障害者の就労支援とは?移行・A型・B型の違いと選び方

週間スケジュール表や名札、軽作業用の紙箱を並べた就労支援のイメージ 制度解説

Q. 障害者の就労支援とは? → A. 障害のある人が働く力をつけ、自分に合った働き方を見つけるための福祉サービスです。一般企業への就職をめざす「就労移行支援」、働く場を提供する「就労継続支援A型・B型」が中心です。2025年10月からは、進路選びを手伝う「就労選択支援」も始まりました。

利用者は全国で55万人を超えます。厚生労働省の資料では、2026年3月時点でB型だけでも約42万6千人が利用しています。一方で「移行とA型は何が違うのか」「自分はどれを使えるのか」がわかりにくい制度でもあります。私自身、調べ始めたころは「A型の方がB型より上」という順位のようなものだと思い込んでいました。実際は、目的と働き方がまったく違う別のサービスです。この記事では、5つのサービスの違いと選び方を、国の最新データで整理します。

この記事でわかること

  • 就労支援の5つのサービス(移行・A型・B型・定着・選択)の違い
  • A型の平均賃金とB型の平均工賃(令和6年度の実績)
  • サービス別の一般就労への移行率
  • 2025年10月に始まった就労選択支援と、B型の利用条件の変化
  • 利用料の目安と、申請から利用開始までの流れ
  • 施設職員・支援者が相談を受けたときのポイント

障害者の就労支援とは?5つのサービスの全体像

就労支援には、どんなサービスがあるのでしょうか。障害者総合支援法にもとづく就労系の福祉サービスは5種類です。目的で分けると「就職をめざす」「働く場を得る」「就職後に続ける」「進路を選ぶ」の4つになります。

サービス目的雇用契約利用期間利用者数
就労移行支援一般企業への就職なし原則2年約3万8千人
就労継続支援A型雇用されて働くあり制限なし約8万7千人
就労継続支援B型自分のペースで働くなし制限なし約42万6千人
就労定着支援就職後の職場定着ー最長3年約2万1千人
就労選択支援働き方の選択なし原則1か月約1千人

※利用者数は厚生労働省「就労系障害福祉サービスの概要」の国保連2026年3月実績を丸めた数字です。

数字を見ると、利用者の約4分の3がB型に集中しています。いずれも「訓練等給付」に分類されるサービスです。介護の必要度を示す障害支援区分の認定は、原則として利用の条件になりません。障害福祉サービス全体の中での位置づけは、障害福祉サービスの種類の記事で解説しています。

就労移行支援とは?一般企業への就職をめざす訓練

就労移行支援は、一般企業で働くことをめざす人の「就職準備の学校」のようなサービスです。原則65歳未満で、企業への就職が見込まれる人が対象になります。

事業所では、ビジネスマナーやパソコン操作などの訓練を受けます。そのうえで、企業での実習、求人探し、面接の練習へと進むのが一般的な流れです。就職したあとも、職場に慣れるまでの相談に乗ってもらえます。

利用期間は原則2年

利用できる期間は標準24か月です。市町村の審査で必要と認められた場合に限り、最大1年の延長ができます。雇用契約は結ばないため、訓練中の給料は原則としてありません。

一般就労への移行率は60.2%

国の統計では、令和6年に就労移行支援から一般企業へ就職した人は16,827人でした。サービスの利用を終えた人のうち60.2%が一般就労に移行しています。10年ほど前は40%台だったため、実績は着実に伸びています。

ただし、この数字は全国平均です。就職率や定着率は事業所ごとに大きく違います。見学のときに「直近の就職者数」と「半年後の定着率」を必ず聞いてください。

就労継続支援A型・B型とは?働く場を提供するサービス

A型とB型の違いは何でしょうか。答えは雇用契約を結ぶかどうかです。どちらも一般企業で働くことが難しい人に、働く場と訓練を提供します。利用期間に上限はありません。

A型は雇用契約を結んで働く

A型では、事業所と雇用契約を結んで働きます。最低賃金以上の給料が支払われ、労働関係の法律も適用されます。条件を満たせば雇用保険にも加入します。

厚生労働省の「平均工賃(賃金)月額の実績」では、令和6年度のA型の平均賃金は月額91,451円でした。短時間勤務で働く人も多いため、フルタイムの給料より低めになります。対象は原則18歳以上65歳未満です。

