精神疾患で障害年金はもらえる?うつ病・統合失調症の等級の目安を解説

日常生活能力の評価シートと等級の目安表が置かれた木目のデスク 障害年金

Q. 精神疾患でも障害年金はもらえるの? → A. もらえます。うつ病・統合失調症・双極性障害・発達障害・知的障害などは、障害年金の対象です。等級は病名ではなく「日常生活にどれだけ援助が必要か」で決まります。判定には国のガイドラインが示す目安表が使われます。

実は、障害年金を新たに請求する人の多くは精神の障害です。厚生労働省の資料では、令和5年度の新規決定のうち約7割が精神障害の診断書によるものでした。それでも「心の病気は対象外では」と思い込み、請求をあきらめる人は少なくありません。私自身、制度を調べる前は、身体の障害が中心の制度だと思っていました。この記事では、対象となる病気、等級の目安の読み方、働いている場合の扱いまで順に整理します。

この記事でわかること

  • 障害年金の対象になる精神疾患と、原則対象外になる病気
  • うつ病・統合失調症などの等級(1級・2級・3級)の考え方
  • 「日常生活能力の判定」と「程度」から等級の目安を読む方法
  • 働きながらでも受給できるのか、就労の扱い
  • 不支給が増えた背景と、請求前に準備したいこと
  • 支援者や施設職員が請求をサポートするときのポイント

精神疾患で障害年金はもらえる?対象になる病気

どんな精神疾患が対象になるのでしょうか。障害認定基準の「精神の障害」に含まれる病気なら、病名を問わず請求できます。対象は大きく6つのグループに分かれます。

区分主な病気の例
統合失調症・妄想性障害など統合失調症、統合失調感情障害、妄想性障害
気分(感情)障害うつ病、双極性障害(躁うつ病)
症状性を含む器質性精神障害高次脳機能障害、認知症、アルコールなどの依存症の一部
てんかんてんかん(発作の頻度・重さで判定)
知的障害知的障害
発達障害自閉スペクトラム症、ADHD、学習障害など

一方で、原則として対象外になる病気もあります。

神経症・人格障害は原則対象外

パニック障害・強迫性障害・社交不安障害などの神経症は、原則として認定の対象になりません。症状が長く続き、重く見える場合でも同じ扱いです。

ただし例外があります。神経症でも精神病の病態を示している場合は、統合失調症やうつ病に準じて扱われます。診断書に、ICD-10の病態区分(F2やF3など)とあわせて病態が記載されているかがポイントです。人格障害には、この例外もありません。

「パニック障害だからダメ」と決めつけず、うつ状態を併発していないか、主治医に一度確認してください。

精神の障害年金の等級はどう決まる?1級・2級・3級の基準

等級は何で決まるのでしょうか。病名や症状の重さそのものより、「日常生活や仕事にどの程度の制限があるか」で決まります。等級ごとのおおまかなイメージは次のとおりです。

等級状態のイメージ受け取れる年金
1級身のまわりのことがほとんどできず、常に援助が必要障害基礎年金・障害厚生年金
2級日常生活に著しい制限があり、多くの場面で援助が必要障害基礎年金・障害厚生年金
3級労働に著しい制限がある障害厚生年金のみ

3級は厚生年金だけにある等級です。初診日に国民年金だった人は、2級以上でないと受給できません。会社員時代にうつ病で初めて受診した人と、自営業や学生のときに受診した人では、ここで差が出ます。

等級ごとの具体的な金額は、障害年金の金額を早見表でまとめた記事で整理しています。

等級の目安表の読み方|日常生活能力の判定と程度

目安表とは何でしょうか。診断書の「日常生活能力の判定」と「程度」を組み合わせて、等級の目安を出す表です。2016年9月に厚生労働省が施行した精神の障害に係る等級判定ガイドラインで定められた仕組みです。

日常生活能力の判定(7項目×4段階)

主治医は次の7項目を4段階で評価します。前提は「一人暮らしをしたと仮定した場合」の状態です。

  • 適切な食事
  • 身辺の清潔保持
  • 金銭管理と買い物
  • 通院と服薬
  • 他人との意思伝達及び対人関係
  • 身辺の安全保持及び危機対応
  • 社会性

4段階は、軽い順に「できる」を1点、「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」を4点として数値化します。7項目の平均点が「判定平均」です。

日常生活能力の程度(5段階)

もう一つの物差しが、生活全体を5段階で評価する「程度」です。

程度状態(精神障害の場合)
(1)精神障害を認めるが、社会生活は普通にできる
(2)家庭内の日常生活は普通にできるが、社会生活には援助が必要
(3)家庭内の単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要
(4)日常生活の身のまわりのことも、多くの援助が必要
(5)身のまわりのこともほとんどできず、常時の援助が必要

