Q. 特別支援学校の学習指導要領とは? → A. 幼稚部・小学部・中学部・高等部ごとに国が定めた教育課程の基準で、通常の各教科等に加えて「自立活動」という障害に応じた特別な指導領域が設けられている点が最大の特徴です。
「学習指導要領」と聞くと、小中学校の教科書の内容を決めている文書というイメージが強いかもしれません。ところが特別支援学校の学習指導要領には、通常の学校にはない仕組みがいくつも組み込まれています。筆者もこの記事を調べる前は、自立活動という言葉を聞いたことがありませんでした。この記事では、文部科学省の公式情報をもとに、学習指導要領の基本的な構造と、自立活動・個別の指導計画との関係を順に整理します。
この記事でわかること
- 特別支援学校の学習指導要領が何を定めているか
- 改訂の時期と、幼稚部・小学部・中学部・高等部の全面実施スケジュール
- 「自立活動」という特別な指導領域の内容と教え方
- 知的障害特別支援学校で教科が独自になっている理由
- 個別の指導計画・個別の教育支援計画との関係
- 施設職員・家族が学習指導要領を知っておくメリット
特別支援学校の学習指導要領とは?基準としての役割
学習指導要領は、何のために作られているのでしょうか。全国どこの特別支援学校でも一定の教育水準を保てるようにする、国が定めた教育課程の基準です。学校ごとに教える内容が大きく違ってしまわないよう、各教科等の目標や内容の大枠を示しています。
特別支援学校の学習指導要領は、幼稚園・小学校・中学校・高等学校の学習指導要領に準じた構成を基本にしています。つまり、国語や算数といった教科の骨格は通常の学校とほぼ同じです。そのうえで、障害による学習上または生活上の困難を改善・克服するための「自立活動」という領域が特別に加えられています。文部科学省の特別支援教育の教育課程についての説明でも、この基本構造が示されています。特別支援学校とは何かという記事で紹介した「準ずる教育」という考え方が、学習指導要領の構成にそのまま反映されている形です。
もう一つの特徴は、子どもの障害の状態に応じて教育課程を弾力的に編成できることです。学年の学習内容を下学年の内容に替える調整や、知的障害のある子どもを知的障害者用の各教科に替える調整があります。こうした弾力的な編成は、学習指導要領のなかであらかじめ認められています。
学習指導要領はいつ改訂された?全面実施のスケジュール
今の学習指導要領は、いつから使われているのでしょうか。平成29年4月28日に幼稚部・小学部・中学部が、平成31年2月4日に高等部が改訂を告示されました。平成28年12月の中央教育審議会答申を受けた改訂です。
告示されてすぐに全面実施になるわけではなく、学校段階ごとに移行期間を経て段階的に切り替わります。文部科学省の特別支援学校学習指導要領等の改訂についての説明をもとに整理すると、以下のようになります。
| 学校段階 | 告示 | 全面実施 |
|---|---|---|
| 幼稚部 | 平成29年4月28日 | 平成30年度(2018年度)から |
| 小学部 | 平成29年4月28日 | 平成32年度(2020年度)から |
| 中学部 | 平成29年4月28日 | 平成33年度(2021年度)から |
| 高等部 | 平成31年2月4日 | 平成34年度(2022年度)から年次進行 |
高等部は「年次進行」という方式のため、2022年度の入学生から1学年ずつ新しい学習指導要領に切り替わりました。現在は在校生全員が新しい学習指導要領のもとで学んでいます。小学校・中学校・高等学校の改訂スケジュールとそろえてあります。きょうだいが通常の学校と特別支援学校に分かれている家庭でも、制度が切り替わる時期の感覚はおおむね共通しています。
自立活動とは?学習指導要領だけにある特別な指導領域
