障害者雇用の助成金とは?企業が使える主な制度と金額・申請の流れ

木目のデスクに白紙の申請書を挟んだクリップボード、封筒、電卓、手帳が並ぶ様子 求人・仕事のお金事情

Q. 障害者を雇うと、企業はどんな助成金を使える? → A. 雇い入れのときはハローワーク経由の「特定求職者雇用開発助成金」や「トライアル雇用助成金」、雇い続けるための設備や支援にはJEEDの「障害者雇用納付金関係助成金」が主な選択肢です。中小企業が重度障害者等を雇い入れた場合、特定求職者雇用開発助成金だけで最大240万円になります。

この記事でわかること

  • 障害者雇用の助成金の全体像と、2つの申請窓口の違い
  • 雇い入れ・正社員化・設備整備・ジョブコーチなど主な助成金の金額
  • 申請の流れと、対象外になりやすい注意点

「障害者雇用を始めたいけれど、使える助成金が多すぎて分からない」という人事担当の方は多いでしょう。制度の名前が長く、窓口も分かれています。本記事では、厚生労働省とJEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の資料をもとに整理しました。参照したのは令和8年度版の公表資料です。金額は2026年11月時点の公表資料の値です。申請前には必ず最新の支給要領を確認してください。

  1. 障害者雇用の助成金とは?2つの窓口に分かれる
    1. 法定雇用率や納付金とはどう違う?
  2. 雇い入れるときに使える助成金はどれ?
    1. 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
    2. 発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
    3. トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)
  3. 雇い続けるために使える助成金はある?
    1. キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)
    2. 障害者作業施設設置等助成金(JEED)
    3. 障害者介助等助成金・職場適応援助者助成金(JEED)
  4. 助成金を受け取るまでの流れは?
    1. 特開金を使う場合の流れ
    2. JEEDの助成金を使う場合の流れ
  5. 対象外になりやすいのはどんなケース?
  6. 中小企業かどうかで金額はどれくらい変わる?
  7. 働く側から見た障害者雇用の助成金
  8. 助成金を使う前に企業が準備しておきたいこと
  9. よくある質問
    1. Q: 障害者雇用の助成金は、いくつ組み合わせて使えますか?
    2. Q: 障害者手帳を持っていない人を雇っても助成金は出ますか?
    3. Q: 短時間勤務の障害者でも助成金の対象になりますか?
    4. Q: 助成金の申請は社会保険労務士に頼むべきですか?
    5. Q: 助成金をもらった後に、社員が退職したら返す必要がありますか?
    6. Q: 障害者雇用の助成金はいつまで申請できますか?
  10. まとめ:障害者雇用の助成金は「誰を雇うか」と「どう支えるか」で選ぶ

障害者雇用の助成金とは?2つの窓口に分かれる

障害者雇用の助成金は、大きく2系統に分かれます。「ハローワーク・労働局の雇用関係助成金」と「JEEDの障害者雇用納付金関係助成金」です。前者は主に雇い入れや雇用形態の転換、後者は職場の設備や支援者の配置が対象です。

系統 主な助成金 主な対象 申請窓口
雇用関係助成金(厚生労働省) 特定求職者雇用開発助成金、トライアル雇用助成金、キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース) 雇い入れ・試行雇用・正社員への転換 労働局・ハローワーク
障害者雇用納付金関係助成金(JEED) 作業施設設置等助成金、介助等助成金、職場適応援助者助成金など 設備の整備・介助者や支援者の配置 JEEDの都道府県支部

窓口が違うと、申請書の様式も締め切りも変わります。筆者が両方の資料を読み比べて感じたのは、次の覚え方が一番分かりやすいということです。「誰を雇うか」は雇用関係助成金、「どう働きやすくするか」は納付金関係助成金。

法定雇用率や納付金とはどう違う?

