この記事でわかること
- 特別支援学校教諭免許状の基本的なしくみと3つの種類
- 大学新卒ルートと現職教員ルートという2つの取得方法の違い
- 現職の教員が働きながら取得する具体的な方法
- 二種から一種へステップアップするときに必要な要件
Q. 特別支援学校教諭免許状はどうすれば取得できますか? → A. ゼロから取り直す免許ではなく、すでに持っている小学校・中学校・高校・幼稚園の教員免許(基礎免許状)に上乗せする形で取得します。大学の教職課程でまとめて取る「新卒ルート」と、現職の教員が働きながら追加取得する「現職教員ルート」の2つの方法があります。「特別支援学校の教員を目指したいけれど、今の教員免許はどうなるのだろうか」という疑問は、現職の教員やこれから教職を目指す方からよく聞かれます。
取得方法は大きく2つに分かれます。大学の教職課程で新卒のうちにまとめて取る「新卒ルート」。すでに教壇に立っている先生が働きながら取得する「現職教員ルート」です。この記事では両方のルートの具体的な流れを整理します。取得後のメリットや申請手続きまであわせて解説します。
特別支援学校教諭免許状とは?基礎免許状とセットの制度
特別支援学校教諭免許状は、単独では取得も使用もできません。幼稚園・小学校・中学校・高等学校のいずれかの教諭普通免許状(基礎免許状)を持っていることが、取得の大前提になります。基礎免許状のうえに積み増す、いわば「上位免許」のような位置づけです。
特別支援学校とはという記事でも触れたとおり、特別支援学校そのものが独立した学校種として存在します。教員免許の側にも、それに対応する専用の免許が用意されているというわけです。この構造を知らずに「特別支援学校専門の免許を単独で取ればいい」と考えてしまう方も少なくありません。まず基礎免許状を確認することが、進路を考える最初の一歩になります。
3種類の免許状と対応する基礎資格
特別支援学校教諭免許状には、専修・一種・二種の3種類があります。
種類 対応する基礎資格の目安 特徴 専修免許状 大学院修了相当 最上位。管理職登用や指導的立場で評価されやすい 一種免許状 大学卒業相当 もっとも標準的な免許 二種免許状 短期大学卒業相当 現職教員ルートで比較的取得しやすい
5つの教育領域という考え方
免許状には、どの障害領域を担当できるかという「教育領域」も明記されます。視覚障害者・聴覚障害者・知的障害者・肢体不自由者・病弱者の5領域です。特別支援学校の知的障害についての記事や肢体不自由についての記事で紹介した障害種別の分類。これと同じ5つの枠組みが、教員免許の領域区分にもそのまま使われています。
なお、免許状に明記された領域以外の授業を一切担当できないわけではありません。実際の配置は、免許の領域と担当する校種・学級の実情に応じて柔軟に運用されています。
取得方法は大きく2ルート:新卒ルートと現職教員ルート
取得方法は2つに整理できます。大学の教職課程でまとめて取る「新卒ルート」。現職の教員が働きながら追加取得する「現職教員ルート」です。
ルート 主な対象者 取得方法の目安 新卒ルート これから教職を目指す学生 大学の教職課程で基礎免許状と同時に履修 現職教員ルート すでに教員として勤務している人 免許法認定講習・認定通信教育、または通信制大学
一方の現職教員ルートは、すでに小学校などで教壇に立っている先生が対象です。転職や異動で特別支援学校を志望するようになったケースが中心。次の章で詳しく解説します。
現職教員が働きながら取得する2つの方法
現職の教員が取得する方法は、主に「免許法認定講習・認定通信教育」と「通信制大学での履修」の2つです。
免許法認定講習・認定通信教育
免許法認定講習は、都道府県教育委員会や大学が実施する短期集中型の講習です。教員としての在職経験がある人が対象です。通常の教職課程より少ない単位数で免許を取得できる、「教育職員検定」という仕組みを使います。北海道教育委員会の案内ページによると、必要なのは特別支援教育に関する科目の一定単位(6単位以上が目安)の修得です。あわせて実務経験を積むことで、二種免許状の授与を受けられます。
夏季休業期間中などにまとまった日数で開講されることが多く、勤務を続けながら短期間で単位を積める点が特徴です。開講する自治体・大学によって時期や科目構成は異なります。勤務先の都道府県教育委員会に早めに確認しておくと安心です。
