この記事でわかること
- 特別支援学校高等部の入学対象年齢・修業年限・入学条件
- 普通科と職業学科(専門学科)の違い
- 「特別支援学校高等部」と「高等特別支援学校」の違い
- 卒業後の進路(進学・就職・福祉的就労)の実態と数字
- 施設で働く人が利用者・保護者に説明する際に押さえておきたいポイント
特別支援学校の高等部は、中学部を卒業した生徒が進む3年間の教育課程です。私は施設向けの記事を書く中で、「高等部って結局どんな場所なのか、名前だけでは想像しづらい」という声を何度も見かけました。この記事では、年齢や学科の種類から、卒業後にどんな進路をたどる生徒が多いのかまで、数字を交えて整理します。
特別支援学校高等部とは?対象年齢と3年間の位置づけ
特別支援学校高等部は、中学部(または中学校)を卒業した生徒が進む、原則3年間の教育課程です。 年齢でいうと15歳前後で入学し、多くの生徒が18歳前後で卒業を迎えます。
特別支援学校は、幼稚部・小学部・中学部・高等部の4段階で構成されているのが基本形です。高等部はこの最後の段階にあたり、通常の高校の3年間に相当する学びの期間となります。特別支援学校とは何かという制度全体の枠組みや、対象となる障害の種類については、特別支援学校とは?対象・種別・違いをわかりやすく解説で詳しく整理しています。
中学部から同じ学校の高等部にそのまま進む生徒もいれば、中学校の特別支援学級から特別支援学校高等部へ進学する生徒もいます。高等部からの入学は、原則として中学校を卒業見込み、または卒業した生徒が対象です。
入学するにはどうすればいい?入学者選考の流れ
特別支援学校高等部への入学には、都道府県教育委員会が実施する入学者選考を通過する必要があります。 一般の高校入試とは審査の観点が異なります。
多くの都道府県では、中学校が作成する調査書に加えて、以下のような検査を組み合わせて選考します。
| 検査の種類 | 主な内容 |
|---|---|
| 学力検査 | 国語・数学を中心とした基礎学力の確認 |
| 適性検査 | 生活動作・作業能力など日常生活に関わる力の確認 |
| 面接 | 本人・保護者への聞き取り |
| 実技・作業検査 | 学校によって実施内容が異なる |
検査の組み合わせは都道府県によって差があります。例えば埼玉県教育委員会は学力検査(国語・数学)に加えて運動能力検査・作業能力検査を実施しており、東京都教育委員会は独自の適性検査問題を公開しています。志望する学校が所在する都道府県教育委員会の最新の実施要項を、必ず確認してください。
私が施設関係の資料を横断的に見た限りでは、選考のスケジュールは中学3年の秋から冬にかけて動き出す都道府県が多いようです。中学校の進路指導担当と早めに相談しておくと、出願書類の準備で慌てずに済みます。
学科にはどんな種類がある?普通科と職業学科の違い
特別支援学校高等部の学科は、大きく「普通科」と「職業学科(専門学科)」の2系統に分かれます。どちらに進むかで、日々の授業の重点が変わります。
普通科では、国語・数学・理科・社会・音楽・美術・保健体育・職業・家庭・外国語・情報といった、通常の高校に準じる教科を中心に学びます。一方、職業学科は就労を強く意識した専門的なカリキュラムが組まれており、文部科学省の学校教育法施行規則では理療・理学療法・理容・美容・歯科技工・産業一般といった学科区分が定められています。
普通科であっても、職業に関する科目の履修機会は確保されます。文部科学省が公開している職業教育に関する規定資料では、普通科でも地域や学校の実態、生徒の特性、進路等を考慮し、必要に応じて職業に関する教科・科目を履修できるよう配慮すると定められています。つまり普通科=就労準備なし、というわけではありません。
学科によって卒業後の進路の傾向も変わってきます。次の章で詳しく見ていきます。
「特別支援学校高等部」と「高等特別支援学校」は何が違う?
