障害年金は働きながらもらえる?等級別の目安と、審査で就労が見られるポイント【2026年】

木目のデスクに置かれた勤務表のクリップボードと電卓、手帳、卓上カレンダー 障害年金

Q. 障害年金は働きながらもらえる? → A. 働きながらでも受け取れます。収入が多いという理由だけで止まる仕組みは、原則ありません。例外は、20歳前に初診日がある障害基礎年金の所得制限です。ただし精神の障害などでは、新規の請求や更新のときに「どんな配慮を受けて働いているか」が確認されます。

この記事でわかること

  • 働いていても障害年金を受け取れる理由と、例外の所得制限
  • 障害の種類によって、働くことの影響がどう違うか
  • 精神の障害で、審査が就労のどこを見ているか
  • 会社員の傷病手当金との関係と、更新のときの伝え方

「働き始めたら、障害年金が止まってしまうのでは」。就職や復職を考える方や、そのご家族からよく出る心配です。止まるのが怖くて、働く時間を増やせないという声も聞きます。本記事では、日本年金機構の障害認定基準と、厚生労働省のガイドラインをもとに整理しました。内容は2026年11月時点で確認したものです。最終的な等級は審査で決まるため、ここで示す等級は目安として読んでください。

障害年金は働きながらもらえる?

結論は「もらえる」です。障害年金を受け取るための条件に、収入の額は含まれていません。条件は、初診日に年金制度へ加入していたこと、保険料を一定以上納めていること、障害の状態が基準に当てはまることの3つです。

3つの条件は、障害年金の受給要件の記事で詳しく解説しています。パートでも正社員でも、条件を満たしていれば請求できます。

年金の種類 働いて収入が増えたとき
障害厚生年金(初診日に会社員など) 収入を理由に止まる仕組みはない
障害基礎年金(初診日が20歳以降) 収入を理由に止まる仕組みはない
障害基礎年金(初診日が20歳前) 前年の所得が基準を超えると半額または全額が止まる

※日本年金機構の案内をもとに整理。

「働いたら止まる」と誤解されやすいのはなぜ?

理由の一つは、更新のときに障害の状態を見直す仕組みがあることです。障害年金の多くは、数年ごとに診断書を出して状態を確認されます。そこで「状態が良くなった」と判断されると、等級が下がったり支給が止まったりします。

働いていることは、この判断材料の一つとして見られることがあります。つまり、止まる原因は収入そのものではありません。障害の状態の評価が変わることです。

もう一つは、老齢年金との混同でしょう。老齢厚生年金には、働いて給与が多いと年金が調整される仕組みがあります。障害年金には同じ仕組みはないため、分けて考えてください。

障害の種類で「働くこと」の影響は変わる?

変わります。障害年金の等級は、障害の種類ごとに決められた認定基準で判定されます。検査の数値や治療の内容で判定する障害もあれば、日常生活や就労の様子を詳しく見る障害もあります。

障害の例 判定の中心 働くことの影響の目安
人工透析を受けている(腎疾患) 透析療法の実施 原則2級と認定。働いていても基準は同じ
ペースメーカー・人工弁を装着(心疾患) 装着の有無 3級の例に挙がる(3級は厚生年金のみ)。働いていても基準は同じ
うつ病・統合失調症・発達障害など(精神) 日常生活能力と就労の実態 就労の内容や職場の援助が確認される
がん・内部障害など 検査数値と日常生活の状況 一般状態や労働の制限の程度が見られる

※日本年金機構「障害認定基準」の心疾患・腎疾患・精神の障害の節をもとに整理。実際の等級は、ほかの症状も含めて総合的に判定されます。

たとえば腎疾患の節には、人工透析療法を受けている人は「2級と認定する」と書かれています。心疾患の節では、ペースメーカーや人工弁の装着が3級の例として挙がっています。こうした障害では、働いているかどうかで基準が動くことはありません。

