Q. 難聴でも障害者手帳は取得できますか? A. はい、両耳の聴力レベルが70デシベル以上などの基準を満たせば、身体障害者手帳(聴覚障害2〜4級・6級)の対象になります。 聴覚障害の等級は、難聴の原因ではなく聴力レベルの数値だけで判定されるのが特徴です。感音性難聴・加齢性難聴・突発性難聴など原因を問わず、基準に届けば手帳の対象になります。くわしい等級基準と申請の流れ、手帳がなくても使える制度まで順番に解説します。
この記事でわかること
- 難聴が身体障害者手帳の対象になる仕組みと、聴覚障害の等級(2〜4級・6級)の基準
- 聴力レベルの測り方と、等級を決める計算式
- 申請に必要な書類と、診断書を書いてもらう際の注意点
- 基準に届かない軽度・中等度の難聴でも使える、自治体独自の補聴器助成制度
- 手帳を取得すると受けられる支援と、更新・再認定の仕組み
難聴でも障害者手帳は取得できますか?
A. 取得できますが、対象は聴力の数値基準を満たす身体障害者手帳です。 障害者手帳には身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の3種類があります。このうち難聴は、身体障害者手帳の「聴覚障害」に区分されます。
聴覚障害の等級は1級から6級のうち、2級・3級・4級・6級の4段階です。1級と5級には聴覚障害の基準が設定されていません。等級がない段階が間に挟まっています。「6級の次は4級」という少し変わった並びは、見落とされやすいところです。
筆者が複数の都道府県の資料を確認した限り、等級の判定基準はどの自治体でもほぼ同じ数値です。原因となる病気の種類(感音性難聴・伝音性難聴・混合性難聴など)は問われません。聴力レベルの数値だけで等級が決まる仕組みです。
等級はどのように判定されますか?
A. 両耳の聴力レベル(デシベル)で、2級・3級・4級・6級のいずれかが決まります。 数値が大きいほど聞こえづらく、重い等級になります。
| 等級 | 基準 |
|---|---|
| 2級 | 両耳の聴力レベルがそれぞれ100デシベル以上(両耳全ろう) |
| 3級 | 両耳の聴力レベルがそれぞれ90デシベル以上で、耳介に接しなければ大声語を理解できないもの |
| 4級 | 両耳とも80デシベル以上で話声語を理解できない、または両耳の語音明瞭度が50%以下のもの |
| 6級 | 両耳とも70デシベル以上、または一方が90デシベル以上・他方が50デシベル以上のもの |
聴力レベルは、500・1,000・2,000ヘルツの3つの周波数ごとに測った数値(a・b・c)から、(a+2b+c)÷4という式で算出します。中心となる1,000ヘルツの値を2倍にして重みづけする計算方法です。
100デシベルの音がまったく聞こえない場合、その部分は105デシベルとして計算するルールもあります。埼玉県の資料にもこの算定方法が明記されており、複数の都道府県の基準書で同じ内容を確認できました。
聴力検査はどのように行われますか?
A. 補聴器を外した状態で、防音室で純音オージオメータという機器を使って測定します。 普段から補聴器を使っている方も、検査時だけは外すのが原則です。
- 純音オージオメータで、500・1,000・2,000ヘルツの音がどこまで小さく聞こえるかを測定する
- 語音明瞭度検査(言葉の聞き取りのテスト)も実施し、4級の判定材料に使う
- 聴性脳幹反応(ABR)など他覚的聴覚検査が必要になる場合がある
2級の判定では、本人からの申告だけに頼らない仕組みが用意されています。厚生労働省の資料によると、聴覚障害で手帳を持っていない人が2級の診断を受ける場合は要注意です。聴性脳幹反応などの他覚的な検査結果を添付する必要があります。重い等級ほど、検査の客観性が重視される仕組みのようです。
申請にはどんな書類が必要ですか?
