発達障害でも障害年金はもらえる?等級の決まり方と初診日の注意点を解説

発達障害の障害年金の等級判定シートと電卓、虫眼鏡のイラスト 障害年金

Q. 発達障害でも障害年金はもらえますか?
A. 日常生活や仕事に支障が出ていれば、ASD(自閉症スペクトラム障害)やADHD(注意欠如・多動性障害)、LDなどの発達障害も障害年金の対象になります。 ただし診断名がつくだけでは決まりません。等級の判定基準と初診日の扱いには、発達障害特有の注意点があります。

筆者は施設職員向けの情報を扱うなかで、ある声を何度も聞いたことがあります。「発達障害は障害年金の対象外だと思っていた」という誤解です。実際には、程度によって1級から3級まで認定される可能性があり、精神疾患と同じ基準の中で審査されます。この記事では、発達障害ならではの等級の決まり方と初診日の考え方、申請時に気をつけたいポイントを整理します。

この記事でわかること

  • 発達障害が障害年金の対象になる条件と対象となる診断名
  • 等級がどう決まるか(「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の仕組み)
  • 初診日の考え方と、知的障害を伴う場合との違い
  • 20歳前に発症した場合の特例
  • 申請に必要な書類と「病歴・就労状況等申立書」のポイント
  • 施設職員・支援者が申請をサポートする際の注意点

発達障害は障害年金の対象になる?制度上の位置づけ

発達障害は障害年金の対象になるのでしょうか。制度上、発達障害は「精神の障害」という区分に含まれています。ASD・ADHD・LDなどの診断名も、障害年金の対象です。

障害年金には身体の障害・精神の障害・知的障害など、いくつかの区分があります。発達障害は、この中の精神の障害の一種として扱われます。うつ病や統合失調症といった他の精神疾患とも、審査の土台になる基準は共通です(詳しくは精神疾患と障害年金の関係で解説しています)。

対象となる主な診断名は次のとおりです。

  • ASD(自閉症スペクトラム障害、アスペルガー症候群を含む)
  • ADHD(注意欠如・多動性障害)
  • LD(学習障害)

診断名がついているだけでは認定されません。日常生活や就労にどの程度の支障が出ているかが、審査の中心になります。症状が軽く、生活や仕事への影響がほとんどない場合は、不支給となることもあります。

発達障害の等級はどう決まる?判定平均という共通の目安

発達障害の等級はどのように決まるのでしょうか。「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」という共通の目安をもとに判断されます。具体的には、診断書の2つの評価項目から算出した「判定平均」という数値を参考にします。

このガイドラインは、厚生労働省が2016年9月1日から実施しているものです(厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」の策定及び実施について)。精神障害・知的障害の認定で、地域によって判断の傾向が異なっていたことを受けて策定されました。発達障害もこの共通基準の対象です。

判定平均は、診断書にある「日常生活能力の判定」という7項目をもとに算出します。7項目とは、適切な食事・身辺の清潔保持・金銭管理と買い物・通院と服薬・意思伝達及び対人関係・身辺の安全保持及び危機対応・社会性です。これらを軽い方から1〜4の数値に置き換え、平均した値が判定平均になります。

判定平均の目安 等級の目安
3.5以上 1級の目安に近づく
3.0以上3.5未満 2級の目安に近づく
2.5以上3.0未満 2級〜3級の範囲
2.0以上2.5未満 3級の目安に近づく
1.5以上2.0未満 3級〜3級非該当の範囲
1.5未満 3級非該当(障害基礎年金では2級非該当)

この表はあくまで「目安」です(目安表の原典は厚生労働省の資料で確認できます)。最終的な等級は、審査する認定医が病状・療養状況・生活環境・就労状況なども踏まえて総合的に判断します。目安表の数値だけで機械的に決まるわけではない点は、誤解しやすいポイントです。

発達障害の初診日はいつになる?知的障害を伴う場合との違い

発達障害の初診日はいつとして扱われるのでしょうか。日本年金機構の案内では、療育手帳の有無にかかわらず、初めて診療を受けた日が初診日とされています。

ここは情報が錯綜しやすい部分です。大田区がまとめた年金機構の案内では、療育手帳の有無に関係なく初診日を判断すると案内されています。一方、民間の解説記事の中には「知的障害を伴う場合は生まれた日、伴わない場合は初めて受診した日」という整理をしているものもあります。

どちらの考え方で進めるかによって、必要な証明書類が変わってきます。実際に請求する際は、年金事務所や社会保険労務士に、ご自身のケースでの初診日の扱いを個別に確認してください。

なお、生来性の知的障害がある場合は、少し違う案内もあります。病歴・就労状況等申立書に、出生時から現在までの状況をまとめて記入できるという案内です。特に大きな変化があった時期を中心に書けばよいとされています。発達障害で子どものころから受診歴がある場合は、この取り扱いに当てはまるかどうかを確認する価値があります。

療育手帳の等級と障害年金の等級は別の基準で審査される

発達障害や知的障害のある方の中には、療育手帳をすでに持っている方も多いはずです。ただし、療育手帳の区分と障害年金の等級は、審査する機関も基準も異なります。療育手帳は自治体(児童相談所や知的障害者更生相談所など)が交付します。一方、障害年金は日本年金機構が「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」で審査する仕組みです。

「療育手帳が中度だから年金も2級だろう」と考えてしまうと、実態とズレることがあります。手帳の等級とは別に、診断書の内容で判断されるものだと理解しておくと安心です。

20歳前に発症した場合の障害基礎年金

発達障害は子どものころに気づかれることが多く、20歳になる前に初めて受診しているケースも少なくありません。20歳前に初診日がある場合は、国民年金に加入する前の期間のため、保険料の納付要件は問われません。

