Q. 障害者のETC割引とは? → A. 身体障害者手帳か療育手帳を持つ人が乗る車の高速道路料金が、半額になる制度です。正式には「有料道路における障害者割引」といいます。ETCで使うには、市区町村の窓口かオンラインで、車とETCカードを事前に登録する必要があります。
通院や通所、家族の送迎で高速道路を使う人にとって、通行料は毎月の固定費に近いもの。ところが「手帳を見せればすぐ使えるのか」「家族の車でもいいのか」は意外と知られていません。私自身、調べる前は料金所で手帳を見せれば割引されると思っていました。実際は、事前の申請をしていないと割引を受けられません。この記事では、NEXCO各社の公式案内をもとに、条件と手続きを順に整理します。
この記事でわかること
- ETC割引(有料道路の障害者割引)の対象になる人と手帳
- 本人が運転する場合と、家族などが運転する場合の違い
- 登録できる車・登録しなくても使える車の範囲
- 窓口とオンラインでの申請方法、必要なもの
- 深夜割引などとの関係、有効期限、うっかり違反の注意点
- 施設職員・支援者が送迎や外出支援で押さえたいポイント
障害者のETC割引とは?対象になる人と手帳
誰がこの割引を使えるのでしょうか。使い方は2つあります。身体障害者手帳を持つ人が自分で運転する場合と、重度の障害がある人が同乗して家族が運転する場合です。
全国の有料道路事業者が統一して実施している制度です。NEXCO3社の高速道路のほか、首都高速などの有料道路でも使えます。割引率は50%です。NEXCO東日本の公式案内では、通常料金の半額と説明されています。ETCの場合はETC通常料金が基準です。10円未満の端数は切り上げです。
| 使い方 | 対象になる人 | 使える手帳 |
|---|---|---|
| 本人運転 | 身体障害者手帳を持つ人(等級は問わない) | 身体障害者手帳のみ |
| 介護運転 | 重度の障害がある人が同乗し、本人以外が運転 | 身体障害者手帳・療育手帳 |
ここでいう「重度」は、手帳の「旅客鉄道株式会社旅客運賃減額」欄の第1種と同じ範囲です。JRの割引と同じ区分なので、障害者のJR割引の記事で第1種を確認した人は、そのまま目安にできます。
精神障害者保健福祉手帳は対象外
JRの割引と違う点がひとつあります。精神障害者保健福祉手帳は、2026年9月時点で有料道路の割引の対象になっていません。NEXCO西日本のよくある質問でも、拡大には関係機関との調整が必要という説明です。
JRの運賃割引は2025年4月から精神の手帳にも広がりました。有料道路も同じだと思い込んで申請に行くと、窓口で断られてしまいます。制度の拡大は今後あり得るため、最新の状況はNEXCO各社の案内で確かめてください。
本人運転と介護運転の違いは?
2つの使い方は、何が違うのでしょうか。運転する人と、手帳の区分が違います。割引の効果はどちらも同じ半額です。
本人運転は、身体障害者手帳を持つ人が自分でハンドルを握る場合です。等級にかかわらず、身体障害者手帳があれば対象になります。申請の際には運転免許証が必要です。
介護運転は、重度(第1種)の人が同乗し、家族や支援者が運転する場合です。療育手帳の人は、この介護運転でのみ対象になります。重度の身体障害がある人は、本人運転と介護運転の両方を登録できます。
手帳には、認められた使い方が赤字で記載されます。本人運転なら「道路」、介護運転も含むなら「道路介護」です。自分がどちらで登録されているかは、手帳のこの記載を見ればわかります。
等級と第1種・第2種の関係は、障害者手帳の等級の記事で詳しく解説しています。
割引になる車は?事前登録は1人1台まで
どの車でも割引になるのでしょうか。事前に登録できる車は障害のある人1人につき1台です。ただし2023年3月27日から要件が緩和され、登録していない車でも使える場面が増えました。
NEXCO西日本の障がい者割引制度の案内をもとに整理すると、次のようになります。
| 車の種類 | 事前登録 | 登録なしで本人運転 | 登録なしで介護運転 |
|---|---|---|---|
| 自家用の乗用車・一部の貨物車など | できる | 使える | 使える |
| レンタカー・代車・知人の車 | できない | 使える | 使える |
| 介護タクシー・一般タクシー | できない | 使えない | 使える |
| 福祉有償運送の車 | できない | 使えない | 使える |
登録できる自家用車は、所有者が本人・配偶者・親族などに限られます。法人名義の車や、仕事で使う車は対象外です。軽トラックなど、後部座席のない貨物車も対象になりません。