A. 申請書と身体障害者福祉法の指定医による診断書・意見書が基本です。 申請の窓口は、お住まいの市区町村の障害福祉担当課になります。
- 身体障害者手帳交付申請書
- 診断書・意見書(聴覚障害用、指定医が作成したもの)
- 本人の写真(縦4cm×横3cm程度、自治体により規格が異なります)
- マイナンバー確認書類・本人確認書類
まず耳鼻咽喉科の主治医に相談し、身体障害者福祉法第15条に基づく指定医かどうかを確認してください。指定医でない場合は、市区町村や身体障害者福祉センターで指定医を紹介してもらえます。
交付までの期間は自治体によって差があります。申請から概ね3週間前後とする案内が、複数の市区町村で見られました。
診断書の記載内容に不備があると、判定できず書き直しを求められることもあります。聴力検査の結果データのコピーを添付するよう求められる自治体もあります。検査を受けた医療機関で、事前に確認しておくとスムーズです。
軽度・中等度の難聴や高齢者の難聴でも手帳はもらえますか?
A. 70デシベル未満の軽度・中等度難聴は、原則として身体障害者手帳の対象外です。 ここは「難聴=手帳がもらえる」と思い込んでいる方が誤解しやすいポイントです。
加齢性難聴の多くは40〜60デシベル程度にとどまります。6級の基準(70デシベル以上)に届かないケースが少なくありません。年齢を重ねて聞こえづらさを感じていても、検査の結果次第では手帳の対象にならないことがあります。
ただし、手帳の基準に届かない方向けの支援が別に用意されている自治体もあります。国の補装具費支給制度は身体障害者手帳が前提ですが、それとは別の制度も存在します。軽度・中等度難聴者向けの補聴器購入費助成制度を設けている都道府県が多いのです。両者の違いを整理しました。
| 身体障害者手帳の補装具費支給 | 軽度・中等度難聴者向け補聴器購入費助成 | |
|---|---|---|
| 運営主体 | 国の制度(手帳が前提) | 都道府県・市区町村の独自制度 |
| 対象者 | 聴力70デシベル以上などで手帳を交付された人 | 手帳の基準に届かない軽度・中等度難聴者(子ども・高齢者が多い) |
| 助成の内容 | 補聴器の購入費のほとんどを補装具費で支給 | 購入費の一部を助成(上限額は自治体ごとに異なる) |
| 自治体差 | 全国共通の基準 | 自治体ごとに対象年齢・所得条件・助成額が大きく異なる |
静岡市や仙台市の例を見てみましょう。両耳の聴力レベルが30デシベル以上70デシベル未満で、手帳の対象とならない児童を助成対象にしています。一方、成人向けの助成制度は自治体ごとに有無が分かれます。まずはお住まいの自治体の障害福祉課・高齢福祉課に確認してください。多くの自治体で、購入前の申請・医師の意見書が条件になっている点も共通しています。
手帳を取得するとどんな支援を受けられますか?
A. 税金の控除、交通機関の割引、补聴器購入費の支給など幅広い支援が対象になります。 等級によって内容は変わりますが、代表的な支援は次のとおりです。
| 支援の種類 | 内容の例 |
|---|---|
| 税制上の優遇 | 所得税・住民税の障害者控除、軽自動車税の減免 |
| NHK放送受信料 | 世帯主かつ契約者本人が対象で、世帯全員が非課税の場合に半額免除 |
| 交通機関の割引 | 鉄道・バス・地下鉄の運賃割引、満12歳以上は国内航空の割引も対象 |
| 補装具費支給 | 補聴器の購入・修理費用の大部分を支給(原則1割の自己負担) |
| コミュニケーション支援 | 手話通訳者・筆記通訳者の派遣、聴覚障害者災害情報配信登録 |
| ミライロID | 手帳をスマートフォンに登録し、提示や割引購入をデジタル化できる |
横浜市の案内では、こうした支援に加えてマル優(少額預金の利子非課税)の条件にも触れられています。税制優遇の具体的な控除額は、障害者控除とは?対象者・金額・申請方法をわかりやすく解説で詳しく整理しています。
本記事で紹介した割引率や助成額は、一事業者・一自治体の案内に基づく一例です。実際に利用する際は、各自治体・各事業者の最新案内で確認してください。ミライロIDの使い方は、障害者手帳アプリとは?ミライロIDの使い方と対応4300施設で解説しています。
障害者手帳と障害年金は同じ制度ですか?