B型は自分のペースで働く

B型は雇用契約を結ばず、体調や体力に合わせて通います。週1日・1日数時間から通える事業所もあります。作業の対価は「給料」ではなく「工賃」として支払われます。

令和6年度のB型の平均工賃は月額24,141円でした。前年度より約1,500円増えています。工賃だけで生活するのは難しいため、障害年金などと組み合わせて暮らす人が多い印象です。年金額の目安は障害年金の金額の記事にまとめています。

A型とB型の比較表

2つのサービスの違いを表にまとめます。

項目A型B型
雇用契約ありなし
収入の名称賃金(最低賃金以上)工賃
平均月額(令和6年度)91,451円24,141円
年齢原則18〜64歳制限なし
通う頻度事業所の勤務日に合わせる週1日から相談できる所もある
一般就労への移行率29.2%11.8%

移行率は、令和6年に利用を終えた人のうち一般企業に就職した人の割合です。B型でも年に6,118人が一般就労に移っています。B型から始めて段階的に働く時間を増やす道も、現実的な選択肢のひとつです。

2025年10月開始の就労選択支援とは?B型の入口が変わった

就労選択支援とは何でしょうか。本人の希望や適性を短期間で評価し、合う働き方を一緒に選ぶ新しいサービスです。2025年10月1日に始まりました。

期間は原則1か月です。事業所での作業体験や聞き取りを通して、得意なことや配慮が必要なことを整理します。結果は本人や支援者が集まる会議で共有され、進路選びの材料になります。

B型を新たに使うには原則として就労選択支援が必要

2025年10月から、新しくB型を利用する人は原則として就労選択支援のアセスメントを受けることになりました。ただし、次のいずれかに当てはまる人は対象外です。

  • 企業やA型で働いた経験があり、年齢や体力の面で雇用が難しくなった人
  • 50歳以上の人
  • 障害基礎年金1級を受けている人

国の資料では、2027年4月以降はA型を新たに使う人にも広げる予定とされています。制度が始まって1年足らずで、事業所はまだ全国に約420か所です。近くに事業所がない地域では、就労移行支援事業所などが代わりにアセスメントを行います。

この制度の狙いは「なんとなくB型」を減らすことだと、私は資料を読んで受け止めました。本当は一般就労をめざせる人が、選択肢を知らないまま進路を決めてしまう。そうしたミスマッチを防ぐための仕組みです。

就労定着支援とは?就職後の「続ける」を支える

就職はゴールではありません。就労定着支援は、就職して6か月が過ぎた人の職場定着を最長3年間支えるサービスです。

支援員が月1回以上、本人と面談します。生活リズムの乱れや職場の人間関係など、仕事を続けるうえでの困りごとを一緒に整理します。必要に応じて企業側とも調整してくれます。

就職後6か月までは、就労移行支援などの事業所がそのままフォローします。7か月目からこのサービスに切り替わる流れです。

就労支援の利用料はいくら?負担上限額の目安

利用料はかかるのでしょうか。原則1割負担ですが、世帯の所得に応じて月額の上限があります。多くの人は無料で利用しています。

世帯の区分月額の負担上限
生活保護0円
市町村民税非課税(低所得)0円
市町村民税課税(所得割16万円未満)9,300円
上記以外37,200円

18歳以上の場合、ここでいう「世帯」は本人と配偶者だけです。親と同居していても、親の収入は含めません。区分の詳しい考え方は、厚生労働省の障害者の利用者負担のページで確認できます。

A型は給料をもらいながら利用料を払う形です。A型の事業所によっては、独自に減免している例もあります。昼食代や交通費は別にかかることが多いため、見学時に確認してください。

就労支援を使うまでの流れ

申請はどこでするのでしょうか。住んでいる市区町村の障害福祉の窓口が入口です。障害者手帳がなくても、医師の診断書などで利用できる場合があります。

一般的な流れは次の5ステップです。

  1. 事業所を探して見学・体験利用をする
  2. 市区町村の窓口で利用を申請する
  3. 相談支援事業所がサービス等利用計画案をつくる
  4. 市区町村が支給を決定し、受給者証が届く
  5. 事業所と契約して利用を始める

申請から利用開始までは、一例として1〜2か月ほどかかります。自治体の混み具合によって前後します。

障害者手帳の有無で迷う場合は、障害者手帳のメリットの記事も参考にしてください。精神疾患のある人は精神障害者保健福祉手帳の記事で、障害者雇用枠との関係を説明しています。

