- 障害者総合支援法の目的と、対象になる人の範囲
- 「自立支援給付」「地域生活支援事業」6分野のサービス内容と申請の流れ
- 2025年10月に始まった「就労選択支援」など、施設で働く人が押さえておきたい最新の動き
「障害者総合支援法という名前は聞くけれど、何を定めた法律なのかよくわからない」。窓口や施設でそう感じたことはないでしょうか。障害者総合支援法は、障害のある方が地域で自分らしく暮らせるよう、福祉サービスの種類と利用ルールを定めた法律です。介護給付や訓練等給付など、名前を知っているサービスの多くは、実はこの法律に根拠があります。
この記事では、行政の公開資料と現場の専門家による解説動画をもとに、法律の目的からサービスの全体像、利用者負担、2025年の制度変更までを整理しました。障害のある方やご家族はもちろん、障害福祉施設で働く方・働きたい方にも役立つ内容です。
障害者総合支援法とは?対象と枠組みを最初に整理
障害者総合支援法とは、どんな法律なのでしょうか。正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」で、障害のある方が受けられる福祉サービスの種類・対象者・利用ルールをまとめて定めた法律です。平成25年4月に施行され、詳しい制度概要は厚生労働省の公式ページでも公開されています。
この法律ができる前は、障害の種類ごとに別々の法律で福祉サービスが提供されていました。身体障害・知的障害・精神障害でルールがバラバラだった状態を一本化し、サービスの申請窓口や利用手続きを共通化したのが大きな特徴です。
制度の名前は「障害者自立支援法」から「障害者総合支援法」へと変わった経緯があります。この変遷を知っておくと、なぜ現在のような仕組みになったのかが理解しやすくなります。
| 年 | できごと |
|---|---|
| 2003年 | 行政がサービス内容を決める「措置制度」から、利用者が事業者と契約する「支援費制度」へ移行 |
| 2006年 | 障害者自立支援法が施行。利用者負担の増加をめぐり訴訟が起こる |
| 2013年 | 障害者総合支援法が施行。難病患者を対象に追加 |
| 2025年 | 就労選択支援の創設など、就労支援を中心に改正内容が順次施行 |
障害者総合支援法の基本理念
法律の条文には、どんな考え方が書かれているのでしょうか。基本理念は「障害のある人もない人も、互いの人格と個性を尊重し合いながら、地域で共生する社会を実現すること」です。
すべての人が、かけがえのない個人として基本的人権を持つ。この考え方が制度の土台になっています。サービスの細かいルールを読むより先に、この理念を知っておくと、条文の意図が読み取りやすくなるでしょう。
対象になるのは誰か
障害者総合支援法のサービスは、誰が使えるのでしょうか。身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)のある方、および指定難病の患者、18歳未満の障害児が対象です。障害者手帳を持っていない方でも、対象疾病に該当すれば利用できる点は見落とされがちなポイントといえます。
対象となる難病の数は、年々見直されています。仙台市の案内によると、2025年4月からは対象疾病が369から376へと拡大されました。制度が始まった2013年時点では130疾病だったことを考えると、対象範囲は着実に広がってきています。
| 時期 | 対象疾病数 |
|---|---|
| 2013年4月(制度開始時) | 130疾病 |
| 2021年11月 | 366疾病 |
| 2024年4月 | 369疾病 |
| 2025年4月 | 376疾病 |
自分や家族の病名が対象になるかどうかは、障害者手帳のメリットを解説した記事でも触れている通り、市区町村の窓口や難病情報センターで確認するのが確実です。
サービスの全体像は「自立支援給付」と「地域生活支援事業」の2本柱
数十種類あるサービスを一つずつ覚えるのは大変です。まず押さえたいのは、全体が「自立支援給付」と「地域生活支援事業」という2つの柱に分かれているという構造です。
| 区分 | 特徴 | 決め方 |
|---|---|---|
| 自立支援給付 | 個人単位で支給される。全国共通のルール | 国が基準を定める |
| 地域生活支援事業 | 地域の実情に応じて内容が変わる | 都道府県・市区町村が内容を決める |
自立支援給付は、さらに5つの窓口に分かれます。ここが制度の核となる部分です。
| 分野 | 主なサービス例 |
|---|---|
| 介護給付 | 居宅介護(ホームヘルプ)・重度訪問介護・短期入所・施設入所支援など |
| 訓練等給付 | 就労移行支援・就労継続支援(A型・B型)・自立訓練・共同生活援助(グループホーム)など |
| 自立支援医療 | 更生医療・育成医療・精神通院医療 |
| 補装具 | 車椅子・義肢・補聴器など |
| 相談支援 | 計画相談支援・地域相談支援 |