自立活動とは、具体的に何を指すのでしょうか。障害による学習上・生活上の困難を、本人が主体的に改善・克服するための力を育てる指導領域です。通常の学校の教育課程には存在しない、特別支援学校ならではの仕組みです。文部科学省の自立活動の解説ページでは、この領域の位置づけが詳しく説明されています。
自立活動の内容は、6つの区分に整理されています。健康の保持・心理的な安定・人間関係の形成・環境の把握・身体の動き・コミュニケーションです。この6区分のもとに、具体的な項目が示されています。
| 区分 | 内容の例 |
|---|---|
| 健康の保持 | 生活リズムの形成、病気の状態の理解と生活管理など |
| 心理的な安定 | 情緒の安定、学習・生活上の困難を改善する意欲など |
| 人間関係の形成 | 他者とのかかわりの基礎、集団への参加の基礎など |
| 環境の把握 | 保有する感覚の活用、感覚や認知の特性への対応など |
| 身体の動き | 姿勢と運動・動作の基本的技能、移動能力など |
| コミュニケーション | コミュニケーションの基礎的能力、言語の受容と表出など |
自立活動はどう教えられている?2つの指導の場
自立活動は、どの時間に教えるのでしょうか。「自立活動の時間における指導」として時間を特設する方法と、各教科等の指導のなかで日常的に行う方法の、両方で成り立っています。
自立活動の時間を使った指導はもちろんですが、国語や体育の授業中にも自立活動の視点は入り込みます。姿勢の保ち方やコミュニケーションの取り方への配慮が、その一例です。学校の教育活動全体を通じて行われる点が、教科の授業とは少し違う自立活動らしさです。どの区分を重点にするかは、一人ひとりの実態に応じて個別の指導計画のなかで決められます。
知的障害特別支援学校の教育課程はなぜ違う?独自の教科と合わせた指導
知的障害のある子どもが通う特別支援学校では、教科の名前や教え方が通常の学校と違うことがあります。なぜでしょうか。知的障害の特徴や学習上の特性を踏まえて、独自の教科とその目標・内容が学習指導要領に示されているからです。
小学部では、国語・算数のほかに「生活」という教科があります。これは通常の小学校低学年にもある生活科とは別物で、知的障害教育のために設けられた教科です。中学部・高等部でも、知的障害者用の各教科として、通常の教科と目標・内容の示し方が異なります。
もう一つの独自性は、複数の教科や自立活動などをまとめて指導する「各教科等を合わせた指導」が認められていることです。代表的なのが生活単元学習で、季節の行事や買い物といった生活上のまとまりのある課題を軸に、国語・算数・生活などの学習を一体的に進めます。遊びの指導や作業学習も、同じ考え方に基づく指導の形です。特別支援学校の知的障害の記事では、程度別の指導内容とクラス編成についてさらに詳しく解説しています。
個別の指導計画・個別の教育支援計画との関係
学習指導要領と、よく耳にする「個別の指導計画」はどう関係するのでしょうか。学習指導要領の改訂によって、すべての幼児児童生徒に個別の指導計画を作成することが明確に求められています。
個別の指導計画は、学習指導要領が示す各教科や自立活動の内容を、一人ひとりの実態に合わせて具体的にどう指導するかを計画したものです。学習指導要領という「全国共通の大枠」と、個別の指導計画という「その子に合わせた具体案」の、二段構えになっていると考えるとわかりやすいです。
もう一つ、医療・福祉・労働などの関係機関と連携するための「個別の教育支援計画」もあわせて作成が求められています。学校の中だけで完結する個別の指導計画に対して、個別の教育支援計画は学校の外とのつながりを計画するものです。保護者面談や個別支援計画の見直しの場で目にする書類は、こうした学習指導要領の規定にもとづいて作られています。
障害の種類によって学習指導要領の運用はどう変わる?
