Q. 障害者マークにはどんな種類がある?
A. 大きく4グループ、合わせて13種類のマークに整理できます。 「車に表示するもの」「外見からわからない障害を示すもの」「施設や対応を示すもの」「視覚障害に関するもの」の4つです。
内閣府の障害者白書では「障害者に関係するマークの一例」として13種類が紹介されています。筆者がこの記事を書くきっかけは、福祉施設の職員の方からの一言でした。「このマーク、見たことはあるけど意味を知らなかった」という声です。見分け方を一度整理しておけば、窓口対応や街中での声かけで迷わなくなります。
この記事では13種類を4グループに分け、意味・使う人・見かけたときの対応まで解説します。特に「ヘルプマーク」と「ハート・プラスマーク」、「身体障害者標識」と「障害者のための国際シンボルマーク」は、名前や見た目が似ていて混同されやすい組み合わせです。この2組を比較しながら説明します。
この記事でわかること
- 障害者マーク13種類の名称・意味・所管団体
- 「ヘルプマーク」と「ハート・プラスマーク」の違い
- 「身体障害者標識」と「障害者のための国際シンボルマーク」の違い
- マークを見かけたときの基本的な対応
- マークの入手方法(ヘルプマークは無料、車用の標識は警察署で購入)
障害者マークとは?4つのグループで理解する
Q. 障害者マークは誰が決めている?
A. 内閣府が一括管理しているわけではありません。 警察庁・厚生労働省・自治体・民間団体など、マークごとに別々の団体が作成・所管しています。
内閣府の障害者白書には「障害者に関係するマークの一例」という付録があります。毎年の白書に掲載が続いている資料です。ただし内閣府自身が注記を添えています。「各マークは、それぞれの団体等が作成しているものであり、内閣府が作成したものではない」という内容です。問い合わせ先もマークごとに異なるため、詳しく知りたいときは各マークの所管団体に確認するのが確実です。
13種類のマークは、役割で見ると次の4グループに分けられます。
| グループ | 代表的なマーク | 役割 |
|---|---|---|
| 車に表示するマーク | 身体障害者標識・聴覚障害者標識 | 運転免許に条件が付いている人が運転する車を示す |
| 外見からわからない障害を示すマーク | ヘルプマーク・ハート・プラスマーク | 援助や配慮が必要なことを周囲に知らせる |
| コミュニケーション・施設対応を示すマーク | 耳マーク・手話マーク・筆談マーク・ヒアリングループマーク・ほじょ犬マーク・オストメイトマーク | 窓口や施設がどんな対応・設備を提供できるかを示す |
| 視覚障害に関するマーク | 障害者のための国際シンボルマーク・盲人のための国際シンボルマーク・白杖SOSシグナル | 建物のバリアフリー対応や、視覚障害者への声かけを示す |
一つずつ、意味と使われる場面を見ていきます。
車に表示する2つのマーク(身体障害者標識・聴覚障害者標識)
Q. 車に付いている四つ葉のマークは何を意味する?
A. 「身体障害者標識」です。 肢体不自由を理由に運転免許に条件が付けられている人が運転する車を示しています。
四つ葉の形をした緑と黄色のマークを見かけたことがある方は多いと思います。これは正式には「身体障害者標識」と呼ばれ、警察庁交通局交通企画課が所管しています。表示は努力義務です。必ず付けなければならないものではありません。
もう一つ、車の後方に表示される「聴覚障害者標識」というマークもあります。黄色地に緑色のちょうちょのような形をしたマークです。聴覚障害を理由に免許に条件が付いている人が対象になります。筆者が資料を確認したところ、対象はさらに具体的でした。補聴器を使っても警音器の音が聞こえない程度の聴覚障害がある人が、ワイドミラー(補助ミラー)の装着を条件に免許を取得した場合に表示するものです。身体障害者標識と違い、聴覚障害者標識は表示が法律上の義務になります。
| 項目 | 身体障害者標識 | 聴覚障害者標識 |
|---|---|---|
| 対象 | 肢体不自由で免許に条件がある人 | 聴覚障害で免許に条件がある人 |
| 表示義務 | 努力義務 | 義務 |
| 主な条件 | 運転できる車種の限定など | ワイドミラー(補助ミラー)の装着 |
| 所管 | 警察庁交通局交通企画課 | 警察庁交通局交通企画課 |
この2つのマークを付けた車には、注意すべき交通ルールがあります。やむを得ない場合を除いて幅寄せや割り込みをすると、道路交通法違反になるのです。筆者はこの規定を知ったとき、マークの意味を知らずに運転していたらと考えてはっとしました。知らないうちに違反をしていたかもしれません。
入手方法は、最寄りの警察署交通課や交通総合センターへの問い合わせが基本です。具体的な販売価格や必要書類は、自治体・都道府県警によって案内の仕方が異なります。事前に電話で確認すると、手続きがスムーズに進みます。
「障害者のための国際シンボルマーク」との違いに注意
ここで注意したいのが、身体障害者標識と「障害者のための国際シンボルマーク」(車椅子のピクトグラムのマーク)を混同してしまうケースです。両者の役割はまったく異なります。身体障害者標識は「運転者本人の免許条件」を示すマークです。一方、国際シンボルマークは「障害のある人が利用できる建物や施設」を示すマークです。対象も違います。国際シンボルマークを個人の車に貼っても、駐車禁止の除外など法的な効力は一切ありません。
なお、障害者が利用できる駐車区画の利用証や「駐車禁止除外指定車標章」など、駐車に関する3つの制度の詳しい違いは別記事で整理しています。詳しくは障害者用駐車場とは?利用証と標章3種の違いを解説をご覧ください。この記事では「マークそのものの意味」に絞って解説を続けます。
外見からわからない障害を示す2つのマーク(ヘルプマーク・ハート・プラスマーク)
