障害者手帳のデメリットとは?後悔しないために知っておきたい注意点

障害者手帳のメリットとデメリットのバランスを示す天秤のイラスト 障害者手帳
この記事でわかること

  • 障害者手帳を取得することで生じる、心理面・手続き面の具体的なデメリット
  • 「生命保険に入れなくなる」という噂の実態と、正しい理解の仕方
  • 手帳を実際に使う場面で起きること、等級によって支援に差が出る現実

障害者手帳のデメリットは何かと聞かれたら、「制度そのものに損をする仕組みはなく、負担になりやすいのは心理面と手続きの手間」というのが結論です。ただし、生命保険への影響や、手帳を提示するたびに起きることなど、事前に知っておかないと戸惑う場面もいくつかあります。

この記事では、複数の専門家解説と、実際に手帳を取得した方々の体験談をもとに、デメリットと呼ばれるものの実態を一つずつ整理しました。障害者手帳のメリットを中心にまとめた記事とあわせて読むと、取得の判断がしやすくなります。

障害者手帳とは?3種類の基礎知識

障害者手帳は一つの制度ではなく、身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳という3種類の総称です。制度の全体像は厚生労働省の公式情報でも公開されています。デメリットの内容は、この3種類のどれを取得するかによっても少しずつ変わってきます。

手帳の種類 対象 更新
身体障害者手帳 視覚・聴覚・肢体不自由・内部障害など 原則なし(再認定が必要な場合あり)
精神障害者保健福祉手帳 うつ病・統合失調症・発達障害など 2年ごと
療育手帳 知的障害 自治体・年齢による

手帳の種類ごとの詳しい違いや等級の仕組みは、障害者手帳のメリットを解説した記事で整理しています。ここでは、取得後に「知らなかった」と感じやすいデメリット・注意点に絞って解説していきます。

障害者手帳を取得する5つのデメリット・注意点

まず、複数の専門家解説で共通して挙げられているデメリットを一覧にしました。どれも制度上の「不利益」というより、手続きや心理面の負担に分類されるものです。

デメリット 内容
①心理的な負担 「障害者だと認めることになる」という葛藤や、提示時の視線への不安
②申請費用 診断書代が5,000円〜1万円程度かかる
③交付までの時間 申請から手帳が届くまで、1〜3ヶ月ほどかかる
④更新・再認定の手間 種類によって2年ごとなどの更新が必要
⑤等級による支援格差 等級が低いと、思っていたほど手厚い支援を受けられないことがある

①心理的な負担・偏見への不安

もっとも多く挙げられるのが、心理的なハードルです。「障害者だと認めることになる」という踏ん切りがつかない、周囲に知られたくないと感じる方は少なくありません。

ある精神科医のチャンネルでは、手帳取得を迷う就活生からの質問に対して「精神的に踏ん切りをつけさせられたと感じる部分こそが、実質的なデメリットに近い」と答えていました。手帳自体が生活に不利益をもたらすわけではなく、気持ちの整理がつくかどうかが分かれ目になるという見方です。

一方で、手帳の提示や取得の報告は義務ではありません。誰にも伝えずに一般雇用枠で働き続けることもできますし、必要なくなれば返納することもできます。この選べる仕組みがあることは、覚えておいて損はありません。編集部としても、取材を通じて「デメリットの正体は制度ではなく気持ちの整理だった」と語る方が多い印象を受けました。

②診断書代など申請にかかる費用

申請には医師の診断書が必要で、費用は医療機関によって差があるものの、おおむね5,000円〜1万円程度が相場です。障害年金の申請とは異なる書類のため、すでに障害年金を受給している場合でも、手帳用の診断書は別途用意することになります。

割引や助成でどれくらい取り戻せるかは利用頻度によって変わるため、診断書代を「元が取れるかどうか」だけで判断するより、生活のどの場面で使いたいかをイメージしてから申請するほうが後悔しにくいといえます。

③申請から交付までの時間

窓口へ申請してから手帳が手元に届くまで、身体障害者手帳で1ヶ月前後、精神障害者保健福祉手帳で2〜3ヶ月ほどかかることが一般的です。急いで割引や助成を使いたい事情がある場合は、この期間を見込んで早めに動き出す必要があります。

なお、精神障害者保健福祉手帳は、初診日から6ヶ月以上経過していないと申請できません。診断されたばかりのタイミングではすぐに申請できない点も、あわせて知っておきたい注意点です。

④更新・再認定の手間

精神障害者保健福祉手帳は2年ごとに診断書を再提出する必要があります。身体障害者手帳は原則更新がありませんが、症状の変化が見込まれる場合は再認定が入ることがあります。

更新のたびに新しい診断書を用意する手間や費用は、地味に負担として積み重なります。更新時期の管理や具体的な手続きの流れは、障害者手帳の更新について解説した記事で詳しくまとめています。

⑤等級によって受けられる支援に差がある

見落とされがちなのが、等級によって支援の手厚さが大きく変わるという点です。ある体験談では、右半身まひで2級を取得した60代男性が「1級以外は思っている以上に支援サービスは少ない」と振り返っていました。

同じ「障害者手帳を持っている」状態でも、1級と6級では受けられる割引・助成の範囲がまったく異なります。取得前にイメージしていたサービスが、実際の等級では対象外だったというケースも珍しくありません。事前に、自分が想定される等級でどこまでの支援を受けられるのか、市区町村の窓口で具体的に確認しておくと安心です。身体・精神・療育それぞれの等級の基準や、統計で見る等級別の分布は障害者手帳の等級を解説した記事で確認できます。

