Q. 障害年金をもらっていたら確定申告は必要? → A. 障害年金は所得税も住民税もかからない非課税の収入なので、障害年金だけなら確定申告は必要ありません。ただし、給与や事業の収入がある人、障害者控除や医療費控除で税金を取り戻したい人は、障害年金とは別の理由で申告が必要になることがあります。
この記事でわかること
- 障害年金に税金がかからない法律上の理由と、老齢年金との違い
- 障害年金を受け取っている人が確定申告をしたほうがいいケース
- 障害者控除・税の扶養・健康保険の扶養で、障害年金がどう扱われるか
「障害年金をもらい始めたけれど、確定申告をしないといけないの?」という質問は、受給が決まった直後によく出てきます。年金という名前から、老齢年金と同じように税金がかかると思われがちです。本記事では、国税庁のタックスアンサーや法律の条文、日本年金機構の案内をもとに整理しました。個別の判断は、お住まいの地域の税務署や市区町村の窓口で確認してください。
障害年金は確定申告が必要?結論は「障害年金だけなら不要」
障害年金は非課税なので、確定申告の対象になる所得に含まれません。障害基礎年金も障害厚生年金も同じ扱いです。受け取った金額がいくらであっても、障害年金そのものに所得税はかかりません。
そのため、収入が障害年金だけの人は、確定申告をしなくても問題ありません。申告書に障害年金の金額を書く欄もありません。
一方で、次のような人は、障害年金とは関係なく申告が必要になったり、申告すると得になったりします。
- 会社で働いていて、年末調整を受けていない人
- 自営業やフリーランスの収入がある人
- 医療費控除などで、払いすぎた税金を取り戻したい人
この3つは後の見出しで詳しく説明します。
障害年金に税金がかからない理由
障害年金が非課税なのは、年金の法律に「税金をかけてはいけない」と書かれているからです。国民年金法と厚生年金保険法には、それぞれ「公課の禁止」という条文があります。
| 法律 | 条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 国民年金法 | 第25条 | 給付として受け取ったお金を基準に、税金などをかけることはできない。ただし老齢基礎年金と付加年金は除く |
| 厚生年金保険法 | 第41条第2項 | 保険給付として受け取ったお金を基準に、税金などをかけることはできない。ただし老齢厚生年金は除く |
条文の本文はe-Gov法令検索の国民年金法で確認できます。例外として書かれているのは「老齢」の年金だけです。障害年金と遺族年金は、この例外に入っていません。そのため所得税だけでなく、住民税もかかりません。
老齢年金とは扱いがまったく違う
同じ公的年金でも、老齢年金は「雑所得」として税金がかかります。障害年金とはここが大きく違います。
| 項目 | 障害年金 | 老齢年金 |
|---|---|---|
| 所得税・住民税 | かからない(非課税) | かかる(雑所得) |
| 源泉徴収 | されない | 一定額を超えるとされる |
| 源泉徴収票 | 届かない | 毎年1月ごろ届く |
| 確定申告書への記入 | 書かない | 公的年金等の欄に書く |
国税庁のタックスアンサー「公的年金等の課税関係」でも、雑所得として扱う公的年金は老齢を理由とするものが中心です。障害年金を受け取っていても、年明けに源泉徴収票が届かないのはこのためです。
65歳以降に老齢年金と障害年金のどちらを選ぶかで迷ったときは、手取りの比較に税金の差も入れて考えてください。選び方は障害年金は65歳以降も続くかの記事で解説しています。
さかのぼって受け取った一時金も非課税
遡及請求で過去の分をまとめて受け取った場合も、そのお金は障害年金なので非課税です。数百万円になることもありますが、確定申告で一時所得として申告する必要はありません。遡及請求の仕組みは障害年金の遡及請求の記事にまとめています。
障害年金を受け取っている人が確定申告をするケース
障害年金とは別の収入や控除がある場合は、確定申告が必要になったり、申告で税金が戻ったりします。代表的なケースを表にまとめました。
| ケース | 申告の必要性 | ポイント |
|---|---|---|
| 給与のみで、会社の年末調整を受けた | 原則不要 | 障害者控除は年末調整で受けられる |
| 給与が2か所以上ある、年末調整を受けていない | 必要になることが多い | 給与以外の所得が20万円を超える場合なども対象 |
| 自営業・フリーランスの収入がある | 所得が出れば必要 | 障害年金は収入に含めない |
| 医療費が多くかかった | 任意(還付申告) | 医療費控除で税金が戻ることがある |
| 年の途中で退職した | 任意(還付申告) | 年末調整を受けていないと払いすぎの税金が戻ることがある |