自分に合うのはどれ?就労支援の選び方

どのサービスを選べばよいのでしょうか。判断の軸は「今すぐ一般企業で働きたいか」と「週に何日通えるか」の2つです。

今の状態検討したいサービス
2年以内に企業へ就職したい就労移行支援
雇用されて働きたいが企業は不安A型
体調に波があり短時間から始めたいB型
何が向いているかわからない就労選択支援
就職したが続けられるか不安就労定着支援

表はあくまで入口の目安です。最終的には本人の希望、医師の意見、アセスメントの結果をあわせて決めます。

見学で確認したい4つのポイント

事業所の質には差があります。見学のときは、次の点を具体的に聞いてみてください。

  • 作業内容や訓練のプログラムが本人の関心に合っているか
  • 直近1年の就職者数と、就職後の定着率
  • 送迎や昼食の有無、自宅からの通いやすさ
  • 体調が悪いときの休み方や連絡の仕方

特別支援学校の生徒の場合、在学中の実習で事業所を体験するケースが多くあります。卒業後の進路については特別支援学校高等部の記事で紹介しています。

施設職員・支援者が相談を受けたときのポイント

福祉の現場で働く人が、利用者や家族から就労の相談を受けることもあります。大切なのは「今の選択は将来変えられる」と伝えることです。

1つ目は、サービス間の移動は可能だと伝えることです。B型からA型へ、A型から就労移行支援へと、段階を踏んで移る人もいます。

2つ目は、収入の話をセットでしておくことです。A型の給料が増えると、障害年金や生活保護の額に影響するケースがあります。具体的な金額は年金事務所や福祉事務所で確認するよう案内してください。

3つ目は、制度の変わり目を押さえておくことです。2025年10月の就労選択支援の開始で、B型の入口は変わりました。2027年4月にはA型にも広がる予定です。相談を受ける側が古い情報のままだと、利用者の手続きが遠回りになりかねません。

まとめ

就労支援は、目的に応じて5つのサービスに分かれます。一般企業をめざすなら就労移行支援、雇用されて働くならA型、自分のペースで働くならB型が入口です。

令和6年度の平均月額は、A型の賃金が91,451円、B型の工賃が24,141円でした。一般就労への移行率は、就労移行支援が60.2%と最も高くなっています。2025年10月からは、B型を新たに使う前に就労選択支援を受けるのが原則になりました。

まずは市区町村の窓口か相談支援事業所に相談し、気になる事業所を2〜3か所見学してみてください。

よくある質問

Q1: 障害者手帳がなくても就労支援は使えますか?

A1: 手帳がなくても、医師の診断書や意見書などで障害が確認できれば利用できる場合があります。発達障害や難病の人も対象です。判断は市区町村が行うため、住んでいる地域の障害福祉の窓口に確認してください。

Q2: 就労継続支援A型とB型はどちらが収入が多いですか?

A2: A型の方が多くなっています。令和6年度の平均月額は、A型の賃金が91,451円、B型の工賃が24,141円でした。A型は雇用契約を結ぶため、最低賃金以上の給料が支払われます。B型は雇用契約がなく、体調に合わせて通える分、収入は少なめです。

Q3: 就労移行支援は何年使えますか?

A3: 標準の利用期間は24か月(2年)です。市町村の審査で必要と認められた場合に限り、最大1年まで延長できます。A型・B型には利用期間の上限がありません。

Q4: 就労支援の利用料はかかりますか?

A4: 原則1割負担ですが、所得に応じて月額の上限があります。生活保護や市町村民税非課税の世帯は0円です。18歳以上の場合、世帯の所得は本人と配偶者のみで判断するため、多くの人が無料で利用しています。

Q5: 就労選択支援は必ず受けないといけませんか?

A5: 2025年10月以降、新たにB型を利用する人は原則として受ける必要があります。ただし、50歳以上の人と障害基礎年金1級を受けている人は対象外です。企業やA型で働いた経験があり、年齢や体力の面で雇用が難しくなった人も除かれます。A型については2027年4月以降に広げる予定とされています。

Q6: B型から一般企業に就職することはできますか?

A6: できます。令和6年にB型から一般企業へ就職した人は6,118人でした。利用を終えた人に占める割合は11.8%です。B型で生活リズムを整えてから、A型や就労移行支援を経て就職する人もいます。

Q7: 就労支援と障害年金は同時に受けられますか?

A7: 同時に受けられます。就労支援を利用していることだけを理由に、障害年金が止まることはありません。ただし、働いて得る収入が増えると、年金の更新時の審査や生活保護の額に影響するケースがあります。年金事務所や福祉事務所で確認してください。

この記事を書いた人:support-s-log編集部

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