Q. 認知症で障害者手帳はもらえる? → A. 認知症で日常生活や社会生活に支障があれば、精神障害者保健福祉手帳の対象になります。年齢の制限はなく、65歳以上で診断を受けた方も申請できます。申請できるのは、認知症で初めて受診した日から6か月以上たってからです。
この記事でわかること
- 認知症で対象になる手帳と、1〜3級の等級の目安
- 審査で見られるポイントと、申請の流れ
- 手帳で使える支援と、手帳がなくても受けられる税の控除
- 介護保険・障害年金との使い分け
「親が認知症と診断されたけれど、手帳まで取るものなの?」。同じ疑問を持つご家族は少なくないでしょう。手帳は身体の障害のためのもの、というイメージが強いからでしょう。本記事では、厚生労働省の判定基準や国税庁、自治体の案内をもとに整理しました。内容は2026年11月時点で確認したものです。等級は審査で決まるため、ここで示す等級は目安として読んでください。
認知症で対象になる手帳はどれ?
中心になるのは、精神障害者保健福祉手帳です。厚生労働省の判定基準では、初老期・老年期に発症する認知症を「器質性精神障害」として扱います。アルツハイマー型認知症も血管性認知症も、この区分に入ります。
障害者手帳は3種類ありますが、認知症との関係は次のとおりです。
| 手帳の種類 | 認知症との関係 |
|---|---|
| 精神障害者保健福祉手帳 | 認知症そのものが対象。等級は1〜3級 |
| 身体障害者手帳 | 認知症は対象外。脳梗塞のまひなど、体の障害が残った場合に対象 |
| 療育手帳 | 一般に、発達期に生じた知的障害が対象のため、認知症は対象外 |
※厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」などをもとにした整理。
香川県の案内でも、対象を「精神科の病気(老人性認知症を含む)」がある人としています。手帳の種類の違いは障害者手帳の種類の記事で紹介しています。手帳そのものの全体像は、精神障害者保健福祉手帳の記事をご覧ください。
血管性認知症で、まひもある場合は?
両方の手帳を持てる場合があります。認知症の部分は精神障害者保健福祉手帳、まひの部分は身体障害者手帳で判定されます。判定基準の留意事項では、失語やまひを「身体障害に分類すべき症状」としています。そのため、精神の判定では加味しません。まひの等級の考え方は脳梗塞と障害者手帳の記事にまとめました。
認知症の等級は何級になる?
記憶・注意などの障害の程度と、生活のしづらさを合わせて、1〜3級のどれかが決まります。判定基準では、器質性精神障害の状態を次のように定めています。
| 等級 | 判定基準での状態(器質性精神障害) | 生活の目安 |
|---|---|---|
| 1級 | 記憶障害・遂行機能障害・注意障害・社会的行動障害のいずれかがあり、1つ以上が高度 | 日常生活の用を自分で済ませられない |
| 2級 | 同じ障害のいずれかがあり、1つ以上が中等度 | 日常生活に著しい制限を受ける |
| 3級 | 同じ障害のいずれかがあり、いずれも軽度 | 日常生活や社会生活に制限を受ける |
※厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」(平成25年改正版)より要約。
遂行機能障害とは、段取りを立てて物事を進めることが難しくなる状態です。社会的行動障害は、感情を抑えにくい、意欲が出ないといった変化を指します。
「生活のしづらさ」はどう判定される?
診断書の「日常生活能力の程度」の欄が、等級の大きな目安になります。判定基準の留意事項には、欄の選択肢ごとの目安が示されています。
| 診断書の「日常生活能力の程度」 | 等級の目安 |
|---|---|
| 日常生活・社会生活は普通にできる | 非該当 |
| 日常生活または社会生活に一定の制限を受ける | おおむね3級 |
| 日常生活に著しい制限があり、時に応じて援助が必要 | おおむね2級 |
| 日常生活に著しい制限があり、常時援助が必要 | おおむね1級 |
| 身の回りのことはほとんどできない | おおむね1級 |
※同じ留意事項より。実際は診断書全体を見て総合的に判定されます。
診断書では、生活の8項目も評価されます。食事、身の回りの清潔、金銭管理、通院と服薬、人との意思疎通です。さらに身の安全、社会的手続き、趣味や社会参加が加わります。等級全体の考え方は障害者手帳の等級の記事でも解説しています。
審査で見られるポイントは?