障害等級の目安表

この2つを組み合わせたものが、次の目安表です。

判定平均程度(5)程度(4)程度(3)程度(2)程度(1)
3.5以上1級1級または2級---
3.0以上3.5未満1級または2級2級2級--
2.5以上3.0未満-2級2級または3級--
2.0以上2.5未満-2級2級または3級3級または非該当-
1.5以上2.0未満--3級3級または非該当-
1.5未満---非該当非該当

※障害基礎年金の場合、表の「3級」は「2級非該当」と読み替えます。「-」は目安の設定がない組み合わせです。出典は厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」。

たとえば7項目が「3・3・3・2・3・3・3」なら、合計20点で判定平均は約2.86。程度が(4)なら、目安は2級です。

ただし、この表はあくまで目安にすぎません。実際の等級は、病状の経過や療養状況、生活環境、就労状況などを合わせた「総合評価」で決まります。

うつ病・統合失調症・発達障害で見られるポイント

病気ごとに見られる点は違うのでしょうか。目安表は共通ですが、総合評価で重視される要素は病気ごとに異なります。ガイドラインが挙げる主なポイントを整理します。

統合失調症

発病からの経過と、最近1年程度の症状の変動が見られます。幻覚・妄想などの症状に加え、意欲の低下や感情の平板化といった陰性症状の有無も判断材料です。陰性症状が長く続き、自己管理が著しく難しければ1級または2級が検討されます。

うつ病・双極性障害(気分障害)

今の症状だけでなく、うつや躁の期間・頻度、これまでの経過が見られます。適切な治療を続けても重い症状が長引く場合は、1級または2級が検討されます。症状を頻繁に繰り返す場合も同じです。「治療を続けているのに良くならない」という経過を、診断書と申立書の両方で示すことが欠かせません。

発達障害・知的障害

発達障害は、知能指数が高くても、対人関係や意思疎通が難しければ考慮されます。音や光などの感覚過敏も判断材料の一つです。知的障害では、療育手帳の区分や特別支援教育を受けた経歴が見られます。

発達障害や知的障害は、初診日が20歳前になることが多い病気です。その場合は「20歳前傷病による障害基礎年金」になります。本人の所得による支給制限がある点に注意してください。

働きながらでも受給できる?就労の扱い

働いていると受給できないのでしょうか。働いているという事実だけで、日常生活能力が高いとは判断されないとガイドラインに明記されています。仕事の内容や職場で受けている援助まで確認したうえで判断する、という考え方です。

具体的には、次のような働き方は受給の妨げになりにくいとされています。

働き方ガイドライン上の扱い
就労継続支援A型・B型、就労移行支援1級または2級を検討
障害者雇用制度による就労1級または2級を検討
一般企業でも同程度の援助を受けている2級を検討

一般企業で働く場合も、月収だけでなく就労の実態を総合的に見るとされています。頻繁な欠勤や遅刻、職場での意思疎通の難しさはありませんか。あれば、診断書や申立書に具体的に書いてもらいましょう。

私が申立書の書き方を調べていて気づいたのは、勤務日数や時間だけを書いた例が多いことです。それだけでは実態より軽く見られかねません。配置の配慮や周囲のフォロー、仕事の後に寝込んでしまう様子まで書き込むと、就労の実態が伝わります。

不支給が増えている?令和6年度の認定状況

最近、審査は厳しくなっているのでしょうか。令和6年度は精神障害の不支給割合が上がり、国が対応策を打ち出しました。要点は、2025年6月に厚生労働省が公表した令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書のとおりです。

項目内容
精神障害の非該当割合令和5年度6.4% → 令和6年度の抽出調査で12.1%
主な要因目安より下の等級で不支給になった事例の割合が上昇
主な対応策全ての不支給事案を複数の認定医で審査、職員による等級案の記載を廃止など
過去事案令和6年度以降の精神障害等の不支給事案を点検し、必要なら支給決定をやり直す

目安表で2級に当たる人でも、総合評価で下位等級とされる事例が目立っていたことになります。報告書を受けて審査の運用は見直されています。とはいえ、目安表の数字だけに頼らず、生活の実態を書類で具体的に伝えることが引き続き大切です。

令和6年度以降に精神の障害で不支給となった人は、国の点検の対象です(審査請求で裁決済みの事案を除く)。日本年金機構の公表情報を確認しておくと安心です。

請求前に準備したいこと

何から準備すればよいのでしょうか。審査の中心は、医師の診断書と「病歴・就労状況等申立書」です。申立書は本人や家族が書きます。

初診日を確認する

最初に、初めて精神科や心療内科を受診した日(初診日)を確定させます。最初は内科で不眠を相談していた、というケースも多いものです。同じ病気で初めて医師にかかった日が初診日になるため、受診歴を時系列で書き出してください。障害認定日は、原則として初診日から1年6か月後です。

