この記事でわかること
- 特別障害者手当の支給対象になる3つの条件
- 令和8年度(2026年4月〜)の最新の支給額と振込時期
- 障害者手帳がなくても申請できるという、意外と知られていない仕組み
- 所得制限の考え方と、申請から振込までの流れ
- 障害年金・障害者手帳との違いと、あわせて確認しておきたい制度
Q. 特別障害者手当とは、どんな制度ですか? → A. 精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活で常時特別な介護を必要とする在宅生活者に、国が支給する手当です。障害者手帳を持っていなくても、状態が基準に該当すれば申請できます。特別障害者手当は、重度の障害があり在宅で生活する方の経済的・精神的な負担を軽くするために国が支給する手当です。名前は聞いたことがあっても、「自分や家族が対象になるのかわからない」という方は少なくありません。今回、厚生労働省の資料や自治体窓口の案内、実際に申請を経験した方の解説動画を横断して読み込んでみると、「知っていれば申請できたのに知らなかった」という声が想像以上に多い制度だとわかりました。この記事では、対象要件・支給額・申請の流れを一次資料に基づいて整理しました。
特別障害者手当とは
特別障害者手当は、精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活で常に特別な介護を必要とする状態にある方に対して、国が支給する手当です。障害基礎年金や障害者手帳とは別の制度であり、根拠となる法律も異なります。介護給付や訓練等給付など障害福祉サービス全般の根拠法である障害者総合支援法とも異なる制度のため、混同しないよう注意してください。
制度の目的は「重度の障害があるために生じる特別な負担の軽減」です。介護の手間や通院費用など、日常生活で発生する経済的・精神的な負担を軽くすることを狙いとしています。年金のように保険料を納めた実績は必要なく、要件を満たしていれば申請だけで受給の可能性が開けます。
似た名前の制度に障害児福祉手当や特別児童扶養手当がありますが、こちらは20歳未満の児童が対象です。特別障害者手当は20歳以上の在宅生活者向けの制度だと押さえておくと、他の手当と混同しにくくなります。制度の根拠や最新の要件は、厚生労働省の特別障害者手当のページで確認できます。
支給対象となる3つの要件
対象要件は、大きく分けて次の3つ。どれか1つでも欠けると対象外になるため、順番に確認していきます。
1. 重度の障害がある20歳以上の方
厚生労働省が定める認定基準に照らして、精神または身体に著しく重度の障害があり、日常生活において常時特別な介護を必要とする状態と判定される必要があります。認定基準は障害の種類ごとに詳細な項目が設けられており、複数の障害が重なっている「重複障害」の状態であれば、単独の障害よりも認定されやすい傾向があります。
2. 在宅で生活している方
自宅で生活していることが基本条件です。ただし、有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅は「在宅」として扱われるため、こうした施設に入居していても受給の対象になり得ます。一方で、障害者支援施設や特別養護老人ホーム、病院・診療所・介護老人保健施設などに3か月を超えて入所・入院している場合は対象外です。介護保険の分類でいう「居宅」と「施設」の違いに近いイメージだと考えるとわかりやすいでしょう。
3. 所得が一定額以下であること
本人、または配偶者・扶養義務者の前年の所得が一定額を超える場合、手当は支給停止となります。所得制限の限度額は扶養親族の人数によって変わり、下表はその目安です。
| 扶養親族等の数 | 本人(請求者) | 配偶者・扶養義務者 |
|---|---|---|
| 0人 | 375万8千円以下 | 628万7千円未満 |
| 1人 | 413万8千円以下 | 653万6千円未満 |
| 2人 | 451万8千円以下 | 674万9千円未満 |
| 3人 | 489万8千円以下 | 696万2千円未満 |
※上記は札幌市が公開している所得制限限度額の表をもとにした目安で、控除適用前の収入額を機械的に示したものではありません。扶養親族が増えるほど限度額は緩やかになるため、正確な金額は必ずお住まいの市区町村の窓口で確認してください。
実務上、本人の所得だけで制限にかかるケースはそれほど多くないとされています。というのも、重度の障害があり常時介護が必要な状態にある方が、単独で高額の収入を得ている状況自体が珍しいからです。むしろ注意したいのは、同居していて生計を一にする配偶者や親きょうだいが高額所得者であるケースです。持ち家からの家賃収入や、親世代の役員報酬などが該当することがあるため、家族構成にあてはまりそうな場合は事前に確認しておくと安心です。
障害者手帳がなくても申請できる