両者は名前が似ていますが、設置形態と入学のしやすさが大きく異なります。 混同されやすいポイントなので、ここは施設で働く人にもぜひ押さえておいてほしいところです。
特別支援学校高等部は、幼稚部・小学部・中学部と併設されているケースが多く、原則として定員という考え方がなく、入学者選考を通過すれば入学できます。対して高等特別支援学校は、高等部だけを独立して設置した学校で、明確な定員があり、入学試験に合格した生徒のみが入学できる点が最大の違いです。
もう一つの違いは対象生徒の傾向です。高等特別支援学校は比較的軽度の知的障害がある生徒を主な対象とし、一般企業への就職を前提とした実践的な職業教育に重点を置いています。実際、一般就労の実現を看板に掲げている高等特別支援学校は少なくありません。
どちらを選ぶべきかは、本人の障害の状態と、卒業後にどんな生活を送りたいかによって変わります。 一般就労を強く意識するなら高等特別支援学校、より幅広い支援体制の中でゆっくり学びたいなら特別支援学校高等部、というのが大まかな傾向ですが、最終的には見学や個別相談を通じて、本人に合った環境を確かめてください。
高等部の1クラスは何人?少人数教育の根拠
特別支援学校設置基準では、高等部の1学級の標準人数は8人と定められています。 通常の高校の1クラス30〜40人と比べると、かなり少人数であることがわかります。
さらに、視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱のうち、2つ以上の障害を併せ持つ生徒で編制する学級では、1学級の標準は3人まで引き下げられます。特別な事情があり教育上支障がない場合は、この標準によらないこともあります。
この少人数編制は、生徒一人ひとりの障害特性や発達段階に応じた個別対応を可能にするための制度的な裏付けです。施設のスタッフが利用者から高等部時代の話を聞く際、「クラスは何人くらいでしたか」という何気ない質問の背景に、こうした制度があることを知っておくと理解が深まります。
卒業後の学歴の扱いは?大学入学資格はある?
特別支援学校高等部を卒業すると「特別支援学校高等部卒業」という学歴になり、通常の「高卒」とは表記が異なります。 ただし、大学入学資格そのものは通常の高校卒業と同様に得られます。
文部科学省の案内によれば、特別支援学校高等部を卒業した時点で大学入学資格を満たすため、高等学校卒業程度認定試験(旧・大学入学資格検定)を別途受ける必要はありません。ここは誤解されやすいポイントなので、施設で説明する際も強調しておきたいところです。
一方で注意点もあります。大学入学資格があっても、実際に受験できるかどうかは各大学の判断に委ねられており、大学によっては特別支援学校高等部卒業者の出願を認めていない場合があります。志望校がある場合は、募集要項で出願資格を早めに確認する必要があります。
なお就職の場面では、企業側が「高校卒業者と同等」であることを求めるケースがあり、その際の証明として在学中に高等学校卒業程度認定試験を受ける生徒もいます。制度上は不要でも、実務上は選択肢の一つとして知っておくとよいでしょう。
卒業後の進路はどうなる?進学・就職・福祉的就労の割合
特別支援学校高等部卒業後の進路で最も多いのは、社会福祉施設等の利用で、卒業者全体の6割前後を占めます。 進学・就職はそれぞれ少数派にとどまります。
文部科学省が公表している特別支援教育の現状資料をもとにした集計(平成30年度実績)では、卒業者21,657人のうち、進学が427人(2.0%)、教育訓練機関等への進学が342人(1.6%)、就職が6,760人(31.2%)、社会福祉施設等への入所・通所が13,241人(61.1%)、その他が887人(4.1%)となっています。就労移行支援事業所が公表している別年度の集計でも、進学率1.9%・就職率29.9%とおおむね近い水準で推移しており、年度による大きなブレは小さいと見られます。
ここで押さえておきたいのは、「就職」と「福祉的就労」の中身の違いです。就職は一般企業への障害者雇用枠での採用などを指し、福祉的就労は就労継続支援A型・B型事業所での働き方を指します。福祉的就労を選ぶ場合、多くは障害福祉サービス受給者証の取得が必要になり、その前提として障害支援区分の認定が関わってくる場合があります。サービスの種類や利用の枠組み全体については、障害者総合支援法の記事もあわせて参考にしてください。
就職する場合、どんな働き方の選択肢がある?
