Q. てんかんでも障害者手帳は取得できますか? A. はい、発作の頻度や日常生活への影響に応じて、精神障害者保健福祉手帳(1〜3級)の対象になります。 てんかんは医学的には脳の病気ですが、福祉制度の分類上は精神障害者保健福祉手帳の対象疾患の一つです。等級は発作のタイプと頻度で判定され、申請には初診から6か月以上の経過が条件になります。くわしい基準と申請の流れ、取得するメリット・デメリットを順番に解説します。
この記事でわかること
- てんかんが精神障害者保健福祉手帳の対象になる理由と、対象になる手帳の種類
- 等級(1〜3級)がどのように判定されるか、発作のタイプ・頻度との関係
- 申請に必要な書類と、診断書を書いてもらう際の注意点
- 手帳を取得すると受けられる支援と、意外と少ないデメリット
- 子どものてんかんや障害年金との関係、更新の手続き
てんかんは障害者手帳の対象になりますか?
A. 対象になりますが、取得できるのは身体障害者手帳ではなく精神障害者保健福祉手帳です。 障害者手帳には身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の3種類があります。てんかんはこのうち精神障害者保健福祉手帳の対象疾患として扱われています。
筆者が公的資料を確認した範囲では、この分類に違和感を持つ方が少なくないようです。てんかんは脳神経の病気であり、医学的には精神疾患に区分されません。それでも日本の障害福祉制度の運用上は、精神障害者保健福祉手帳の対象疾患の一つに位置づけられています。制度上の線引きと医学的な分類が食い違う、やや特殊なケース。
なお、てんかんに加えて知的障害をともなう場合は、療育手帳も選択肢に入ります。療育手帳は知的障害のある方のための手帳で、精神障害者保健福祉手帳とは別の制度です。どちらを選ぶか、あるいは両方を検討するかは、知的障害の有無によって変わります。判断に迷う場合は、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に相談してください。
てんかんのある方やご家族を支援する団体として、公益社団法人日本てんかん協会(波の会)があります。制度の最新情報や相談窓口の案内を発信しているため、手帳以外の悩みごとも含めて相談先の一つに加えておくと安心です。
等級はどのように判定されますか?
A. 発作のタイプと頻度の組み合わせで、おおむねの等級の目安が決まります。 てんかんの等級判定では、発作を大きく4つのタイプに分類したうえで、その頻度を2年以上の期間で確認する仕組みです。
発作の4タイプ
- 意識障害がなく、一部の体が思うように動かせなくなる発作
- 意識を失うものの、倒れずにぼんやりと動作が途絶える発作
- 意識障害の有無を問わず、転倒する発作
- 意識障害をともない、状況にそぐわない行動をとる発作
頻度と等級の目安
| 発作のタイプ | 年2回未満 | 年2回以上・月1回未満 | 月1回以上 |
|---|---|---|---|
| 意識障害なし・倒れない発作 | 対象外の可能性 | 3級程度 | 2級程度 |
| 転倒する・状況にそぐわない行動をとる発作 | 3級程度 | 2級程度 | 1級程度 |
この表はあくまで公的な研究資料に基づく目安であり、実際の等級は診断書全体の内容から総合的に判定されます。服薬の状況や発作以外の精神神経症状、日常生活での困りごとも判定材料になるため、同じ発作頻度でも結果が変わることがあります。
判定は長期間の薬物治療を続けたうえでの状態を原則とする点にも注意が必要です。自己判断で服薬を中止した結果の発作は、判定の対象になりにくいとされています。主治医に発作の記録や服薬状況を正確に伝えることが、適切な等級判定につながります。
申請にはどんな書類が必要ですか?
A. 申請書と「精神障害者保健福祉手帳用」の診断書が基本です。 申請の窓口は、お住まいの市区町村の障害福祉担当課になります。
- 精神障害者保健福祉手帳申請書
- 診断書(精神障害者保健福祉手帳用)
- 本人の写真(縦4cm×横3cm程度、自治体により規格が異なります)
- マイナンバー確認書類・本人確認書類
診断書の作成には、千葉市の案内にもあるとおり初診から6か月以上経過していることが条件です。診断書は精神保健指定医・精神科医が作成するのが原則ですが、てんかんで内科医等が主治医になっている場合は、他科の医師でも作成可能とされています。日頃から診てもらっている主治医に相談しやすい点は、てんかんの手帳申請ならではの利点です。
神戸市が公開している診断書の記載ガイドでは、発病時期・初診時の状態・初診後の治療経過・受診頻度を時系列で記載するよう求めています。記載に不備や判読できない箇所があると、判定できず返戻される場合があります。発作の頻度や服薬状況をメモにまとめ、主治医に渡しておくと記入漏れを防げます。北九州市の案内では、審査から結果が届くまで2〜3か月程度かかるとされています。
自立支援医療(精神通院医療)を同時に申請できる自治体もあります。診断書の所定欄に記載があれば、1通の診断書で手帳と自立支援医療の両方の申請が可能です。手帳を取得するかどうかに関わらず、通院医療費の負担軽減だけを先に利用したい場合は、自立支援医療のみを申請する選択肢も現実的です。
手帳を取得するとどんな支援を受けられますか?