登録していない車は「料金所で手帳を見せる」
登録していない車で使う場合は、ETCでノンストップ通過はできません。料金所の係員がいるレーンで、手帳の必要な記載を見せて割引を受けます。タクシーを使う場合は、予約時か乗車前に「障害者割引を使いたい」と乗務員に伝えてください。ETCカードを抜けない車両では割引が使えないためです。
なお、登録していない車で使う場合でも、手帳への割引の記載(事前申請)自体は必要です。一度申請しておけば、車ごとに新しい手続きをする必要はありません。
ETCで使うには?登録の流れと必要なもの
ETCレーンをノンストップで通って割引を受けるには、どうすればよいのでしょうか。車の事前登録に加えて「ETC利用申請」を行い、登録完了の通知を待つ必要があります。
窓口で申請する場合の主な持ち物は次のとおりです。
| 持ち物 | 必要な場面 |
|---|---|
| 身体障害者手帳または療育手帳 | 常に必要 |
| 車検証(電子車検証は記録事項がわかるもの) | 車を登録するとき |
| 運転免許証 | 本人運転を申請するとき |
| 本人名義のETCカード | ETCで通るとき |
| ETC車載器のセットアップ証明書など | ETCで通るとき |
必要書類は申請の内容や自治体で少し変わるため、事前に窓口へ確認すると確実です。親族関係の確認のため、住民票を求める窓口もあります。
窓口で申請する流れ
手順は大きく4つです。
- 手帳に住所が記載されている市区町村の障害福祉の窓口に行く
- 申請書を書き、手帳に割引の記載と登録内容のシールを貼ってもらう
- 窓口で受け取った証明書を、切手を貼って登録係へ郵送する
- 登録完了の通知(通常3週間ほど)が届いてからETCレーンを使う
通知が届く前にETCレーンを通ると、割引は適用されません。それまでは係員のいるレーンで、手帳とETCカードを見せてください。郵送の手間を考えると、遠出の予定がある人は1か月ほど前に動き出すと安心です。代理人による申請もできます。
オンライン申請はスマホとマイナンバーカードで
窓口に行くのが難しい人には、2023年3月27日に始まったオンライン申請があります。有料道路における障害者割引制度のオンライン申請のサイトから、スマートフォンで手続きします。
ただし、使えるのは自家用車を事前登録してETC利用申請をする人に限られます。マイナンバーカードの読み取りが必要なので、マイナポータルに対応したスマートフォンを用意してください。
ETCカードは原則として本人名義
ETCで割引を受けるには、障害のある本人名義のETCカードを1枚登録します。例外は、重度の障害がある子どもが介護運転だけで使う場合です。2026年4月1日からは、20歳未満なら親権者などの名義のカードも登録できます。以前は18歳未満でした。20歳の誕生日以降も使うには、本人名義のカードへの切り替えが必要です。
深夜割引・休日割引とは一緒に使える?
ETCの深夜割引や休日割引と、障害者割引は重ねられるのでしょうか。重ねては使えず、割引率が高い方が1つだけ適用されます。NEXCO西日本のよくある質問でそう案内されています。
多くの場面では、割引率50%の障害者割引が適用されることになります。「深夜に走ればさらに安くなる」とは考えないでください。一方で、ETCマイレージサービスは原則として併用でき、割引後の料金に対してポイントがつきます。
仮の金額で計算してみると
具体的な数字で見てみましょう。以下は説明のための仮の金額で、実際の料金ではありません。
| 項目 | 割引なし | 障害者割引あり |
|---|---|---|
| 片道のETC料金 | 2,850円 | 1,430円(10円未満切り上げ) |
| 往復 | 5,700円 | 2,860円 |
| 月4往復した場合 | 22,800円 | 11,440円 |
通院で月に4往復するケースなら、1か月で1万円以上の差になります。私が試算したときも、年間にすると想像以上の金額でした。送迎の頻度が高い家庭ほど、申請の手間に見合う効果があります。
有効期限と更新、うっかり違反に注意
割引はずっと使えるのでしょうか。有効期限があり、期限が切れると割引は使えません。
新規や変更の申請では、申請日からその後2回目の誕生日までが有効期限です。更新の申請では、3回目の誕生日まで(最長2年2か月)になります。更新は期限の2か月前から前日まで受け付けています。ETC利用申請をしている人には、期限が近づくと郵送で案内が届きます。ETCを使っていない人には通知がないため、手帳のシールで期限を確かめてください。