介護給付を利用するには、障害支援区分の認定が必要になります。区分の詳しい判定基準や認定調査の流れは、障害支援区分とは何かを解説した記事で詳しく整理しているので、あわせて確認してみてください。訓練等給付は、区分認定がなくても利用できるサービスが多い点が介護給付との違いです。
地域生活支援事業でできること
地域生活支援事業には、どんな内容が含まれるのでしょうか。移動支援(ガイドヘルプ)・理解促進のための啓発活動・相談支援窓口の運営などが代表例です。
市区町村が実施する事業と、都道府県が実施する事業に分かれます。市区町村は住民に身近な相談・移動支援を担当し、都道府県は複数の市区町村にまたがる人材育成や広域的な調整を担当するという役割分担です。
サービスを利用するまでの流れ
初めて申請する場合、何から始めればよいのでしょうか。まず市区町村の障害福祉担当窓口に相談し、サービス利用の申請をするところから始まります。介護給付を希望する場合は、この後に障害支援区分の認定調査が入ります。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 申請 | 市区町村の窓口でサービス利用を申請する |
| 2. 認定調査(介護給付の場合) | 障害支援区分の認定調査を受ける |
| 3. サービス等利用計画案の作成 | 相談支援事業者と一緒に、必要なサービスをまとめた計画案を作る |
| 4. 支給決定 | 市区町村が計画を審査し、サービスの支給量を決定する |
| 5. 利用開始 | サービス担当者会議を経て、計画に沿ってサービスを使い始める |
利用開始後も、状況の変化に応じて計画は定期的に見直されます。生活の状態は変わっていくものなので、一度決まった支給量がずっと固定されるわけではないと考えておくと安心です。
利用者負担はいくらかかるか
サービスを使うと、費用はどれくらい自己負担になるのでしょうか。原則1割の自己負担ですが、世帯の所得に応じて月々の負担上限額が決められる「応能負担」の仕組みが採用されています。
消費税のように所得に関係なく一律の負担をする「応益負担」とは異なり、所得が低いほど負担が軽くなる仕組みです。
| 区分 | 世帯の状況 | 負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満、児童は概ね年収600万円以下) | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
どれだけサービスを利用しても、この上限額を超えて請求されることはありません。負担額の区分けは世帯の課税状況で決まるため、正確な金額は市区町村の窓口で確認するのが確実です。所得税の障害者控除とあわせて家計への影響を知りたい場合は、障害者控除の仕組みを解説した記事も参考になります。
介護保険法との違い・65歳を境にした「優先原則」
障害福祉サービスと介護保険サービス、両方の対象になったらどちらを使うのでしょうか。65歳以上になり要介護認定を受けると、原則として介護保険サービスが優先される「介護保険優先の原則」があります。
たとえば居宅介護(ホームヘルプ)は、介護保険の訪問介護と内容が重なります。この場合は介護保険が優先される扱いです。一方で、就労支援や同行援護・行動援護のように介護保険にはない障害福祉固有のサービスは、65歳を超えても障害者総合支援法側から利用を続けられます。
| 比較項目 | 障害者総合支援法 | 介護保険法 |
|---|---|---|
| 負担方式 | 応能負担(所得に応じて変動) | 原則1〜3割の応益負担 |
| 区分の段階 | 障害支援区分 1〜6(6段階) | 要支援1〜2・要介護1〜5(7段階) |
| 財源 | 保険料はなく、税金(公費)で運営 | 40歳以上が納める保険料+公費 |
| 就労支援 | あり(介護保険との明確な違い) | なし |
グループホームのように名称が同じでも中身が異なるサービスもあります。介護保険のグループホームは認知症の方を主な対象としますが、障害福祉のグループホームは障害のある方の地域生活を支える場です。
編集部が介護福祉士の資格対策動画を確認したところ、この2つの混同は試験でも頻出の引っかけポイントとして扱われていました。名称だけで判断せず、対象者と目的の違いを覚えておく方が実務でも安全です。本人の状態に合った制度をどちらから使うか迷った場合は、担当のケースワーカーに早めに相談してください。
2025年10月開始「就労選択支援」とは
働き方を選ぶ場面で、新しい仕組みができたのをご存じでしょうか。2025年10月から「就労選択支援」という新サービスが始まり、一般就労と就労系福祉サービスのどちらが自分に合うかを、作業体験や面談を通じて整理できるようになりました。
この制度ができた背景には、これまで本人の希望や適性を十分に確認しないまま就労継続支援B型の利用が決まってしまうケースがあった、という課題があります。詳しい制度趣旨は厚生労働省の資料で確認できます。
2025年10月以降、新たに就労継続支援B型の利用を希望する方は、原則として就労選択支援を経てから利用する流れに変わりました。ただし次のようなケースは対象外です。
| 対象外になるケースの例 |