一方で精神の障害は、数値で測りにくい障害です。そのため、日々の生活や仕事の様子が判定の大きな手がかりになります。次の章で詳しく見ていきます。

等級別に見る:働きながら受給するときの目安

等級が軽くなるほど、働きながら受け取る前提に近づきます。障害認定基準では、1級・2級は日常生活の制限、3級は労働の制限を基準に書かれています。

等級 障害の状態(認定基準の考え方) 働き方との関係の目安
1級 身のまわりのことがほとんどできない 常に援助が必要な状態が前提
2級 日常生活が著しい制限を受ける 援助や配慮を受けての就労はありうる
3級(厚生年金のみ) 労働が著しい制限を受ける 働きながら受け取ることを想定した等級

※日本年金機構「障害認定基準」の考え方をもとにした整理。働き方との関係は一般的な目安です。

3級は「労働に著しい制限がある」状態が対象です。言いかえると、制限を受けながらも働いている人が対象に含まれます。3級の詳しい基準は、障害年金3級の記事で紹介しています。

2級でも、働いている人はいます。就労継続支援や障害者雇用など、手厚い援助のもとで働くケースです。2級の基準は障害年金2級の記事で整理しています。

精神の障害で、就労はどう見られる?

働いているという事実だけで、日常生活能力が上がったとは判断されません。日本年金機構の障害認定基準(精神の障害)には、この考え方がはっきり書かれています。一般企業で雇用契約を結んで働く人でも、援助や配慮のもとで働いている、という前提です。

同じ節では、働いている人について次の点を十分確認するよう求めています。

  • その人の療養の状況
  • 仕事の種類と内容
  • 就労の状況(勤務日数・時間・欠勤など)
  • 仕事場で受けている援助の内容
  • ほかの従業員との意思疎通の状況

つまり審査で見られるのは、「働けているか」より「どう働いているか」です。同じ週5日の勤務でも、仕事の内容や周りの支えで評価は変わります。

働き方によって、等級の検討はどう変わる?

厚生労働省のガイドラインは、働き方ごとに検討する等級の目安を示しています。2016年に施行された「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」です。

働き方 ガイドライン上の扱い
就労継続支援A型・B型、就労移行支援 1級または2級の可能性を検討
障害者雇用制度による就労 1級または2級の可能性を検討
一般企業でも、同程度の援助を受けて働いている 2級の可能性を検討
一般企業での就労(上記以外) 月収だけでなく、就労の実態を総合的に見る

※厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」をもとに整理。「可能性を検討」であり、その等級に決まるわけではありません。

ガイドラインの詳しい目安表は、精神疾患の障害年金の記事で紹介しています。発達障害の方は、発達障害の障害年金の記事も参考になります。

筆者が認定基準を読んで気づいたこと

筆者が認定基準の原文を読んで意外だったのは、「一般就労をしている者であっても」とわざわざ書かれていた点です。福祉的な就労だけでなく、一般企業の社員も援助を受けている、と国の基準が認めています。

裏を返すと、援助の中身が書類に書かれていなければ、審査する側には伝わりません。勤務日数と時間だけが書かれた書類では、普通に働けていると読まれかねないでしょう。職場で受けている配慮を、具体的な言葉にしておくことが大切です。

20歳前に初診日がある人は、所得制限に注意

所得制限があるのは、20歳前に初診日がある障害基礎年金だけです。この年金は、本人が保険料を納めていない時期の障害も対象にしています。そのため、本人の所得に応じて支給を止める仕組みが設けられています。

日本年金機構のページ(2026年10月1日更新)では、基準額が次のように示されています。

前年の所得(扶養親族なしの場合) 支給への影響
3,858,000円以下 全額支給
3,858,000円を超え、4,918,000円以下 2分の1が支給停止
4,918,000円を超える 全額が支給停止

※扶養親族がいる場合は、1人につき38万円などが加算されます。支給停止の期間は10月から翌年9月までです。

ここでの「所得」は、年収ではなく、給与所得控除などを引いたあとの金額です。パートや一般的な正社員の給与で、すぐに届く水準ではありません。詳しい計算例は障害年金の所得制限の記事で紹介しています。