| 老齢年金も受け取っている | 条件によって必要 | 老齢年金は課税の対象 |
給与所得者で確定申告が必要になる条件は、国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」に一覧があります。どのケースでも、障害年金の金額は計算に入りません。
働きながら障害年金を受け取っている場合
会社員として働いている人は、年末調整で手続きが終わることがほとんどです。障害年金を受け取っていることを、税金の手続きのために会社へ伝える必要はありません。障害年金は非課税なので、給与の源泉徴収や年末調整の計算に入らないからです。
障害者手帳を持っている人は、年初に会社へ出す「扶養控除等申告書」の障害者の欄に記入すると、年末調整で障害者控除が受けられます。書き忘れた場合は、確定申告で控除を受け直せます。
申告しなくていい人でも「還付申告」で税金が戻ることがある
確定申告の義務がない人でも、自分から申告して税金を取り戻せる場合があります。これを還付申告といいます。通院や入院で医療費が多くかかった年や、年の途中で退職して年末調整を受けていない年は、検討する価値があります。
ただし、もともと税金を払っていない人は、申告しても戻るお金はありません。収入が障害年金だけの人は、還付申告の対象外と考えてください。
住民税の申告を求められることがある
所得税の確定申告が不要でも、市区町村から住民税の申告を求められることがあります。国民健康保険料の軽減や、非課税証明書の発行の判定に、収入の情報が使われるためです。
申告書に障害年金の金額を書く欄があるかどうかは、自治体によって違います。案内の書類が届いたら、記入例に沿って出してください。わからない点は市区町村の住民税の担当課に聞くと確実です。
確定申告をするときの期限と方法
確定申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです。土日と重なる年は日付がずれるため、国税庁の案内で確認してください。
還付申告だけをする人は、この期間に縛られません。翌年の1月1日から5年間は申告できます。数年前の医療費控除を出し忘れていた場合も、間に合う可能性があります。
申告の方法は主に3つです。
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成し、e-Taxで送信する
- 作成コーナーで印刷した申告書を、税務署に郵送または持参する
- 税務署の相談会場で、職員に相談しながら作成する
どの方法でも、障害年金の金額は入力しません。給与の源泉徴収票、医療費の領収書をもとにした明細書、障害者手帳の情報などを手元に用意しておくと、入力がスムーズです。
障害者控除は障害年金ではなく「手帳」で判断される
障害者控除を受けられるかどうかは、障害年金の等級ではなく、主に障害者手帳などで判断されます。障害年金を受け取っているだけでは、障害者控除の対象にはなりません。ここは誤解の多いポイントです。
国税庁のタックスアンサー「障害者控除」によると、控除額は次のとおりです。
| 区分 | 控除額 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 障害者 | 27万円 | 身体障害者手帳3〜6級、精神障害者保健福祉手帳2・3級、知的障害と判定された人など |
| 特別障害者 | 40万円 | 身体障害者手帳1・2級、精神障害者保健福祉手帳1級、重度の知的障害と判定された人など |
| 同居特別障害者 | 75万円 | 特別障害者である配偶者や扶養親族で、納税者などと同居している人 |
たとえば障害年金2級を受け取っていても、手帳を持っていなければ、原則として障害者控除は使えません。反対に、障害年金の対象にならない人でも、手帳があれば控除を受けられます。
手帳がまだ交付されていない場合でも、申請中であるなど一定の条件を満たせば控除を受けられることがあります。条件は国税庁「身体障害者手帳等の交付を申請中である場合」に書かれています。控除の申請方法は障害者控除の記事で詳しく解説しています。
障害年金だけの人は、自分の障害者控除を使う場面がない
税金を払っていない人が障害者控除を使っても、減る税金はありません。収入が障害年金だけの人は、そもそも所得税がかかっていないからです。
その場合は、家族の側で控除を使えないかを確認してください。本人が家族の扶養に入っていれば、家族が障害者控除を受けられます。これが次の見出しの「税の扶養」です。
家族の扶養に入れる?税と健康保険で扱いが違う
障害年金は、税の扶養では収入に数えませんが、健康保険の扶養では収入に数えます。同じ「扶養」という言葉でも、基準がまったく違うので注意してください。
| 項目 | 税の扶養(扶養控除など) | 健康保険の扶養(被扶養者) |
|---|---|---|