|---|
| 50歳以上の方 |
| 障害基礎年金1級を受給している方 |
| 長年の就労経験があり、体力面の低下から一般就労が難しくなった方 |
まだ始まったばかりの制度のため、事業所によって運用の慣れに差があるのが実情です。利用を検討している方は、最新の運用状況を相談支援専門員に確認してください。
施設で働く人が知っておきたいポイント
ここからは、障害福祉施設で働く方・働きたい方に向けた視点を補足します。法律そのものは頻繁に見直されるため、制度の全体像を押さえたうえで改正の動きを追う姿勢が現場では欠かせません。
編集部が確認した介護事業者向けの解説動画では、2026年6月に社会保障審議会障害者部会がまとめた最終報告書の内容が紹介されていました。13の論点が示されており、居住支援(グループホームの新類型)・就労支援・高齢の障害者への支援など、事業展開に直結するテーマが並んでいます。100ページを超える報告書のため、自分の事業所が関わるサービス分野だけでも目を通しておくと役立つとのことでした。
特に注目したいのは、障害のある方の高齢化に対応する支援体制の議論です。障害福祉と介護保険の両方に関わる利用者が増える中で、2つの制度を横断的に理解している職員は現場で頼られる存在になります。この記事で紹介した「介護保険優先の原則」や区分の仕組みは、まさにその土台にあたる知識です。
もう一つ、報酬改定のたびに変わるのが加算・減算の要件です。特別障害者手当の解説記事で触れているような、利用者本人が受けられる給付制度についても把握しておくと、相談を受けた際に幅広い選択肢を提示できます。制度を横断して知っておくことが、結果的に利用者本人の生活の安定につながります。
まとめ:まず何を押さえればよいか
障害者総合支援法は、障害のある方の福祉サービスをまとめて定める法律です。自立支援給付(介護給付・訓練等給付・自立支援医療・補装具・相談支援)と地域生活支援事業という2本柱の構造を知っておけば、個別のサービス名を調べるときにも迷いにくくなります。
| ステップ | やること |
|---|---|
| 1 | お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口で、対象になるかどうかを相談する |
| 2 | 介護給付を希望する場合は、障害支援区分の認定調査の流れを確認する |
| 3 | 利用者負担の上限額と、あわせて使える控除・給付制度も確認する |
制度は毎年のように見直されています。この記事の内容を目安にしつつ、実際の手続きでは市区町村の窓口で最新情報を確認してください。
よくある質問
障害者総合支援法について、特に質問が多い7つをまとめました。気になる項目から確認してみてください。
Q: 障害者手帳がなくても障害者総合支援法のサービスは使えますか?
A: 使える場合があります。対象となる指定難病に該当する方は、障害者手帳を持っていなくても必要と認められた支援を受けられます。まずは市区町村の窓口に相談してください。
Q: 障害者総合支援法と介護保険、両方対象の場合はどちらを使いますか?
A: 65歳以上で要介護認定を受けている場合、訪問介護やデイサービスなど内容が重なるサービスは介護保険が優先されます。ただし就労支援など障害福祉固有のサービスは、引き続き障害者総合支援法側から利用できます。
Q: サービスを利用する費用はどれくらいかかりますか?
A: 原則1割の自己負担ですが、世帯の所得に応じて月々の上限額が決まる応能負担の仕組みです。生活保護世帯・市町村民税非課税世帯は0円、一般1は9,300円、一般2は37,200円が上限の目安です。
Q: 就労継続支援B型を利用したい場合、必ず就労選択支援を受けないといけませんか?
A: 2025年10月以降に新たに利用を希望する場合は原則として必要です。ただし50歳以上の方や障害基礎年金1級受給者など、対象外になるケースもあります。詳細は相談支援専門員に確認してください。
Q: 訓練等給付を利用するのに、障害支援区分の認定は必要ですか?
A: 就労移行支援や就労継続支援などの訓練系サービスの多くは、区分認定を受けていなくても利用できます。介護給付を利用する場合に区分認定が必要になるとイメージすると分かりやすいでしょう。
Q: 対象となる難病の一覧はどこで確認できますか?
A: お住まいの都道府県・市区町村の障害福祉担当窓口や、難病情報センターのウェブサイトで確認できます。対象疾病は年度ごとに見直されるため、最新の情報を確認してください。
Q: サービスの申請から利用開始まで、どれくらいの期間がかかりますか?
A: 自治体や申請内容によって差がありますが、申請からサービス等利用計画案の作成、支給決定を経て、1〜2ヶ月程度が目安です。介護給付の場合は障害支援区分の認定調査が加わるため、やや時間がかかる傾向があります。
この記事の内容は目安として捉え、実際の手続きではお住まいの市区町村の窓口で最新情報を確認してください。

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