ここが意外と見落とされがちなポイントです。特別障害者手当は障害の状態で審査されるため、障害者手帳を持っていない方でも申請できます。逆に、障害者手帳の等級が高いからといって自動的に受給できるわけでもありません。
目安としては、身体障害者手帳1級・2級程度、療育手帳(自治体によって呼び方が異なり「愛の手帳」等とも呼ばれます)の重い区分に相当する知的障害、またはこれらと同等の傷病による精神障害があり、かつ複数の障害が重なっている状態が想定されています。要介護度の高い高齢の方が、認知症に加えて他の重度障害を伴っている場合などに対象となる可能性も紹介されており、対象者は障害者手帳を持つ現役世代に限りません。
判断に迷う場合は、お住まいの市区町村の障害福祉窓口に、現在の生活状況・介護の状況をそのまま伝えて相談してみることをおすすめします。
認定基準のイメージをつかむ
厚生労働省の認定基準は、大きく分けて「精神・身体の障害の程度」と「日常生活能力の程度」という2つの軸で判断されます。知的障害であれば知能指数と日常生活動作(食事・排せつ・意思疎通・危険回避など)の自立度を点数化し、合計点が一定の基準を超えるかどうかで重度・最重度を判定する仕組みです。発達障害のように明確な数値基準がない障害の場合は、日常生活能力の項目がより重視される傾向にあります。
この基準を一から読み解こうとすると複雑に感じますが、実際に家族や支援者として日々介助にあたっている方であれば、「食事はほぼ全介助が必要」「一人で外出すると危険」といった実感と照らし合わせるだけで、おおよその該当・非該当の見当がつくことも多いようです。基準の細部を暗記するよりも、まず窓口に生活の実態を伝えてみる方が近道になるケースは少なくありません。より詳細な認定基準は、各自治体が公開している障害者手当の案内ページでも確認できます。
支給額と振込時期
支給額は物価や賃金の変動に応じて毎年見直されます。令和8年度(2026年4月分〜)の支給月額は30,450円で、令和7年度の29,590円から860円の増額となりました。年額に換算するとおよそ36万5,000円です。改定の詳細は、お住まいの自治体の広報(例:一宮市の案内ページ)でも案内されています。
支給は毎年2月・5月・8月・11月の4回で、それぞれの直前3か月分がまとめて振り込まれます。年度の変わり目である4月分の支給は5月の振込に含まれますが、5月の振込にはまだ前年度分(2月・3月分)も含まれている点に注意が必要です。新年度の金額に完全に切り替わるのは、次の8月の振込からになります。
| 支給月 | 対象期間 |
|---|---|
| 2月 | 前年11〜1月分 |
| 5月 | 2〜4月分 |
| 8月 | 5〜7月分 |
| 11月 | 8〜10月分 |
なお、公的年金として障害年金や遺族年金を受給している方も、特別障害者手当を併給できます。ただし、所得制限の判定にあたっては、この手当自体の受給額も所得に算入される点は覚えておいてください。
申請の流れと必要書類
申請はお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で行います。主な必要書類は次の3点。
認定請求書
窓口で入手できる所定の様式です。申請者本人か、家族・支援者が記入・提出します。
診断書
障害の種類に応じた専用の様式があり、主治医に作成を依頼する必要があります。申請前に、実際の生活状況が正しく反映されそうか主治医と相談しておくと、審査でのすれ違いを防ぎやすくなります。
所得状況届などの添付書類
申請者本人の戸籍抄本や世帯全員の住民票の写し、所得を証明する書類などが必要です。マイナンバーの提出で省略できる書類もあるため、窓口で確認してください。
審査には自治体にもよりますが、おおむね2〜3か月程度かかります。認定されると申請の翌月分から支給が始まるため、対象になりそうだと感じたら早めに相談することが大切です。
審査の結果、実際にどの程度認定されているのでしょうか。厚生労働省が公表しているデータによると、令和5年度の認定請求受付件数は全体で21,984件、そのうち約74%にあたる約17,000件が受給認定されています。却下は約4,200件で全体の約18%です。認定基準は書類上厳しく見えますが、実際の生活状況を丁寧に伝えることで認定に至るケースは決して少なくありません。
現況届の提出を忘れない
受給が始まった後は、毎年8月に現況届を提出する必要があります。現況届は、施設への入所状況や入院状況、所得状況に変化がないかを確認するための書類です。提出を忘れると8月以降の手当が止まったり、受け取れなくなったりする可能性があるため、注意してください。
なお、現況届の時点で所得が限度額を超えて一時的に支給停止となっても、翌年度の現況届で所得が限度額を下回っていることが確認されれば、支給は再開されます。一度停止になったからといって、恒久的に受給資格を失うわけではありません。
障害年金・障害者手帳との違い