| 障害年金の扱い | 収入に含めない | 収入に含める |
| 収入の基準 | 合計所得金額62万円以下(令和8年分) | 年間収入180万円未満(障害者の場合) |
| 判定の時期 | その年の12月31日の現況 | 今後1年間の見込み |
| 家族が受けるメリット | 扶養控除・障害者控除で税金が減る | 本人が保険料を払わずに健康保険に入れる |
税の扶養:障害年金がいくらでも影響しない
税の扶養では、障害年金は所得に数えないため、障害年金がいくら多くても扶養から外れることはありません。扶養親族になれるのは、年間の合計所得金額が一定以下の人です。
国税庁のタックスアンサー「扶養控除」では、基準は令和7年分が58万円以下、令和8年分から62万円以下とされています。年によって金額が変わるため、申告する年の基準を確認してください。
扶養に入っている本人が障害者控除の対象なら、家族は扶養控除に加えて障害者控除も受けられます。本人が特別障害者で同居していれば、控除額は75万円です。
健康保険の扶養:障害年金も年収に入る
健康保険の扶養では、障害年金も年間収入に含めて判定します。非課税の収入でも、計算から外れることはありません。
日本年金機構の被扶養者の手続きの案内では、被扶養者の年間収入の基準を130万円未満としています。60歳以上または障害者の場合は180万円未満です。被扶養者の収入には公的年金も含まれると明記されています。
障害厚生年金の額が多い人は、障害年金だけで180万円に近づくこともあります。働いて給与も得ている場合は、合計で基準を超えないか注意してください。最終的な判定は、加入している健康保険(協会けんぽや健康保険組合など)が行います。
障害年金と税金について、福祉の現場で伝えていること
受給が決まった方の中には、「後から税金を請求されるかもしれない」と心配して、年金に手をつけずにいる人もいるようです。障害年金は非課税なので、受け取ったお金に後から所得税や住民税がかかる心配はありません。生活や治療のために、安心して使ってください。
ただ、税金とは別に、障害年金の受給で影響が出る制度はあります。20歳前の傷病による障害基礎年金の所得制限や、生活保護の収入認定などです。税金と混同しやすいので、気になる方は次の記事もあわせて読んでください。
受け取れる金額の目安は障害年金の金額の記事で、等級別にまとめています。
よくある質問
Q: 障害年金は確定申告の書類に書かなくていいのですか?
A: はい、書く必要はありません。障害年金は非課税の収入なので、確定申告書に記入する欄がありません。給与や事業の収入がある場合は、それらの収入だけを書きます。
Q: 障害年金をもらっていると、住民税はかかりますか?
A: 障害年金に住民税はかかりません。国民年金法と厚生年金保険法で、障害年金を基準に税金などをかけることが禁止されているためです。給与など他の所得があれば、その分には住民税がかかることがあります。
Q: 障害年金の源泉徴収票が届きません。問題ありませんか?
A: 問題ありません。障害年金は非課税なので源泉徴収されず、源泉徴収票も届きません。老齢年金を受け取っている人には届きますが、障害年金にはありません。
Q: 障害年金を受け取っていれば、障害者控除を受けられますか?
A: 障害年金を受け取っているだけでは受けられません。障害者控除は、障害者手帳の交付を受けている人など、所得税法で定められた人が対象です。手帳を申請中の場合は、国税庁が示す条件を満たせば控除を受けられることがあります。
Q: 障害年金をもらっている家族を、税の扶養に入れられますか?
A: 入れられる可能性があります。税の扶養では障害年金を所得に数えないため、他の所得が基準以下なら扶養親族になれます。本人が障害者控除の対象なら、扶養控除とあわせて障害者控除も受けられます。
Q: 障害年金をさかのぼってまとめて受け取りました。確定申告は必要ですか?
A: 障害年金としてまとめて受け取ったお金は非課税なので、そのための確定申告は必要ありません。ただし、同じ期間に老齢年金を受け取っていて調整が行われた場合などは、税金の扱いが変わることがあります。不安な場合は税務署に確認してください。
まとめ:障害年金だけなら確定申告は不要。控除と扶養は別に確認を
障害年金は、所得税も住民税もかからない非課税の収入です。収入が障害年金だけなら、確定申告は必要ありません。
一方で、給与や事業の収入がある人、医療費控除を受けたい人は、障害年金とは別に申告を考えてください。障害者控除は手帳などで判断されること、健康保険の扶養では障害年金も収入に入ることも覚えておくと安心です。迷ったときは、税務署の電話相談やお住まいの市区町村の窓口で確認してみてください。


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