助成金は「申請した企業がもらえるお金」、納付金は「雇用率を満たさない企業が納めるお金」です。民間企業の法定雇用率は2026年7月から2.7%になりました。従業員100人を超える企業で雇用率を下回ると、障害者雇用納付金の対象になります。

納付金・調整金・報奨金の仕組みは、障害者雇用率の記事で詳しく解説しています。JEEDの助成金は、この納付金を財源にした仕組みです。

雇い入れるときに使える助成金はどれ?

障害のある方を新たに雇うときは、まず特定求職者雇用開発助成金とトライアル雇用助成金を確認してください。どちらもハローワークなどの紹介で雇い入れることが条件です。自社サイトからの直接応募や縁故採用は対象になりません。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

障害者などをハローワーク等の紹介で継続雇用として雇い入れた企業に、最大240万円が支給されます。略して「特開金」と呼ばれる、障害者雇用で最も使われる助成金です。

対象労働者 中小企業 中小企業以外 助成対象期間(中小/それ以外)
重度障害者等(重度身体・重度知的障害者、45歳以上の障害者、精神障害者) 240万円(40万円×6期) 100万円 3年/1年6か月
重度以外の身体・知的障害者 120万円(30万円×4期) 50万円 2年/1年
短時間労働者(週20時間以上30時間未満)の身体・知的・精神障害者 80万円(20万円×4期) 30万円 2年/1年

1期は6か月です。各期の支給額は、その期に支払った賃金額が上限になります。対象は雇用保険の一般被保険者として雇い、65歳以上まで、かつ2年以上の継続雇用が確実な場合です。

令和8年4月1日以降の申請では、賃金台帳の添付が必須になりました。添付がないと支給されないため、給与担当とも共有しておいてください。

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

障害者手帳を持たない発達障害のある方や難病のある方を雇い入れた場合は、このコースが対象です。中小企業は1人あたり120万円(30万円×4期)、それ以外の企業は50万円です。

週20時間以上30時間未満の短時間労働者では、中小企業80万円、それ以外30万円になります。手帳の有無で使うコースが変わるため、求人を出す段階でハローワークに相談しておくと手続きが早く進みます。

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)

原則3か月の試行雇用を行うと、1人あたり月額最大4万円が支給されます。精神障害者の場合は、最初の3か月が月額最大8万円、続く3か月が月額最大4万円で、最長6か月です。

コース 対象 支給額 期間
障害者トライアルコース 障害者(精神障害者以外) 月額最大4万円 最長3か月
障害者トライアルコース 精神障害者 月額最大8万円→4万円 最長6か月
障害者短時間トライアルコース 精神障害者・発達障害者 月額最大4万円 3〜12か月

短時間トライアルは、週10時間以上20時間未満から始めて、期間中に20時間以上を目指す働き方です。試行期間が終わったあと継続雇用に移る場合、特開金と組み合わせられるケースもあります。併給の扱いは管轄のハローワークで確認してください。

雇い続けるために使える助成金はある?

あります。正社員への転換にはキャリアアップ助成金、設備や支援者にはJEEDの助成金が使えます。雇い入れの助成金が終わったあとも、定着を後押しする仕組みが用意されています。

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)

障害のある有期雇用の社員を正社員に転換すると、中小企業で最大120万円が支給されます。支給は6か月ごとの2期に分かれ、合計1年間です。

対象者 有期→正規 有期→無期 無期→正規
重度身体・重度知的・精神障害者 120万円(90万円) 60万円(45万円) 60万円(45万円)
上記以外の身体・知的障害者、発達障害者、難病患者、高次脳機能障害者 90万円(67.5万円) 45万円(33万円) 45万円(33万円)

括弧内は中小企業以外の額です。契約社員から始めて、働きぶりを見て正社員にする流れの企業とは相性がよいでしょう。

障害者作業施設設置等助成金(JEED)

障害に配慮した作業施設やトイレ・スロープなどを整備すると、費用の3分の2が助成されます。限度額は対象障害者1人につき450万円、作業設備だけなら150万円です。

1事業所あたりの上限は、1会計年度で4,500万円です。賃借で整備する場合は、1人につき月13万円までを3年間受け取れます。在宅勤務の方の設備も対象になりますが、居宅の工事や毎日使わない設備は対象外です。