なお、初診日が20歳前でも、会社員として厚生年金に入っていた期間の初診なら障害厚生年金の対象です。障害厚生年金に所得制限はありません。

ケース別に見る:働き方と障害年金の関係

同じ「働きながら」でも、障害の種類や初診日で注意点は変わります。よくある3つの例で考えてみましょう。人物はいずれも架空の想定です。

ケースA:人工透析を受けながら事務職で働く50代の会社員。透析は週3回、仕事は時短勤務にしています。腎疾患の認定基準では、人工透析を受けている人は原則2級です。働いているかどうかで、この扱いは変わりません。気をつけたいのは、透析を始めた日から3か月たつと認定の時期になる点です。請求の準備は早めに始めておくと安心です。

ケースB:うつ病で障害厚生年金3級を受け、障害者雇用で働く30代。週4日・1日6時間の勤務で、業務量の調整を受けています。更新の診断書では、勤務日数だけでなく、職場での配慮や休みの回数を伝えたいところです。ガイドラインでは、障害者雇用での就労は1級または2級の可能性を検討するとされています。働いていることが、ただちに不利になるわけではありません。

ケースC:知的障害で20歳から障害基礎年金を受け、一般企業で働く20代。初診日が20歳前のため、所得制限の対象です。とはいえ、扶養親族がいなくても基準は所得3,858,000円超からです。パートや一般的な給与で、すぐに届く水準ではないでしょう。昇給したときは、前年の所得を一度確かめる習慣をつけておくと安心です。

この3つを比べると、確認するポイントが人によって違うとわかります。自分がどれに近いかを考えてから、書類の準備に進むと迷いにくくなります。

会社員のまま請求するとき、傷病手当金はどうなる?

同じ病気やけがで両方を受けられるときは、傷病手当金が調整されます。休職中に健康保険の傷病手当金を受けながら、障害厚生年金を請求する方は少なくありません。

協会けんぽの案内では、障害厚生年金を受けられる期間の傷病手当金は、原則として支給されません。ただし、傷病手当金の日額のほうが多い場合は、差額が支給されます。年金の日額は、年金額を360で割って求めます。

比較の結果 傷病手当金の扱い
傷病手当金の日額 > 年金の日額 差額だけが支給される
傷病手当金の日額 ≦ 年金の日額 支給されない

※協会けんぽの資料をもとに整理。加入している健康保険組合によって手続きが異なる場合があります。

注意したいのは、障害年金がさかのぼって決まった場合です。重なった期間の傷病手当金は、返すことになります。請求の時期が重なりそうなときは、健康保険の窓口にも確認しておくと安心です。

退職したら障害厚生年金は受け取れなくなる?

受け取れなくなることはありません。障害厚生年金の対象になるかは、初診日に厚生年金へ加入していたかで決まります。初診日のあとで会社を辞めても、条件を満たせば請求できます。

障害基礎年金と障害厚生年金の違いは、障害基礎年金と障害厚生年金の違いの記事で整理しています。

更新のときは、働いていることをどう伝える?

更新用の診断書では、働いている事実と一緒に、受けている配慮を医師に伝えてください。障害年金の多くは、数年ごとに「障害状態確認届(診断書)」を出して状態を確認されます。

日本年金機構の案内では、この届は誕生月の3か月前の月末に送られてきます。提出期限は誕生月の末日です。遅れたり不備があったりすると、年金の支払いが一時止まることがあります。

更新の流れは、障害年金の更新の記事で詳しく解説しています。

診断書の前にまとめておきたいメモ

医師の診察時間は限られています。働き方の実態を短く伝えられるよう、次のような項目をメモにしておくと伝わりやすくなります。

項目 書いておく内容の例
勤務の形 障害者雇用か一般雇用か、週何日・1日何時間か
仕事の内容 担当している作業、任されていない作業
職場の配慮 業務量の調整、休憩の追加、指示の出し方の工夫
休みや遅刻 月に何日休んだか、遅刻・早退の回数
仕事のあと 帰宅後に寝込む、家事ができないなどの様子
周りの支え 家族や支援者が手伝っていること