大事なのは「家族の手助けがない状態で、どこまでできるか」です。判定基準の留意事項には、判定の前提が書かれています。生活能力は「アパート等で単身生活を行った場合を想定して」判定する、という一文です。
筆者が判定基準を読んで気づいたこと
筆者が留意事項を読んで最も意外だったのは、この「単身生活を想定」という一文です。家族が毎日の服薬や支払いを支えていると、本人は「できている」ように見えます。けれど判定では、その手助けを外した状態で考えます。
もう1つ、判定では今の状態だけでなく、おおむね過去2年と今後2年の見通しも考えるとされています。認知症のように少しずつ進む病気では、ここも見落とせない点でしょう。
「援助」に入るのはどんなこと?
留意事項では、援助を「助言、指導、介助等」と定めています。体を支える介助だけでなく、声かけや確認も援助に入ります。「薬の時間を毎回声かけしている」「財布の中身を家族が確認している」。こうした支えも、診断書に書いてもらう価値があります。
認知症で手帳を申請する流れは?
流れは「手帳用の診断書をもらい、市区町村の窓口に申請する」です。申請できるのは、認知症で初めて医療機関を受診した日(初診日)から6か月以上たってからです。
- 市区町村の障害福祉の窓口で、申請書と手帳用の診断書の様式をもらう
- 主治医に診断書を書いてもらう(初診日から6か月以上たった時点のもの)
- 申請書・診断書・写真(縦4cm×横3cm)・マイナンバーの確認書類をそろえる
- 市区町村の窓口に提出する
- 審査を経て、手帳が交付される
※大阪府・川崎市の案内をもとにした流れ。必要書類は自治体で異なります。
川崎市の案内では、診断書は作成から3か月以内に申請するよう求めています。申請から決定まで2〜3か月かかることがある、とも書かれていました。写真の規格は障害者手帳の写真サイズの記事、手続き全体は障害者手帳の申請方法の記事にまとめています。
本人が窓口に行けないときは?
家族などが代わりに申請できる自治体が多くあります。ただし、委任状や代理人の本人確認書類を求められることがあります。持ち物は自治体で違うため、出かける前に窓口へ電話で確かめてください。
認知症の方は、窓口で長く待つことが負担になりがちです。書類をそろえる作業は、家族が担う場面が多いでしょう。申請書の記入で迷う欄があれば、窓口で一緒に確認してもらうと安心です。
診断書は精神科の医師でないと書けない?
精神科に限りません。静岡市の案内では、原則は精神保健指定医か精神科の医師としています。そのうえで、精神科以外でも精神障害の診断や治療をしている医師は含まれるとしています。認知症を診ている脳神経内科などの主治医が書けることもあるため、まず主治医に相談してください。
有効期限はある?
有効期限は2年で、続けて使うには更新の申請が必要です。大阪府や川崎市の案内では、期限の3か月前から更新を申請できます。精神の障害で障害年金を受けている方は、診断書の代わりに年金証書の写しで申請できる場合もあります。更新の詳しい流れは障害者手帳の更新の記事で紹介しています。
診断書をもらう前に準備しておくことは?
家での「困りごと」と「手助けしていること」を、ペアでメモしておきましょう。診察の場では、本人が「大丈夫です」と答えてしまうことがよくあります。家族のメモがあると、医師に普段の様子が伝わります。
| 評価される項目 | メモの例 |
|---|---|
| 食事 | 声をかけないと食べない、同じものばかり買ってくる |
| 身の回りの清潔 | 入浴や着替えを嫌がり、促さないとしない |
| 金銭管理 | 支払いを忘れる、同じ商品を何度も買う |
| 通院・服薬 | 薬を飲んだか忘れる、家族が毎回渡している |
| 人との意思疎通 | 話がかみ合わない、怒りっぽくなった |
| 身の安全 | 火の消し忘れがある、外出して道に迷った |
| 社会的手続き | 役所や銀行の手続きが一人でできない |
※項目は判定基準の能力障害の8項目から7つを抜粋。
認知症が進んだら、等級は変えられる?