障害者介助等助成金・職場適応援助者助成金(JEED)

介助者や手話通訳者、ジョブコーチ(職場適応援助者)を配置する費用にも助成があります。主なものを表にまとめました。

助成金 主な対象 助成内容
職場介助者の配置・委嘱 2級以上の視覚障害者など重度の方 費用の3/4、配置1人につき月15万円まで(最長10年)
手話通訳・要約筆記等担当者の配置・委嘱 2〜4級・6級の聴覚障害者 費用の3/4、配置1人につき月15万円まで(最長10年)
企業在籍型職場適応援助者による支援 支援計画の対象となる障害者 精神障害者以外:月6万円(中小8万円)/精神障害者:月9万円(中小12万円)※一般労働者の場合
障害者雇用相談援助助成金 障害者雇用の進め方を相談したい企業 認定を受けた援助事業者に支給(企業は相談援助を受けられる)

ジョブコーチは、職場に入って本人と同僚の両方を支える専門職です。社内で育てる「企業在籍型」と、外部の法人から来る「訪問型」があります。初めての障害者雇用で不安が大きい企業ほど、まず相談援助やジョブコーチの活用から始めると進めやすくなります。

助成金を受け取るまでの流れは?

どの助成金も「先に手続き、あとで雇用や工事」という順番を守ることが最大のポイントです。順番を間違えると、要件を満たしていても受け取れません。

特開金を使う場合の流れ

ハローワークに求人を出し、紹介を受けてから雇い入れます。流れは次のとおりです。

  1. ハローワークなどに障害者向けの求人を出す
  2. ハローワーク等から紹介を受け、面接・採用する
  3. 雇用保険の資格取得手続きを行う
  4. 6か月ごとの支給対象期が終わるたびに、労働局へ支給申請する(各期の末日の翌日から原則2か月以内)

トライアル雇用の場合は、雇い入れから2週間以内に実施計画書をハローワークへ出すのが原則です。期限を過ぎると対象外になるため、採用日にカレンダーへ書き込んでおきましょう。

JEEDの助成金を使う場合の流れ

JEEDの助成金は「受給資格認定申請」をして認定を受けてから、工事の発注や介助者の配置を行います。認定前に契約や工事を始めると、対象になりません。

認定を受けたら措置を実施し、費用を支払ってから「支給請求」を行います。令和7年4月からは電子申請も使えるようになりました。窓口はJEEDの都道府県支部です。

対象外になりやすいのはどんなケース?

対象外になる原因の多くは、制度の中身よりも手続きの順番や雇い方にあります。公表資料の要件から、特に見落としやすい点を5つ挙げます。

よくある見落とし 何が問題か
自社サイトや知人経由で採用した 特開金・トライアルはハローワーク等の紹介が条件
紹介を受ける前に採用を約束していた 紹介前の内定は対象外になる
JEEDの認定前に工事や購入をした 認定後に措置を講じることが条件
支給申請の期限を過ぎた 期ごとに申請期間が決まっている
助成対象の社員を会社都合で離職させた 返還を求められることがある

JEEDの作業施設設置等助成金には、支給後2年間の雇用継続義務もあります。不正受給と判断されると、5年間は新たな助成金を受けられません。返還額に加えて2割相当額と延滞金も徴収されます。

中小企業かどうかで金額はどれくらい変わる?

特開金の重度障害者等では、中小企業240万円に対しそれ以外は100万円と、2倍以上の差があります。雇用関係助成金では、業種ごとの資本金か労働者数で中小企業かどうかが決まります。

業種 資本金 常時雇用する労働者
小売業(飲食店を含む) 5,000万円以下 50人以下
サービス業 5,000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他の業種 3億円以下 300人以下

資本金か労働者数のどちらかを満たせば中小企業になります。グループ会社の扱いなど迷う点は、申請前に労働局へ確認してください。

働く側から見た障害者雇用の助成金

助成金は企業に支給されるもので、働く本人がお金を負担したり、手続きをしたりする必要はありません。ただ、助成金の仕組みを知っておくと、職場選びの見方が少し変わります。