A. 医療費助成・税制優遇・交通機関の割引など、幅広い支援が対象になります。 等級によって内容は変わりますが、代表的な支援は次のとおりです。
| 支援の種類 | 内容の例 |
|---|---|
| 医療費の助成 | 自治体独自の医療費助成制度(内容は地域差が大きい) |
| 税制上の優遇 | 所得税・住民税の障害者控除、相続税・贈与税の優遇 |
| 失業給付の優遇 | 就職困難者として受給条件が緩和され、給付期間も長くなる |
| 障害者雇用枠 | 一般雇用枠に加えて障害者雇用枠も選択肢になる |
| 交通機関の割引 | 鉄道・バス・タクシー・航空・フェリーの割引(事業者ごとに条件が異なる) |
| レジャー施設の割引 | 動物園・水族館・映画館・テーマパークなどの入場料割引 |
| ミライロID | 手帳をスマートフォンに登録し、提示や割引購入をデジタル化できる |
税制優遇の金額や割引率は、等級や自治体・事業者によって差が大きく、改定されることもあります。本記事の数字は一事業者・一自治体の一例として捉え、実際に利用する際は各自治体・各事業者の最新案内で確認してください。障害者控除の具体的な控除額や申請方法は、障害者控除とは?対象者・金額・申請方法をわかりやすく解説で詳しく整理しています。
ミライロIDについては、障害者手帳アプリとは?ミライロIDの使い方と対応4300施設で使い方を解説しています。手帳の提示に抵抗を感じる方でも、スマートフォンでの提示なら心理的なハードルが下がるという声があります。
手帳を取得するデメリットはありますか?
A. 実質的な不利益はほとんどない、というのが実情に近いようです。 手帳を持っていること自体が自動的に誰かへ通知される仕組みはありません。
- 会社への通知: 手帳を取得しても、勤務先に自動で知らされることはありません。障害者控除は自分で確定申告すれば受けられます
- 保険・ローンの審査: 手帳の有無で判断されるのではなく、通院状況や健康状態から総合的に判断されます
- 公務員試験への影響: 自衛官や警察官になれないという誤解がありますが、受験資格に手帳の有無は関係しません。実際の健康状態で判断されます
一方で、「障害者だと認めることへの心理的な抵抗感」を課題に挙げる声は少なくありません。精神障害者保健福祉手帳という名称から、精神疾患だと誤解されることを気にする方もいるようです。てんかんは制度上の分類にすぎず、実態はあくまで脳の病気。この点を理解しておくと、手帳取得に対する抵抗感が和らぐこともあります。
手帳取得のメリット・デメリットの一般的な考え方は、障害者手帳のメリットとは?デメリットや等級別の違いも解説もあわせて確認してください。
子どものてんかんでも手帳は取れますか?
A. 取得できますが、知的障害をともなう場合は療育手帳との選択・併用を検討します。 精神障害者保健福祉手帳そのものには年齢の下限は設けられていません。判定基準は成人と同様、発作のタイプと頻度が中心です。
てんかんに加えて知的な遅れがある場合は、療育手帳の対象にもなります。療育手帳と精神障害者保健福祉手帳では、受けられる支援の内容が異なります。知的障害の有無によって、どちらを申請するか、両方を申請するかが変わります。判定の窓口も異なるので、児童相談所や発達支援の専門機関に早めに相談しておくと見通しを立てやすくなります。
保育所の入園基準でも、世帯に障害のある子どもがいることが加点対象になったり、保育料の軽減につながったりする自治体があります。制度の有無や条件は市区町村ごとに差が大きいため、お住まいの地域の子育て支援窓口に確認してください。
障害者手帳と障害年金は同じ制度ですか?
A. いいえ、障害者手帳と障害年金は別の制度です。 障害者手帳は福祉サービスや割引を利用するための証明書で、障害年金は障害による収入減を補う金銭的な給付制度です。
手帳を取得していなくても障害年金を受給できますし、逆に手帳を持っていなくても年金の申請自体は可能です。等級の判定基準も、手帳と年金では完全に同じではありません。てんかんで障害年金の対象になるかどうかを詳しく知りたい場合は、障害年金の申請方法とは?必要書類7つと手続きの流れを解説を参考にしてください。
更新の手続きはどうなりますか?