障害の程度が変わったときは、等級の変更を申請できます。香川県の案内では、程度が変わったと思われる人は、新規の申請と同じ書類で申請するよう求めています。認知症は少しずつ進むことが多いため、更新を待たずに見直しを考える場面もあるでしょう。
変更を考えるのはどんなとき?
たとえば、次のような変化があったときです。
- 一人で薬を飲めなくなり、家族が毎回手渡すようになった
- 支払いや買い物を、家族が代わりにするようになった
- 外出すると道に迷うことが増え、付き添いが必要になった
等級が上がると、2級から1級なら税の扱いが「特別障害者」に変わります。受けられる割引や助成が増える自治体もあります。ただし、変更には新しい診断書が必要です。診断書の費用もかかるため、主治医と相談して時期を決めてください。
筆者がおすすめしたい「変化の記録」
筆者がすすめたいのは、困りごとのメモを月に1回だけ見直す方法です。前回と比べて増えたことに印をつけておくと、変化に気づきやすくなります。更新や等級変更の診断書をお願いするときも、そのまま医師に渡せます。
手帳を取ると、どんな支援が使える?
代表的なのは、所得税・住民税の障害者控除です。国税庁の案内では、精神障害者保健福祉手帳の1級の方は「特別障害者」です。2・3級の方は「障害者」として扱われます。
| 区分 | 所得税の控除額 |
|---|---|
| 障害者(手帳2・3級など) | 27万円 |
| 特別障害者(手帳1級など) | 40万円 |
| 同居特別障害者 | 75万円 |
※国税庁 タックスアンサーNo.1160(令和8年4月1日現在法令等)より。
同居特別障害者とは、特別障害者の扶養親族などが、納税者や家族と同居している場合です。控除のしくみは障害者控除の記事で詳しく解説しています。
このほか、通院の医療費が軽くなる自立支援医療(精神通院医療)も使える場合があります。大分県の案内では、対象の例に認知症が挙がっていました。交通機関や施設の割引は、事業者や自治体ごとに扱いが違います。鉄道の割引は障害者のJR割引の記事を参考にしてください。
手帳がなくても障害者控除を受けられる?
65歳以上の方は、手帳がなくても控除を受けられる場合があります。国税庁の案内では、65歳以上で障害者に準ずると市町村長などの認定を受けた人も、控除の対象です。
認定の基準は自治体ごとに決められています。佐賀市や富士市などの案内では、要介護認定の資料にある「認知症高齢者の日常生活自立度」が一定以上かを見ています。要介護認定を受けているだけでは対象にならない点に注意してください。申請先は、市区町村の介護保険や高齢者福祉の担当課であることが多いです。
筆者の印象では、この認定書の制度は手帳よりも知られていません。確定申告の前に、一度窓口で確認してみる価値があります。
介護保険とはどう使い分ける?
65歳以上の方は、まず介護保険のサービスを使うのが基本です。40〜64歳の方も、認知症が原因なら介護保険を使えます。厚生労働省の特定疾病の一覧に、「初老期における認知症」が入っているためです。
ホームヘルプやデイサービスのように、両方の制度にあるサービスは原則として介護保険が優先されます。一方、手帳は税の控除や割引など、介護保険にない支えを受けるために使います。どちらか一方を選ぶのではなく、役割が違うと考えると整理しやすいでしょう。
| 項目 | 介護保険 | 精神障害者保健福祉手帳 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 介護サービスを使う | 税の控除・割引などを受ける |
| 対象の年齢 | 65歳以上(40〜64歳は特定疾病) | 年齢の制限なし |
| 窓口 | 市区町村の介護保険の窓口 | 市区町村の障害福祉の窓口 |
| 有効期限 | 要介護認定ごとに期間あり | 2年(更新あり) |
※厚生労働省・各自治体の案内をもとにした整理。障害福祉サービス全体は障害福祉サービスの記事で紹介しています。
若年性認知症なら、障害年金も考えられる?