A. いいえ、障害者手帳と障害年金は別の制度です。 障害者手帳は福祉サービスや割引を利用するための証明書で、障害年金は収入減を補う金銭的な給付制度です。
等級の判定基準も、手帳と年金では完全には一致しません。聴力の数値が手帳の等級基準を満たしていても、障害年金の等級判定では別の基準で審査されます。難聴で障害年金の対象になるかどうかを詳しく知りたい場合は、障害年金の申請方法とは?必要書類7つと手続きの流れを解説を参考にしてください。
手帳の更新・再認定はどうなりますか?
A. 身体障害者手帳には原則として有効期限がありません。 精神障害者保健福祉手帳は2年ごとに更新が必要ですが、これとは異なる仕組みです。この違いを知らないまま放置してしまう方もいるようです。
ただし、認定時に「将来、障害の程度が変化するかもしれない」と判断された場合は注意が必要です。指定された時期までに再認定を受ける必要があります。感音性難聴は改善の見込みが少なく、永続する障害として認定されやすい傾向です。一方、突発性難聴やメニエール病のように聴力が変動しうる疾患は、再認定の要否が個別に判断されることがあります。
再認定の時期が近づくと、市区町村から事前に通知が届くのが一般的です。手帳の種類ごとの更新ルールの違いは、障害者手帳の更新とは?時期・必要書類をわかりやすく解説もあわせて確認してください。
施設で働く人が利用者に伝える際のポイント
福祉施設や支援機関で働く方なら、難聴のある利用者やご家族から手帳について相談を受ける場面もあるはずです。筆者が各自治体の案内を確認した限り、「聞こえにくさはあるのに手帳の対象にならない」というケースの説明が特に重要です。
- 聴力検査の結果が基準に近い場合は、複数回検査を受けて正確な数値を確認してもらう
- 手帳の対象にならなくても、自治体独自の補聴器助成制度が使える可能性を案内する
- 補聴器の調整が不十分なまま「聞こえない」と思い込んでいる利用者には、専門の補聴器店や耳鼻咽喉科への再相談を勧める
高齢の利用者ほど、加齢性難聴で手帳の基準に届かないケースが目立ちます。手帳が取得できなくても、支援の選択肢があることを伝えられると安心感を与えられるはずです。
よくある質問
Q: 難聴でも障害者手帳は取得できますか?
A: はい、両耳の聴力レベルが70デシベル以上などの基準を満たせば、身体障害者手帳(聴覚障害2〜4級・6級)の対象になります。原因となる病気の種類は問われません。
Q: 聴覚障害に1級や5級はありますか?
A: ありません。聴覚障害の等級は2級・3級・4級・6級の4段階のみで、1級と5級には基準が設定されていません。
Q: 聴力検査は補聴器をつけたまま受けられますか?
A: いいえ、原則として補聴器を外した状態で、防音室で純音オージオメータを使って測定します。
Q: 加齢性難聴でも手帳はもらえますか?
A: 聴力レベルが基準(6級なら70デシベル以上)に届けば対象になりますが、加齢性難聴は40〜60デシベル程度にとどまり、基準に届かないケースが少なくありません。
Q: 手帳の基準に届かない場合、補聴器の助成は受けられませんか?
A: 多くの都道府県で、軽度・中等度難聴者向けの補聴器購入費助成制度が用意されています。対象年齢や助成額は自治体ごとに異なるため、お住まいの障害福祉課に確認してください。
Q: 身体障害者手帳に更新はありますか?
A: 原則として有効期限はありません。ただし将来の変化が見込まれる場合は、指定された時期に再認定を受ける必要があります。
Q: 障害者手帳と障害年金は同じ制度ですか?
A: いいえ、別の制度です。障害者手帳は福祉サービス・割引の利用証明、障害年金は収入減を補う金銭的な給付制度です。
Q: 申請から交付までどのくらいかかりますか?
A: 自治体差はありますが、申請から概ね3週間前後とする案内が複数の市区町村で見られました。

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