Q. ヘルプマークとハート・プラスマークはどう違う?
A. 対象の広さが違います。 ヘルプマークは義足・人工関節の使用者や内部障害・難病・妊娠初期の人など幅広い対象をカバーします。ハート・プラスマークは内部障害(心臓疾患など身体内部の障害)のある人に限定したマークです。
どちらも赤系の色を使った似た雰囲気のマークです。筆者も最初は同じものだと思い込んでいました。実際には交付元・対象・入手方法のすべてが異なります。
| 項目 | ヘルプマーク | ハート・プラスマーク |
|---|---|---|
| 対象 | 義足・人工関節の使用者、内部障害・難病の人、妊娠初期の人など外見から分かりにくい配慮が必要な人 | 内部障害(心臓・呼吸器・腎臓等の身体内部の障害)がある人 |
| 規格 | JIS規格の統一デザイン | 団体独自のデザイン |
| 考案・所管 | 東京都福祉局が考案し全国に展開。配布は各自治体 | 特定非営利活動法人ハート・プラスの会 |
| 入手方法 | 多くの自治体の障害福祉担当窓口で無料配布 | 団体への申し込みなど |
ヘルプマークは、自治体によって対象をさらに広く扱っていることがあります。障害者手帳の有無を問わない自治体もあります。本人・家族(代理人でも可)が窓口でアンケートに記入すれば、1人1個まで無料で受け取れるケースが一般的です。配布場所は市区町村の福祉担当窓口が中心です。板橋区の案内のように、都営地下鉄の駅務室やスーパーの店舗で配布している地域もあります。数に限りがあるため、受け取る前に在庫を電話で確認しておくと二度足を防げます。
ハート・プラスマークは、内部障害が外見からわかりにくいために生まれた理解促進のためのシンボルです。見かけたら「大丈夫ですか」と一声かけるだけでも、相手は安心しやすいでしょう。障害者控除とは?で解説している内部障害を含む税制上の配慮と合わせて知っておくと、制度の理解がより深まります。
コミュニケーション・施設対応を示す6つのマーク
Q. 窓口に貼ってあるマークは何を意味する?
A. 「この窓口はその方法で対応できます」という案内の意味です。 耳マーク・手話マーク・筆談マークなどが代表的です。
施設や店舗の窓口で見かけるマークの多くは、「ここではこういう配慮・対応ができます」という案内の役割を持っています。主なものを一覧にまとめました。
| マーク | 意味・使われる場面 | 所管 |
|---|---|---|
| 耳マーク | 聞こえが不自由であることを示す。窓口に掲示されている場合は聴覚障害者への配慮ある対応ができることを示す | 一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 |
| 手話マーク | 聞こえない・聞こえにくい人が手話対応を求めるとき、または窓口が手話対応できることを示す | 一般財団法人全日本ろうあ連盟 |
| 筆談マーク | 聞こえない・聞こえにくい人や音声言語障害、知的障害のある人、外国人などが筆談対応を求めるとき、または窓口が筆談対応できることを示す | 一般財団法人全日本ろうあ連盟 |
| ヒアリングループマーク | 補聴器や人工内耳のTコイル機能で使える補聴援助システムがある施設・機器であることを示す | 一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 |
| ほじょ犬マーク | 盲導犬・介助犬・聴導犬の同伴を受け入れていることを示す。不特定多数が利用する施設では受け入れが法律で義務化されている | 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 |
| オストメイトマーク | 人工肛門・人工膀胱を使用する人(オストメイト)のための設備(オストメイト対応トイレ等)があることを示す | 公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団 |
このうちほじょ犬マークについては、押さえておきたい点があります。「補助犬を同伴していることだけを理由にサービスの提供を拒むと、障害者差別に当たる」という点です。江戸川区がまとめているマークの説明でも紹介されているとおり、不特定多数が利用する施設では補助犬の受け入れが義務になっています。身体障害者補助犬法という法律に基づく義務のため、施設職員にとっては接客ルールそのものに関わる知識になります。障害者への接し方とは?で解説している場面別の対応と合わせて確認しておくと、現場での判断に役立ちます。