通信制大学での履修
もう一つの方法が、通信制大学の課程を利用するルートです。通信制大学には「特別支援学校教諭免許状取得課程」を設置しているところが複数あります。レポート提出やスクーリングを組み合わせながら、自分のペースで単位を積み上げられる点が特徴です。
実際に現職の教員をしながら通信制大学でこの免許を取得したという声も届いています。「今の仕事(教員など)を続けながら、自分のペースで単位を積み上げられた」という体験談です。これから現職教員ルートを検討する方にとって、参考になるでしょう。大学ごとにカリキュラムの組み方・学費・スクーリングの有無や日数は大きく異なります。複数校の資料を取り寄せて比較することが欠かせません。編集部で複数の通信制大学の課程案内を確認しました。必要単位数や在学期間の目安にも、学校ごとに幅があることが見て取れました。
免許法認定講習と通信制大学は、どちらか一方しか選べないわけではありません。勤務先の自治体で認定講習の開講がなければ通信制大学を選ぶ、といった組み合わせ方も可能です。自分の勤務スケジュールと照らし合わせて検討してください。
二種から一種へのステップアップに必要な3年の在職要件
二種免許状を取得したあと、一種免許状にステップアップしたいと考える先生も多いはずです。この場合は「特別支援学校で相当する教育領域を担任する教員として3年以上在職すること」と「追加の単位修得」の両方が必要になります。単位さえ揃えれば在職期間を待たずに一種へ切り替えられる、という誤解が生じやすい部分です。注意してください。
二種免許状のままでも、特別支援学校の教員として採用され、日々の授業を担当すること自体は可能です。一種・専修へのステップアップは、あくまでキャリアを重ねる中での選択肢の一つと捉えておくとよいでしょう。
免許取得のメリット:保有率87.2%という文科省の後押し
免許を取得するメリットの一つが、採用・配置面での評価です。文部科学省の調査によると、特別支援学校教員の免許保有率は2018年度の79.8%から2019年度は83.0%へ上昇しました。別の記事で紹介した令和5年度の調査では、さらに87.2%まで伸びています。文部科学省は都道府県教育委員会に対し、保有率をさらに高めるよう継続的に通知を出している状況です。文部科学省の特別支援学校教諭等免許保有状況の関連ページでも、この取り組みは繰り返し取り上げられています。
一方で、障害領域ごとの差は依然として大きいままです。日本教育新聞の報道では、知的障害教育が86.0%と高い一方、聴覚障害教育は57.8%にとどまっていると紹介されています。保有率が低い領域の免許を持っていることは、採用や配置の面で相対的に評価されやすい可能性があります。志望する教育領域を選ぶ際の一つの視点にしてください。
給与面では、特別支援教育に直接従事する教員向けの手当が用意されている自治体もあります。文部科学省の資料によると、この手当は昭和31年に特別支援教育の勤務の特殊性を考慮して創設された経緯があります。本給の一定割合を目安に支給されてきました。手当の名称・支給額・支給条件は自治体ごとに異なります。断定的な金額を期待せず、勤務予定の教育委員会に確認するようにしてください。
転職市場という観点でも、免許保有は無視できない要素です。文部科学省の資料によると、義務教育段階の児童生徒数全体は少子化で減少している一方、特別支援学校・特別支援学級に在籍する児童生徒数はむしろ増加傾向にあります。免許を持つ教員そのものが不足している地域・領域では、経験豊富な現職教員の異動・転入が歓迎されやすい傾向があります。今の勤務校で頭打ちを感じている先生にとって、選択肢を広げる材料になるはずです。
免許取得後の申請手続き
必要な単位を修得したら、免許状の授与を申請します。現職教員は勤務校が所在する都道府県の教育委員会に、個人で申請するのが基本の流れです。大学の教職課程を経由して一括で申請手続きが進む新卒ルートとは異なります。現職教員ルートでは、自分自身で申請書類を揃える場面が増えます。