就職を選ぶ場合の選択肢は、大きく「一般企業への障害者雇用」と「福祉的就労」の2つに分かれます。 それぞれ定着率の傾向にも違いがあります。
就労移行支援事業所の実績データでは、一般求人の障害者雇用枠での1年後の職場定着率が約49.9%、作業所等を含む障害者雇用全体では約70.4%という数字が報告されています。一般求人で障害を開示していない場合の定着率は約30.8%にとどまり、開示・非開示で差が出やすい傾向がうかがえます。
高等部在学中から、就労移行支援や職場実習を組み合わせて進路を検討する生徒が多いのも特徴です。進路選択は卒業直前ではなく、高等部2年生あたりから少しずつ具体化していくケースが一般的といえるでしょう。
施設で働く人が知っておきたいポイント
障害福祉施設で働く方にとって、高等部を卒業して間もない利用者を受け入れる場面は珍しくありません。ここでは実務上押さえておきたい点を整理します。
- 「特別支援学校高等部卒業」という学歴表記に配慮する: 履歴書や記録で「高卒」と記載してよいかは本人・保護者の意向を確認したうえで対応するのが無難です
- 卒業直後は障害福祉サービスの利用手続きが重なりやすい: 障害支援区分の認定や障害者手帳の取得手続きが在学中〜卒業直後に集中することがあり、学校の進路指導担当と連携できると手続きがスムーズです
- 高等部時代の学科(普通科・職業学科)によって得意分野が異なる: 職業学科出身の利用者は特定の作業スキルに慣れていることがあり、支援計画を立てる際の参考になります
よくある質問
Q. 特別支援学校高等部は何歳から何歳まで通いますか?
A. 原則として15歳前後で入学し、3年間の課程を経て18歳前後で卒業します。中学部または中学校を卒業見込み、あるいは卒業した生徒が入学の対象です。
Q. 特別支援学校高等部だけに入学することはできますか?
A. 可能です。中学校の特別支援学級や通常学級から、高等部単独で入学者選考を受けて進学する生徒も多くいます。同じ学校の中学部から自動的に進級するわけではなく、あらためて選考を受ける点は共通です。
Q. 高等部の入試ではどんな検査がありますか?
A. 学力検査・適性検査・面接・実技検査などを組み合わせて実施する都道府県が多いですが、組み合わせや内容は都道府県ごとに異なります。志望校が所在する教育委員会の実施要項で最新情報を確認してください。
Q. 特別支援学校高等部と高等特別支援学校はどちらを選べばいいですか?
A. 一律の正解はありません。一般就労を強く意識するなら入学試験と定員がある高等特別支援学校、より幅広い支援体制の中で学びたいなら定員によらず選考を通れば入学できる特別支援学校高等部、という傾向はありますが、本人の障害の状態や希望する生活によって最適な選択は変わります。学校見学や個別相談で確かめてください。
Q. 特別支援学校高等部を卒業すると大学に行けますか?
A. 大学入学資格自体は通常の高校卒業と同様に得られます。ただし実際に受験できるかどうかは大学ごとの判断によるため、志望校がある場合は募集要項で出願資格を確認してください。
Q. 卒業後、就職する人はどれくらいいますか?
A. 公表されているデータでは、就職を選ぶ卒業者はおおむね3割前後です。社会福祉施設等の利用がもっとも多く、6割前後を占めています。進学は数%にとどまります。
Q. 高等部の1クラスは何人くらいですか?
A. 特別支援学校の設置基準では、高等部の1学級の標準は8人です。複数の障害を併せ持つ生徒で編制する学級では、標準が3人まで引き下げられます。
Q. 高等部卒業後、すぐに障害福祉サービスは使えますか?
A. 利用するサービスの種類によって、障害福祉サービス受給者証の取得や障害支援区分の認定など、事前の手続きが必要になる場合があります。手続きには時間がかかることもあるため、在学中から学校の進路指導担当と相談しておくとスムーズです。


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