※あくまで一例です。実際の書き方は主治医と相談してください。

筆者が書類の書き方を調べていて感じたのは、「仕事のあと」の様子が抜けやすいことです。職場では何とかこなせていても、帰宅後に動けなくなる人は少なくありません。生活全体の様子を伝えることで、就労の実態がより正確に伝わります。

働きながら新しく請求するときの準備

働いている人が新しく請求するときも、中心になる書類は診断書と申立書です。申立書は「病歴・就労状況等申立書」といい、本人や家族が書きます。働きながら請求する人にとって、就労の実態を伝えられる大事な書類です。

準備の順番は、おおむね次のとおりです。

  1. 初診日を確認する(最初に受診した医療機関)
  2. 年金事務所で、保険料の納付状況を確認する
  3. 主治医に診断書を依頼し、働き方のメモを渡す
  4. 病歴・就労状況等申立書を書く
  5. 年金事務所などに請求書類を提出する

書類の全体像は障害年金の申請方法の記事、診断書の頼み方は障害年金の診断書の記事で詳しく紹介しています。

自分だけで進めるのが不安なときは

年金事務所の窓口では、無料で相談できます。就労支援の事業所を利用している方は、支援員に職場での様子を確認してもらうのも一つの方法です。手続きを専門家に任せたい場合は、社会保険労務士への依頼という選択肢もあります。費用の目安は障害年金と社労士の記事で整理しています。

障害年金は非課税のため、受け取っていても所得税はかかりません。税金まわりは障害年金と確定申告の記事をご覧ください。

まとめ:働くことと障害年金は両立できる

障害年金は、働きながらでも受け取れる年金です。要点をまとめます。

  • 収入の額で止まる仕組みは、20歳前に初診日がある障害基礎年金を除いてない
  • 人工透析やペースメーカーなどは、働いていても認定の基準は同じ
  • 精神の障害では、仕事の内容や職場の援助まで確認される
  • 傷病手当金とは、同じ病気なら差額の調整がある
  • 更新の診断書では、働き方の実態と受けている配慮を医師に伝える

働くことをためらう必要はありません。大切なのは、どんな支えを受けて働いているかを、書類で正しく伝えることです。不安があれば、年金事務所や主治医に早めに相談してください。

よくある質問

Q: 正社員でフルタイム勤務でも障害年金はもらえますか?

A: もらえる場合があります。収入の額は受給の条件に含まれていません。ただし精神の障害などでは、仕事の内容や職場の援助が確認され、等級の判定に影響します。

Q: 働き始めたら、年金機構に何か届け出る必要がありますか?

A: 多くの場合、働いている状況は次の更新の診断書で、障害の状態とあわせて確認されます。届出が必要か迷うときは、年金事務所で確認してください。

Q: 障害者雇用で働いていると、等級は下がりますか?

A: 下がるとは限りません。厚生労働省のガイドラインでは、障害者雇用制度による就労は1級または2級の可能性を検討するとされています。

Q: 20歳前から障害がある場合、働くと年金が止まりますか?

A: 前年の所得が基準額を超えた場合に、半額または全額が止まります。令和8年10月からの基準は、扶養親族なしで所得3,858,000円超が半額停止、4,918,000円超が全額停止です。

Q: 休職中に傷病手当金をもらっていても、障害年金を請求できますか?

A: 請求できます。ただし同じ病気やけがで両方を受けられる場合、傷病手当金は原則支給されず、日額が年金より多いときは差額が支給されます。

Q: 障害年金をもらっていることは会社に知られますか?

A: 障害年金は非課税のため、給与の年末調整や税額の計算には含まれません。職場での配慮を求める場合は、自分から伝えるかどうかを選ぶことになります。

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