車を買い替えたり、ETCカードを再発行したりしたときは変更申請が必要です。ご当地ナンバーへの交換でも登録番号が変わるため、手続きがいります。登録と違う車やカードで通ると、割引は適用されません。
不正利用は5年間の停止と割増金
対象外の使い方をすると、重い措置があります。本人が乗っていないのに登録車で割引を受けるなどの違反が見つかると、割引は5年間停止されます。そのうえ、免れた額の2倍の割増金を払うことになります。
家族が「いつもの車だから」と本人不在で通勤に使ってしまうのが、典型的なうっかり違反です。割引は障害のある本人が乗っているときだけと、家族全員で共有しておいてください。
施設職員・支援者が送迎や外出支援で押さえたいポイント
通所の送迎や外出支援を担う職員にとっても、この制度は知っておきたいものです。ポイントは3つあります。
1つ目は、事業所の車は対象外になりやすいことです。法人名義の車は登録できず、登録なしでも使えません。一方、福祉有償運送や介護タクシーなら、重度の人が乗る介護運転として使えます。どの車で移動するかによって割引の可否が変わる点を、家族への説明に加えてください。
2つ目は、精神の手帳の人への説明です。JRの割引は使えても、有料道路の割引は現時点で使えません。利用者や家族が混同しやすいため、制度ごとに違いを伝えておくと、窓口での行き違いを防げます。
3つ目は、有効期限の確認です。ETCを使わない家庭には期限の通知が届きません。個別支援計画の見直しなどのタイミングで、手帳のシールを一緒に見る習慣をつけると安心です。
手帳の更新の流れは障害者手帳の更新の記事で解説しています。交通割引を含む手帳の支援全体は障害者手帳のメリットの記事にまとめました。これから手帳を取る人には、障害者手帳の申請方法の記事も参考になります。
まとめ:事前の申請さえ済めば、高速道路の料金は半額に
障害者のETC割引は、身体障害者手帳か療育手帳を持つ人のための、有料道路の半額割引です。本人運転は身体障害者手帳のみ、介護運転は重度(第1種)の人が対象になります。
ETCでノンストップ通過するには、車1台とETCカードの登録、そして登録完了の通知が必要です。登録していないレンタカーやタクシーでも、料金所で手帳を見せれば使える場面があります。まずは手帳に「道路」「道路介護」の記載があるかを確認することから始めてみてください。
よくある質問
Q1: 料金所で手帳を見せるだけで割引になりますか?
A1: 事前の申請をしていなければ割引になりません。市区町村の障害福祉の窓口かオンラインで申請し、手帳に割引の記載を受ける必要があります。申請済みであれば、登録していない車でも料金所で手帳を見せて割引を受けられます。
Q2: 精神障害者保健福祉手帳でもETC割引は使えますか?
A2: 2026年9月時点では、精神障害者保健福祉手帳は有料道路の障害者割引の対象外です。対象は身体障害者手帳と療育手帳です。JRの運賃割引とは扱いが異なるため注意してください。
Q3: 家族の車でも割引を受けられますか?
A3: 受けられます。事前に登録できるのは1人1台ですが、所有者が本人・配偶者・親族などの自家用車なら登録できます。登録していない知人の車やレンタカーでも、料金所で手帳を見せれば割引を受けられます。
Q4: ETCカードは家族名義でも登録できますか?
A4: 原則は障害のある本人名義のカードです。例外は、重度の障害がある20歳未満の人が介護運転だけで使う場合です。このときは親権者などの名義のカードも登録できます。この年齢の範囲は2026年4月1日に18歳未満から20歳未満へ広がりました。
Q5: 深夜割引と障害者割引は両方適用されますか?
A5: 重ねては適用されません。割引率が高い方が1つだけ適用されます。ETCマイレージサービスは原則として併用でき、割引後の料金に対してポイントがつきます。
Q6: 登録完了の通知が届く前に高速道路を使いたいときは?
A6: 係員のいるレーンを通り、手帳の記載とETCカードを見せてください。通知の前にETCレーンをノンストップで通ると、割引は適用されません。通知は郵送から通常3週間ほどで届きます。
Q7: 有効期限が切れたらどうなりますか?
A7: 期限が過ぎると割引は使えません。更新は期限の2か月前から前日まで受け付けています。期限を過ぎた場合は、新規の申請をやり直すことになります。
この記事を書いた人:support-s-log編集部


コメント