帯する習慣をつけておいてください。

Q9. 他の市区町村に引っ越した場合、福祉タクシー券はそのまま使える?

A: いいえ。福祉タクシー券は発行した市区町村内でのみ有効で、他の市区町村に引っ越すと新たに申請し直す必要があります。転居先の対象条件・助成額が以前と異なることも多いため、早めに転居先の窓口に確認してください。

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