特別障害者手当は、障害者手帳や障害年金としばしば混同されますが、それぞれ目的も審査基準も異なる別制度です。
障害者手帳は等級による社会的なサービス(税制優遇・公共交通の割引等)を受けるための証明書であり、特別障害者手当の受給要件とは連動していません。一方、障害年金は保険料の納付実績をもとに支給される所得保障の制度で、障害年金がもらえない人の特徴で解説したような審査基準の違いがあります。
3つの制度は独立していますが、障害者控除の要件や、障害支援区分の認定調査で確認される日常生活能力の項目とも関連が深く、あわせて確認しておくと制度全体の理解が深まります。障害福祉サービスそのものの種類や分類を知りたい方はこちらの記事も参考になります。実際に窓口で相談する際も、「特別障害者手当だけ」ではなく、関連する制度もまとめて聞いておくと、申請の手間を1回で済ませられます。
| 制度 | 何を保障するか | 審査の基準 | 手帳の要否 |
|---|---|---|---|
| 特別障害者手当 | 重度障害による特別な負担の軽減 | 障害の状態(常時介護の必要性) | 不要 |
| 障害年金 | 稼得能力の喪失に対する所得保障 | 保険料納付要件+障害の状態 | 不要 |
| 障害者手帳 | 各種サービス・税制優遇を受ける証明 | 障害の種類・等級 | (手帳そのもの) |
こうして並べてみると、それぞれ別の物差しで審査されていることがわかります。今回、複数の一次資料にあたって整理していて感じたのは、この3制度を混同したまま「手帳がないから無理だろう」と自己判断し、申請自体を諦めてしまう方が一定数いるらしいという点です。少しでも当てはまるかもしれないと思ったら、まずは窓口で状況を伝えてみることをおすすめします。
よくある質問
Q: 特別障害者手当と障害年金は同時にもらえますか?
A: 受け取れます。特別障害者手当は障害年金とは別の制度のため、両方の要件を満たしていれば併給が可能です。ただし、所得制限の判定にあたっては、特別障害者手当自体の受給額も所得に算入されるため注意してください。
Q: 障害者手帳を持っていませんが申請できますか?
A: 申請できます。特別障害者手当は障害者手帳の有無ではなく、実際の障害の状態をもとに審査されます。要介護認定を受けている高齢の方が対象になるケースもあるため、手帳がないという理由だけで諦める必要はありません。
Q: 施設に入っていても受給できますか?
A: 施設の種類によります。有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅は「在宅」として扱われるため受給の対象になり得ますが、障害者支援施設や特別養護老人ホーム、3か月を超える入院は対象外です。判断が難しい場合は窓口で施設の種別を伝えて確認してください。
Q: 審査にはどのくらい時間がかかりますか?
A: 自治体によって差はありますが、申請から2〜3か月程度が目安です。認定されると申請の翌月分から支給が始まるため、対象になりそうだと感じた時点で早めに申請することをおすすめします。
Q: 一度却下されたら再申請はできませんか?
A: 再申請は可能です。障害の状態は変化するものであり、以前は基準を満たさなかった方でも、症状の進行や介護の状況の変化によって、後から認定されるケースがあります。診断書の内容が実際の生活状況を反映しているか主治医と確認したうえで、再度申請を検討してみてください。
Q: 現況届を出し忘れたらどうなりますか?
A: 8月以降の手当の支給が遅れたり、受け取れなくなったりする可能性があります。うっかり忘れやすい書類なので、受給が決まった時点でカレンダーやリマインダーに毎年8月の提出期限を登録しておくと安心です。
Q: 有料老人ホームに入っていますが対象になりますか?
A: 対象になる可能性があります。有料老人ホームやグループホーム、サービス付き高齢者向け住宅は介護保険上の分類で「在宅」に含まれるため、施設に入居していても受給対象になり得ます。一方、特別養護老人ホームや介護老人保健施設は「施設」の扱いとなり対象外です。同じ「ホーム」でも扱いが分かれるため、施設の種別を窓口で確認してください。
Q: 支給額は毎年変わるのですか?
A: 変わります。物価や賃金の変動に応じて毎年見直されており、令和8年度(2026年4月分〜)は月額30,450円です。前年度から860円増額されました。年度が変わるタイミングでは振込額が段階的に切り替わるため、詳しい時期は本文の「支給額と振込時期」を確認してください。
この記事を書いた人:support-s-log編集部
障害福祉・特別支援教育に関する情報を継続的に取材する編集チームです。行政資料や制度解説、専門家・当事者による一次情報をもとに、障害のある方やご家族、福祉施設で働く方・働きたい方に向けて、正確でわかりやすい情報の発信を心がけています。


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