たとえば特開金には、65歳以上まで、かつ2年以上の継続雇用が確実であることという条件があります。助成金の期間が終わったあとも働き続けられる職場かを、面接で確認しておくと安心です。正社員登用の実績を聞くのも、ひとつの方法でしょう。

筆者が気になるのは、トライアル雇用が「お試しで切られる期間」と受け取られかねない点です。本来は、企業と本人がお互いを知るための期間です。求人の探し方は障害者雇用の求人の探し方の記事、働く前の準備は就労支援の記事も参考にしてください。

助成金を使う前に企業が準備しておきたいこと

助成金はあくまで後押しです。受け入れ体制を先に整えておくと定着しやすくなり、助成金も最後まで受け取りやすくなります。準備の目安は次の3つです。

  • 任せる仕事を切り出し、1日の流れを書き出しておく
  • 相談役になる社員を決め、困ったときの連絡先を共有する
  • 通院や体調の波など、配慮が必要な点を本人と話し合う場を作る

障害を伝えて働く社員には、事業主が合理的配慮を提供する義務があります。配慮の考え方は障害者差別解消法の記事でも解説しています。手帳の種類で対象の助成金が変わる場合があるため、障害者手帳の種類の記事もあわせて確認してください。

最新の金額や要件は、公式ページで確認できます。厚生労働省の特定求職者雇用開発助成金のページ、JEEDの障害者雇用納付金関係助成金のページが窓口です。求人の出し方はハローワークインターネットサービスから確認できます。自治体が独自の奨励金を出している例もあります。所在地の自治体の案内もあわせて見てみてください。

よくある質問

Q: 障害者雇用の助成金は、いくつ組み合わせて使えますか?

A: 系統が違えば組み合わせられる場合があります。たとえば特開金で雇い入れ、JEEDの作業施設設置等助成金で設備を整える使い方です。ただし同じ目的の助成金どうしは併給調整がかかるため、申請前に労働局やJEEDの支部で確認してください。

Q: 障害者手帳を持っていない人を雇っても助成金は出ますか?

A: 発達障害のある方や難病のある方であれば、特開金の「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」の対象になり得ます。中小企業で1人あたり120万円です。対象かどうかはハローワークの紹介時に確認できます。

Q: 短時間勤務の障害者でも助成金の対象になりますか?

A: 対象になります。特開金は週20時間以上30時間未満の短時間労働者も対象で、中小企業は80万円です。週10時間以上20時間未満から始める場合は、障害者短時間トライアルコースが使えます。

Q: 助成金の申請は社会保険労務士に頼むべきですか?

A: 自社で申請することもできます。書類が多く期限も厳しいため、社会保険労務士に依頼する企業もあります。依頼する場合でも、虚偽の申請は事業主も不正受給の責任を負うため、内容は自社で確認してください。

Q: 助成金をもらった後に、社員が退職したら返す必要がありますか?

A: 本人の自己都合による退職であれば、特開金では退職以降の期の支給が止まるのが一般的です。JEEDの作業施設設置等助成金などには雇用継続義務期間があり、会社都合で離職させると返還を求められることがあります。

Q: 障害者雇用の助成金はいつまで申請できますか?

A: 特開金とトライアル雇用助成金は令和8年度も継続しています。制度は毎年度見直されるため、雇い入れの時点で有効な支給要領を確認してください。

まとめ:障害者雇用の助成金は「誰を雇うか」と「どう支えるか」で選ぶ

障害者雇用の助成金は、雇い入れには特開金とトライアル雇用、定着には正社員化コースとJEEDの助成金という組み合わせで考えると整理しやすくなります。どれも、ハローワークの紹介や事前の認定申請など、手続きの順番が受給の条件です。

まずは管轄のハローワークで障害者向けの求人を相談し、あわせてJEEDの支部にも設備や支援者の相談をしてみてください。助成金を上手に使いながら、長く一緒に働ける職場づくりを進めていきましょう。

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