ただしこの場合、障害認定日は原則として20歳の誕生日の前日になります。初診日から1年6か月後の時点が、すでに20歳を超えていればその時点が認定日になるという判断です。

この「20歳前の傷病」による障害基礎年金には、所得制限がある点にも注意が必要です。前年の所得が一定額を超えると、年金の全部または半分が支給停止になる仕組みがあります(相模原市の国民年金Q&Aでも同様の案内があります)。自身の状況が当てはまるかどうかは、年金事務所で事前に確認しておくと安心です。

なお、いずれの場合も障害年金は一度認定されれば終わりではありません。数年おきの更新(障害年金の更新とは?必要書類と3パターンを解説)で、状態の確認が続く点も知っておきたいところです。

申請に必要な書類と「病歴・就労状況等申立書」のポイント

障害年金の申請では、どのような書類が必要になるのでしょうか。診断書に加えて「病歴・就労状況等申立書」を提出し、日常生活や仕事での困難さを具体的に伝えることが欠かせません。

審査では診断書が最も重視されるとみられます。申立書は、その診断書を補う重要な書類という位置づけです。診断書の様式や依頼のコツは障害年金の診断書とは?8種類の様式と費用・依頼のコツで解説しています。申請全体の流れは障害年金の申請方法とは?必要書類7つと手続きの流れを解説を参考にしてください。

発達障害の場合、次のような視点で具体的に書くと、日常生活の支障が審査側に伝わりやすくなります。

  • 職場での指示理解がどの程度難しいか(口頭指示だけでは伝わらない、メモが必須など)
  • 対人関係でのトラブルの頻度(誤解を受けやすい、距離感がつかみにくいなど)
  • 遅刻・欠勤の多さや、その背景にある生活リズムの乱れ
  • 周囲の配慮や支援(ジョブコーチ、支援機関の利用など)の有無と内容

診断書に書かれている病名と、申立書に書く生活の実態が食い違っていないかも確認しておきたいポイントです。過去には、最初にうつ病として申請した方の例が紹介されています。結果が出なかったものの、あとから発達障害と別の診断名がついて状況が変わったという例です。診断名と実態の整合性は、審査結果に影響しうる要素だと考えておくとよいでしょう。

施設職員・支援者が申請をサポートする際の注意点

発達障害のある方の障害年金申請を、施設職員や支援者としてサポートする機会もあるはずです。本人が自分の困りごとを言葉にしづらい場合は、周囲が日々の様子を記録しておくことが申立書作成の助けになります。

筆者が見聞きした範囲でも、発達障害のある方には一つの傾向があるようです。「できていること」は饒舌に話せても、「困っていること」を具体的に説明するのが苦手な傾向です。支援者が日々の支援記録やケース記録から、対人関係や作業面でのつまずきを具体的に拾い出しておくとよいでしょう。本人だけでは伝えきれない部分を、申立書に反映しやすくなります。

ただし、申立書の内容を支援者が一方的に書き上げるのは避けてください。本人の実感と食い違わないように、記入前に一緒に確認する姿勢が大切です。必要に応じて、NPO法人などが行っている障害年金の無料相談を案内するのも一つの方法です。

よくある質問

Q. ASDとADHDはどちらも障害年金の対象になりますか?

A. はい、どちらも「精神の障害」として対象になります。LD(学習障害)も含め、診断名だけでなく日常生活や就労への支障の程度で審査されます。

Q. 発達障害だけでは障害年金はもらえませんか?

A. 診断名がついているだけでは認定されません。日常生活能力の判定や生活環境、就労状況などから総合的に判断され、支障が軽い場合は不支給になることもあります。

Q. 知的障害を伴う発達障害とASDだけの場合で、審査基準は違いますか?

A. 等級の目安となる「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」は、精神障害・知的障害・発達障害の区分にとらわれず、該当する考慮要素を使って総合評価するとされています。初診日の扱いなど個別の論点は、年金事務所に確認してください。

Q. 障害年金の等級と療育手帳の等級は同じ基準ですか?

A. いいえ、審査する機関も基準も異なります。療育手帳は自治体、障害年金は日本年金機構がそれぞれ別の基準で審査するため、手帳の等級と年金の等級が一致しない場合もあります。

Q. 20歳前から発達障害の症状があった場合、初診日はいつになりますか?

A. 日本年金機構の案内では、療育手帳の有無にかかわらず、初めて診療を受けた日が初診日とされています。ただし整理の仕方には諸説があるため、個別のケースは年金事務所や社会保険労務士に確認してください。

Q. 20歳前に初診日がある場合、年金の保険料は納めていなくても大丈夫ですか?

A. 大丈夫です。20歳前は国民年金に加入する前の期間のため、保険料の納付要件は問われません。ただし所得制限があるため、所得が一定額を超えると支給が停止される場合があります。

Q. 「病歴・就労状況等申立書」には何を書けばいいですか?

A. 職場での指示理解の難しさ、対人関係のトラブル、遅刻や欠勤の背景など、日常生活や就労での具体的な困りごとを書きます。診断書に書かれた病名と内容が食い違わないようにする点も意識してください。

Q. 障害年金の申請は自分一人で進められますか?

A. 可能です。ただし、初診日の証明や申立書の書き方で迷う場面も多いテーマです。年金事務所の窓口や、障害年金を専門にする社会保険労務士、NPO法人の無料相談などを利用する方法もあります。

Q. 発達障害で障害年金の申請を考えている人を支援する際、何に気をつければよいですか?

A. 本人が困りごとを言葉にしづらい場合は、支援者が日々の記録から具体的なエピソードを拾い出し、本人と一緒に確認しながら申立書に反映するとよいでしょう。支援者だけで書き上げず、本人の実感とのズレがないか確認する姿勢が大切です。

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