視覚障害に関するマーク
Q. 視覚障害に関係するマークにはどんなものがある?
A. 代表的なものは3つです。 「障害者のための国際シンボルマーク」「盲人のための国際シンボルマーク」「白杖SOSシグナル」です。
障害者のための国際シンボルマークは、車椅子のピクトグラムで知られる世界共通のマークです。ただし実際にはすべての障害者を対象にしたマークです。車椅子利用者に限定したものではありません。障害のある人が利用できる建物・施設であることを示す目的で使われています。
盲人のための国際シンボルマークは、1984年に世界盲人連合が制定したマークです。視覚障害者に配慮した建物・設備・機器のほか、信号機や国際点字郵便物、点字付きの印刷物などにも使われています。
もう一つ知っておきたいのが「白杖SOSシグナル」普及啓発シンボルマークです。これはマーク自体を物として持ち歩くものではありません。視覚障害者が白杖を頭上50センチメートルほどに掲げる動作そのものが、SOSのサインになるという啓発の仕組みです。駅のホームや路上でこの動作を見かけたら、進んで声をかけることが呼びかけられています。筆者は資料を読んで、実務的な知識だと感じた一文がありました。「危険が迫っている状況では、このサインがなくても迷わず声をかけてよい」という注記です。
マークを見かけたときの基本的な対応
Q. マークを見かけたら何をすればいい?
A. まず一声かけて、相手の意思を確認することが基本です。 無理に助けようとする必要はありません。
福祉施設の職員・支援者の立場から、押さえておきたい対応のポイントを3つに整理しました。
- マークを見ただけで対応内容を決めつけない。 同じヘルプマークでも必要な配慮は人によって違います。マークは「会話のきっかけ」として受け止め、本人に困っていることがあるか確認します。
- 声をかけるタイミングを見極める。 早すぎても遅すぎても負担になります。白杖SOSシグナルのように明確な合図があるものは別です。それ以外のマークでは、相手の様子を見ながら自然に声をかけるとよいでしょう。
- 施設の対応可否を正確に伝える。 耳マークや筆談マークを掲示している場合、実際にその場で対応できる体制が必要です。スタッフ全員が把握しておきましょう。掲示だけが先行すると、来訪者に余計な負担をかけてしまいます。
よくある質問
Q: 障害者マークは全部で何種類ある?
A: 内閣府の障害者白書「障害者に関係するマークの一例」には13種類が紹介されています。ただしこれは一例です。自治体や団体が独自に作っているマークも含めると、実際にはさらに多く存在します。
Q: ヘルプマークは誰でももらえる?
A: 多くの自治体では、障害者手帳の有無を問いません。義足・人工関節の使用者や内部障害・難病の人、妊娠初期の人など「外見からは配慮が必要だとわかりにくい」人を対象にしています。詳しい条件は自治体ごとに異なるため、お住まいの福祉担当窓口への確認が確実です。
Q: 身体障害者標識を付けないと違反になる?
A: 身体障害者標識は表示が努力義務のため、付けなくても直ちに違反にはなりません。一方で聴覚障害者標識は表示が法律上の義務です。対象となる条件に当たる場合は、必ず表示する必要があります。
Q: 四つ葉マークと国際シンボルマークは同じもの?
A: 違います。四つ葉マーク(身体障害者標識)は運転者本人の免許条件を示すマークです。国際シンボルマーク(車椅子のピクトグラム)は、建物や施設が障害のある人に利用しやすいことを示すマークです。対象も法的な意味も異なります。
Q: オストメイトマークはどこで見かける?
A: 主に多機能トイレやオストメイト対応トイレの入口に表示されています。人工肛門・人工膀胱を使用する人のための洗浄機能などの設備があることを示しています。
Q: 耳マークと手話マーク・筆談マークの違いは?
A: 耳マークは「聞こえが不自由であること」を伝える目的を持つ一般的なマークです。手話マークは手話での対応を、筆談マークは筆談での対応を求める・示す目的に使われます。それぞれ個別に使い分けられているマークです。
Q: マークを付けていない人には配慮しなくていい?
A: そうではありません。マークはあくまで「配慮が必要なことを伝える手段のひとつ」です。マークを持っていない、または身につけていない人にも援助が必要な場面は多くあります。マークの有無だけで対応を判断しないことが大切です。
Q: ほじょ犬マークがある店で補助犬の同伴を断られたら?
A: 身体障害者補助犬法により、不特定多数が利用する施設では補助犬の同伴受け入れが義務とされています。補助犬を同伴していることのみを理由にサービス提供を拒むことは、障害者差別に当たるとされています。施設側の対応に疑問がある場合は、自治体の障害福祉担当窓口や厚生労働省の相談窓口に確認するとよいでしょう。


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