学習指導要領の基本的な仕組みは共通ですが、障害の種類によって運用の重点は変わります。たとえば肢体不自由のある子どもには、自立活動のなかでも「身体の動き」の区分や、姿勢を保つための補助用具の活用が重視されます。肢体不自由教育の記事では、医療的ケアとの関係も含めて解説しています。
病弱教育の対象校では、治療や入院生活との両立を踏まえ、心理的な安定や健康の保持の区分が重点になりやすい傾向があります。詳しくは病弱教育の記事で紹介しています。高等部になると、自立活動に加えて卒業後の社会参加を見据えた学習の比重が増していきます。高等部の記事では、3年間の学びと進路の関係を取り上げました。
施設職員・家族が学習指導要領を知っておくメリット
制度の名前を知るだけでなく、実際にどう役立つのでしょうか。ポイントは3つあります。
1つ目は、「なぜこの教え方なのか」が説明できるようになることです。生活単元学習や自立活動の時間を見て、遊んでいるだけに見えると感じる家族もいます。学習指導要領に根拠がある指導だとわかれば、学校からの説明をより理解しやすくなります。
2つ目は、個別の指導計画の面談で的を射た質問ができることです。「自立活動のどの区分を今伸ばしているか」を尋ねられると、担任の先生も具体的に答えやすくなります。筆者が今回複数の自治体の資料を読んで感じたのは、自立活動の6区分という枠組みを知っているだけで、面談の対話の質がかなり変わりそうだという点でした。
3つ目は、進学・転学の判断材料になることです。高等部からの進学や、特別支援学級との違いを考えるとき、学習指導要領のどの部分が変わるのかを把握しておくと、見学時に確認すべき点がはっきりします。特別支援学校教諭免許状の記事では、この指導を担う教員側の資格制度も紹介しています。
まとめ:学習指導要領は「準ずる教育」と「自立活動」の二本立て
特別支援学校の学習指導要領は、2つの柱で構成されています。通常の学校に準じた各教科等の教育と、障害による困難に向き合う自立活動です。平成29年・31年の改訂を経て、現在はすべての学校段階で新しい学習指導要領のもとで指導が行われています。
知的障害特別支援学校の独自教科や、個別の指導計画との関係まで押さえておくと、学校からの説明や面談の理解が深まります。まずは自立活動の6区分の名前だけでも覚えておくことから始めてみてください。
よくある質問
Q1: 特別支援学校の学習指導要領は、小中学校の学習指導要領と全く別のものですか?
A1: 別物ではなく、小学校・中学校・高等学校の学習指導要領に準じた構成が基本です。そのうえで「自立活動」という特別な指導領域が加えられ、障害の状態に応じて教育課程を弾力的に編成できる仕組みが組み込まれています。
Q2: 自立活動は何時間目にやるのですか?
A2: 自立活動の時間を特設して指導する方法に加え、国語や体育などの各教科の授業のなかでも、教育活動全体を通じて行われます。重点にする区分や時間の配分は、個別の指導計画のなかで一人ひとりに合わせて決められます。
Q3: 知的障害特別支援学校に「生活」という教科があるのはなぜですか?
A3: 知的障害の特徴や学習上の特性を踏まえて、学習指導要領に独自の教科として示されているためです。通常の小学校の生活科とは別の教科で、日常生活に必要な力を総合的に育てることを目的にしています。
Q4: 個別の指導計画は、学習指導要領とどう違いますか?
A4: 学習指導要領は全国共通の教育課程の基準です。個別の指導計画は、その基準のなかで一人ひとりの実態に合わせて具体的な指導内容を定めたものです。学習指導要領という大枠を、その子向けに具体化したものと考えるとわかりやすいです。
Q5: 今の学習指導要領はいつから全面実施されていますか?
A5: 幼稚部は平成30年度(2018年度)、小学部は平成32年度(2020年度)、中学部は平成33年度(2021年度)から全面実施されています。高等部は平成34年度(2022年度)の入学生から年次進行で実施され、現在は在校生全員が新しい学習指導要領のもとで学んでいます。
Q6: 生活単元学習とは何ですか?
A6: 知的障害特別支援学校で行われる「各教科等を合わせた指導」の代表的な形です。季節の行事や買い物といった生活上のまとまりのある課題を軸に、国語・算数・生活などの学習を一体的に進める指導方法です。
Q7: 肢体不自由や病弱の子どもでも、自立活動の内容は同じですか?
A7: 自立活動の6区分という枠組み自体は共通です。ただし重点は障害の状態で異なり、肢体不自由であれば身体の動き、病弱であれば心理的な安定や健康の保持が重視される傾向があります。
Q8: 学習指導要領の内容は保護者もどこで確認できますか?
A8: 文部科学省の公式サイトで学習指導要領や解説が公開されています。学校が配布する個別の指導計画の説明資料と合わせて読むと、自分の子どもの指導がどの部分に基づいているかを確認しやすくなります。
この記事を書いた人:support-s-log編集部

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