65歳未満で初診日がある若年性認知症では、障害年金の対象になることがあります。日本年金機構の障害認定基準では、認知症は精神の障害として扱われます。区分は「症状性を含む器質性精神障害」です。
障害年金を受けるには、初診日に年金に加入していたことや、保険料の納付などの条件があります。手帳とは別の制度なので、等級が同じになるとは限りません。精神の障害の認定は障害年金と精神の障害の記事で解説しています。働きながらの受給は障害年金は働きながらもらえるかの記事が参考になります。
仕事を続けたいときにも役立つ?
手帳があると、障害者雇用の枠での就職や、職場での配慮の相談がしやすくなります。ただし手帳を会社に伝えるかどうかは、本人が決められます。迷うときは、ハローワークの専門窓口や地域障害者職業センターに相談してみてください。
手帳を申請するか迷ったときは?
本人の気持ちを大切にしながら、使いたい支援から考えるのが近道です。「障害者」という言葉に抵抗を感じる方も少なくありません。手帳は申請しても、使うかどうかを場面ごとに選べます。
気になる点は障害者手帳のデメリットの記事で確認できます。ほかの病気の例は障害者手帳の対象になる病名の記事にまとめています。基準の原文は、厚生労働省の障害等級判定基準と運用の留意事項で読めます。控除は国税庁の障害者控除のページ、申請の流れは大阪府の案内、対象と等級変更は香川県の案内が参考になります。
まとめ
認知症と障害者手帳について、ポイントを整理します。
- 認知症は精神障害者保健福祉手帳の対象で、年齢の制限はない
- 申請は、初診日から6か月以上たってから
- 等級は記憶・注意などの障害の程度と、生活のしづらさで決まる
- 審査は、家族の手助けがない単身生活を想定して判定される
- 1級は特別障害者、2・3級は障害者として税の控除を受けられる
- 65歳以上は、手帳がなくても認定書で控除を受けられる場合がある
- 介護サービスは介護保険、税や割引は手帳と役割が違う
まずは主治医に「手帳の診断書を書いてもらえるか」を聞いてみてください。あわせて、家での困りごとと手助けの内容をメモしておくと、診察で状態が伝わりやすくなります。
よくある質問
Q: 認知症で障害者手帳をもらうと、何級になりますか?
A: 精神障害者保健福祉手帳の1〜3級のどれかです。判定基準では、記憶障害や注意障害などが1つ以上高度なら1級、中等度なら2級、いずれも軽度なら3級とされています。実際の等級は審査で決まります。
Q: 65歳以上で認知症になっても、手帳を申請できますか?
A: 申請できます。精神障害者保健福祉手帳に年齢の制限はありません。初診日から6か月以上たっていれば、高齢になってから診断された方も対象です。
Q: 診断書は精神科の医師でないと書けませんか?
A: 精神科に限りません。精神障害の診断や治療に携わる医師が書くことになっており、認知症を診ている主治医が書ける場合があります。まず主治医に相談してください。
Q: 家族が手伝えば生活できていても、手帳はもらえますか?
A: もらえる可能性があります。判定基準の留意事項では、生活能力はアパートなどで単身生活をした場合を想定して判定するとしています。家族の手助けの内容を、診断書に反映してもらうことが大切です。
Q: 手帳がなくても障害者控除を受けられますか?
A: 65歳以上の方は、市区町村などから障害者に準ずるとの認定を受ければ、手帳がなくても控除を受けられます。認定の基準は自治体ごとに決まっているため、介護保険や高齢者福祉の窓口で確認してください。
Q: 介護保険を使っていても、手帳は取れますか?
A: 取れます。介護保険と手帳は別の制度です。介護サービスは介護保険が優先されますが、税の控除や割引などは手帳で受けられます。

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