必要書類や申請時期は自治体ごとに細かく異なります。単位修得証明書の発行にも時間がかかることがあるため注意してください。講習や通信制大学の課程を修了する見込みが立った段階で、早めに勤務先の教育委員会へ相談しておくと、手続きがスムーズです。編集部で複数の都道府県教育委員会の案内ページを見比べたところ、申請窓口の呼び方や必要書類の様式にも自治体ごとの違いが見られました。事前確認が欠かせない理由の一つです。
施設で働く人にとっても知っておきたい理由
障害福祉施設で働く人にとって、この免許制度は直接自分が取得するものではないかもしれません。それでも、特別支援学校との連携窓口を担う場面では役立つ知識です。学校側の先生がどのようなルートで免許を取得し、どの教育領域を専門にしているか。これを知っておくと、進路相談や医療的ケアの引き継ぎといった場面で話が噛み合いやすくなります。
保護者から「学校の先生は専門知識をどのくらい持っているのか」と聞かれることもあるでしょう。その際、免許保有率が年々上昇している背景や、二種・一種という段階があることを説明できると、相談者の理解を助けられます。発達障害と特別支援学校の関係を扱った記事とあわせて紹介すると、学校選びの相談により厚みを持たせられるはずです。
教育領域によって免許保有率に差があるという事実も、覚えておくと役立ちます。聴覚障害教育のように保有率が低い領域では、免許を持つ教員の異動・配置そのものが難しいという事情を抱える学校もあるからです。施設側から学校に医療的ケアや専門的な配慮を依頼する際、担当の先生がどの教育領域を専門にしているかを事前に確認しておくと、依頼内容の伝わり方が変わってきます。
よくある質問
Q. 特別支援学校教諭免許状だけで教員になれますか?
A. なれません。幼稚園・小学校・中学校・高等学校のいずれかの基礎免許状を持っていることが、取得と使用の前提になります。
Q. 現職教員が最短で取得する方法は何ですか?
A. 実務経験3年以上などの要件を満たしていれば、免許法認定講習・認定通信教育を使うと通常より少ない単位数で二種免許状を取得できます。開講の有無・時期は自治体によって異なるため、勤務先の教育委員会に確認してください。
Q. 通信制大学ではどのくらいの期間で取得できますか?
A. 大学によって在学期間の目安やスクーリングの日数が異なります。断定はできないため、検討している大学の募集要項を複数比較して確認してください。
Q. 二種免許状のままでも特別支援学校の教員になれますか?
A. なれます。二種免許状でも採用・配属は可能です。一種・専修へのステップアップは、キャリアを重ねる中での選択肢の一つです。
Q. 二種から一種にステップアップする条件は何ですか?
A. 相当する教育領域を担任する教員として3年以上在職することと、追加の単位修得の両方が必要です。単位修得だけでは切り替えられません。
Q. 免許を取得すると給与は上がりますか?
A. 自治体によっては特別支援教育に従事する教員向けの手当が用意されています。ただし手当の名称・金額・条件は自治体ごとに異なるため、勤務予定の教育委員会に確認してください。
Q. 現在教員をしていなくても認定講習を受けられますか?
A. 免許法認定講習・認定通信教育は、教員としての在職経験があることが前提の制度です。在職経験がない場合は、通信制大学など別のルートを検討してください。
Q. 免許取得後の申請はどこに行いますか?
A. 現職教員は勤務校が所在する都道府県の教育委員会に、個人で申請するのが基本です。必要書類・時期は自治体ごとに異なるため、早めに相談してください。
この記事を書いた人:support-s-log編集部
障害福祉・特別支援教育に関する情報を継続的に取材する編集チームです。行政資料や制度解説、専門家・当事者による一次情報をもとに、障害のある方やご家族、福祉施設で働く方・働きたい方に向けて、正確でわかりやすい情報の発信を心がけています。
特別支援学校教諭免許状は、基礎免許状の上に積み増す形で取得する免許であり、新卒ルートと現職教員ルートという2つの道筋があります。現職の先生であれば、免許法認定講習と通信制大学のどちらが自分の勤務スタイルに合うかを比較することが、取得への近道です。保有率が年々上昇している今だからこそ、検討する価値があるテーマといえるでしょう。まずは勤務先の教育委員会や、気になる通信制大学の資料請求から始めてみてください。

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