A. 有効期間は交付日から2年間で、期限の3か月前から更新申請ができます。 てんかんの症状は変化しやすいため、2年ごとに診断書を提出し、あらためて障害の状態を確認する仕組みになっています。
更新を忘れて手帳が失効すると、その間は手帳による支援を受けられなくなります。更新時期の目安をカレンダーなどで管理しておくと安心です。更新の具体的な流れは、障害者手帳の更新とは?時期・必要書類をわかりやすく解説でも解説しています。
てんかんの発作が起きたときはどう対応しますか?
A. 周囲の危険物を遠ざけ、落ち着いて見守るのが基本です。 ほとんどの発作は数分以内におさまります。
無理に体を押さえつけたり、口に物を入れたりしないことが大切です。嘔吐物による気道閉塞に注意しながら、安全な場所で見守ってください。和歌山県の案内でも、発作の種類を見極めたうえで、落ち着いて対応することの重要性が示されています。
一方で、発作が5〜10分以上続く場合や、意識が戻らないまま次の発作が始まる場合は、救急対応が必要になることがあります。初めての発作とみられる場合も、すぐに医療機関を受診してください。施設の支援者としては、発作の長さをなんとなくではなく時計で確認するクセをつけておくと、救急対応の判断がしやすくなります。
施設で働く人が利用者に伝える際のポイント
福祉施設や支援機関で働く方が、てんかんのある利用者から手帳について相談を受ける場面もあると思います。筆者が各自治体の案内を確認した限りでは、「精神障害者保健福祉手帳」という名称だけで申請を敬遠してしまう当事者が一定数いるようです。てんかんが制度上どのように分類されているかを先に説明すると、相談がスムーズに進みやすくなります。
発作の記録を日頃からつけてもらうよう促すことも、支援者としてできる工夫の一つです。発作の頻度・タイプ・服薬状況が診断書の判定材料になるため、本人や家族がメモを残していると、主治医への情報提供がスムーズになります。申請先の自治体ごとに必要書類の細部が異なる点も、事前に一緒に確認しておくと安心です。
よくある質問
Q: てんかんでも障害者手帳は取得できますか?
A: はい、発作の頻度や日常生活への影響に応じて、精神障害者保健福祉手帳(1〜3級)の対象になります。知的障害をともなう場合は療育手帳も選択肢になります。
Q: てんかんは精神障害ではないのに、なぜ精神障害者保健福祉手帳の対象なのですか?
A: てんかんは医学的には脳の病気ですが、障害福祉制度の運用上は精神障害者保健福祉手帳の対象疾患の一つに分類されています。医学的な分類と制度上の分類が異なる、特殊なケースです。
Q: 発作がどのくらいの頻度であれば手帳の対象になりますか?
A: 発作のタイプによりますが、年1回以上の発作があれば3級程度の対象になる可能性があります。転倒や意識障害をともなう発作は、より軽い頻度でも上位の等級の目安になります。
Q: 薬で発作が抑えられている場合も対象になりますか?
A: 服薬によって発作がコントロールされている場合でも対象になり得ます。ただし判定は長期間の薬物治療を続けたうえでの状態を原則とするため、自己判断での服薬中断は判定に不利に働く可能性があります。
Q: てんかんの障害者手帳取得にデメリットはありますか?
A: 勤務先への自動通知や保険・ローン審査への直接的な影響はないとされています。心理的な抵抗感を課題に挙げる声はありますが、実質的な不利益は少ないようです。
Q: 子どものてんかんでも手帳は取れますか?
A: 取得できます。年齢の下限は設けられていません。知的障害をともなう場合は、療育手帳との選択・併用も検討してください。
Q: 障害者手帳と障害年金は同じ制度ですか?
A: いいえ、別の制度です。障害者手帳は福祉サービス・割引の利用証明、障害年金は収入減を補う金銭的な給付制度です。
Q: 手帳の更新はどのくらいの頻度で必要ですか?
A: 有効期間は交付日から2年間です。期限の3か月前から更新申請ができるため、早めに準備を進めてください。
Q: てんかんの発作が起きたらどう対応すればいいですか?
A: 周囲の危険物を遠ざけ、落ち着いて見守るのが基本です。無理に押さえつけず、発作が5〜10分以上続く場合や意識が戻らない場合は救急対応を検討してください。

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