日常生活の様子を主治医に伝える

診察時間は短く、医師が生活の細部まで把握しているとは限りません。7項目それぞれについて、困っている場面をメモにして渡すと、診断書に実態が反映されやすくなります。

  • 食事:用意されないと食べない、1日1食になっている
  • 清潔:数日入浴できない、着替えができない
  • 金銭:衝動買いが続く、家賃の支払いを忘れる

グループホームや家族との同居で生活が安定している人も、「単身で生活したら必要になる支援」が考慮されます。支援があるからできていることは、支援がなければできないこととして伝えて構いません。

手続きの全体像は障害年金の申請方法をまとめた記事で解説しています。つまずきやすい点は障害年金がもらえない人の特徴の記事も参考にしてください。

精神障害者保健福祉手帳との関係

手帳と年金の等級は同じなのでしょうか。精神障害者保健福祉手帳と障害年金は別の制度で、等級も別々に判定されます。手帳が2級でも、年金は不支給になるケースがあります。

一方で、年金から手帳への連動はあります。精神の障害で年金を受給している人は、年金証書の写しで手帳を申請できます。交付される手帳は、年金と同じ等級です。診断書が不要になるため、費用と手間を抑えられます。

手帳の等級の考え方は障害者手帳の等級の記事で、手帳で受けられるサービスは精神障害者保健福祉手帳の記事で整理しています。

施設職員・支援者が請求をサポートするときのポイント

福祉の現場では、利用者から障害年金の相談を受けることも多いはずです。支援者が一番力になれるのは、日常の様子を客観的な記録として残すことです。

まず、支援記録を申立書や主治医への情報提供に活用できないか、本人の同意を得て検討してください。「声かけがないと服薬を忘れる」といった記録は、判定7項目にそのまま対応します。

次に、グループホームや就労継続支援で受けている援助の内容を、具体的に言葉にして本人に渡すことです。ガイドラインでは、支援のおかげで安定している人も、支援がない状態を想定して判断します。

最後に、受給の可否や等級を支援者が断定しないことです。判断は年金事務所や社会保険労務士につなぐ、という線引きが、本人にとっても支援者にとっても安心です。受給後の手続きは障害年金の更新の記事も参考にしてください。

よくある質問

Q1: うつ病で障害年金は何級になりますか?

A1: 症状と日常生活の制限の程度によって、1級・2級・3級のいずれか、または非該当になります。ガイドラインの目安では、日常生活の多くの場面で援助が必要な状態(程度(4)など)であれば2級が目安になります。3級は初診日に厚生年金に加入していた人だけが対象です。

Q2: 適応障害やパニック障害でも障害年金はもらえますか?

A2: 神経症に分類される病気は、原則として障害年金の対象外です。ただし、うつ病や統合失調症に準じる精神病の病態を示していると診断書に記載されていれば、対象として扱われます。まずは主治医に病態を確認してください。

Q3: 精神疾患で障害年金を受けながら働けますか?

A3: 働けます。ガイドラインでは、働いていることだけで日常生活能力が高いとは判断しないとされています。就労継続支援や障害者雇用で働いている場合は1級または2級が検討され、一般企業でも受けている援助の内容が考慮されます。

Q4: 日常生活能力の判定平均はどう計算しますか?

A4: 診断書の7項目を、軽い順に1点から4点で数値化し、合計を7で割って求めます。たとえば合計20点なら判定平均は約2.86です。この平均と、生活全体を5段階で評価する「程度」を組み合わせて等級の目安を出します。

Q5: 精神障害者保健福祉手帳があれば障害年金ももらえますか?

A5: 手帳と障害年金は別の制度で、等級も別々に判定されます。手帳を持っていても、障害年金の審査に通るとは限りません。反対に、精神の障害で障害年金を受給している人は、年金証書の写しで同じ等級の手帳を申請できます。

Q6: 発達障害で障害年金を請求するとき、初診日はいつになりますか?

A6: 発達障害の症状で初めて医師の診察を受けた日が初診日です。20歳前に初診日がある場合は「20歳前傷病による障害基礎年金」となり、保険料の納付要件は問われない一方、本人の所得による支給制限があります。

Q7: 精神の障害年金が不支給になったらどうすればいいですか?

A7: 決定を知った日の翌日から3か月以内であれば、審査請求で不服を申し立てられます。また、令和6年度以降の精神障害等の不支給事案は、国が点検を進めています。日常生活の実態が診断書に反映されていたかを見直し、再請求も含めて社会保険労務士などに相談してください。

この記事を書いた人:support-s-log編集部

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