障害者手帳と生命保険・医療保険の関係

「障害者手帳を取ると生命保険に入れなくなる」という話を耳にしたことがある方もいるかもしれません。これは正確ではありません。生命保険・医療保険の加入審査で問われるのは、手帳の有無そのものではなく、原因となっている傷病の内容です。

生命保険に加入する際には、現在の健康状態や病歴を正確に伝える告知義務があります。保険会社が確認するのは、この告知内容にもとづく傷病のリスクであり、「手帳を持っているかどうか」という事実そのものは、通常は告知項目に含まれません

ある体験談では、心臓に機械弁を装着し身体障害者手帳3級を取得した女性が、「ことごとく民間の医療保険・生命保険に断られた」と語っていました。ただしこれも、手帳を取得したことが原因ではなく、心臓に機械弁を入れているという傷病の内容そのものが、通常の保険では引受が難しいと判断された可能性が高いケースです。手帳の有無と保険加入の可否を直接結びつけて考えると、実態とずれた不安を抱えることになりかねません。専門家サイトの解説でも「障害者手帳そのものは告知の対象とならない場合が多く、原因となった傷病が告知の対象となる」と整理されており、こうした専門家の整理も判断材料の一つになります(具体的な引受基準は保険会社ごとに異なるため、あくまで一般的な傾向としての目安です)。

すでに加入している保険は、手帳を取得した後もそのまま継続できます。新規加入を検討する場合は、持病がある方向けの引受基準緩和型保険という選択肢もあるため、「入れない」と決めつける前に複数の保険会社・保険相談窓口に確認してみてください。告知義務に違反すると契約解除につながる可能性があるため、加入時は正確に申告してください。

手帳を提示するたびに起きること

デメリットとして体験談で具体的に語られていたのが、手帳を提示する場面そのものへの心理的な負担です。

聴覚障害でバスの運賃無料の対象となった方は、「バスに乗るたびに運転士に手帳を開いて見せ、顔写真と本人を確認される必要があり、他の乗客に見られることがデメリットに感じる」と語っていました。また別の体験談では、市役所や医療機関で手続きを行う際、身分証明として手帳のコピーを取られることがあり、「自分の住所や症状といった個人情報を知られるようで嫌だった」という声もありました。

こうした場面は、手帳を持つ人なら誰もが一度は経験しうる、地味だけれど確かな負担です。ただし、提示するかどうかは基本的に自分で選べます。割引を使う場面だけで提示し、それ以外の日常生活では見せないという使い分けも可能です。すべての場面で開示が求められるわけではないと知っておくだけでも、心理的な負担は軽くなります。複数の体験談を読み比べていて感じたのは、この種の負担は本人の感じ方次第で大きくも小さくもなるという点です。

障害者雇用枠で働く場合に知っておきたいデメリット

障害者雇用枠での就職は手帳を持つメリットの一つですが、あわせて知っておきたい注意点もあります。ある発達障害当事者向けチャンネルでは、「障害者雇用は一般雇用と比べて給料の平均が低くなりやすく、募集される職種もやや限定的になりがち」という声が紹介されていました。

配慮を受けながら働けることと、給与水準・職種の幅とのバランスをどう考えるかは、人によって判断が分かれるところです。障害者手帳を取得したからといって、必ず障害者雇用枠で働かなければならないわけではありません。一般雇用枠への応募や、一般雇用枠と障害者雇用枠の併願も可能です。

なお、2026年7月から民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%に引き上げられ、対象となる企業規模も従業員37.5人以上に拡大しました。社会保険労務士事務所による解説によると、対象企業の拡大にともない、これまで義務の対象外だった小規模企業にも採用義務が広がっているとのことです。対象企業が増えたことで、障害者雇用枠の求人数そのものは今後広がっていく可能性があります。制度の動きも踏まえながら、自分に合った働き方を検討してみてください。

それでもメリットが上回ると言われる理由

ここまでデメリットを中心に見てきましたが、複数の専門家解説に共通しているのは、「制度上の明確な不利益はほとんどなく、税金控除や医療費助成などの経済的なメリットが上回るケースが多い」という結論です。

所得税・住民税の障害者控除、医療費の自己負担軽減、交通機関や公共料金の割引といった経済的なメリットの具体的な金額は、障害者控除の仕組みを解説した記事で詳しく試算しています。控除の要件そのものは国税庁の公式情報でも確認できます。デメリットとして挙げた診断書代や更新の手間は、多くの場合、こうした割引・助成の総額に比べると小さくおさまります。

デメリットが気になる方の判断軸

すべての方に「取得すべき」と言えるものではありません。次のような視点で考えてみると、判断しやすくなります。

  • 通院・治療が長期化しており、医療費や税金の負担を軽くしたい → メリットが上回りやすい
  • 手帳を持つこと自体に強い心理的な抵抗がある → 無理に急ぐ必要はない
  • 生命保険への影響が心配 → 手帳の有無ではなく傷病の内容で判断されるため、過度に心配しすぎなくてよい
  • 等級がどの程度になりそうか分からない → 事前に主治医や窓口に相談する

迷う場合は、まず主治医やご家族に相談し、市区町村の窓口で自分のケースに当てはまる制度を具体的に確認することから始めてください。

申請方法の流れ

申請の流れは、事前相談から交付まで大きく4つのステップです。

ステップ 内容
1. 事前相談 主治医に取得の意向を伝え、診断書の作成を依頼する
2. 申請書類の準備 申請書・診断書・顔写真・マイナンバーカードなどを揃える
3. 窓口へ申請 お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口へ提出する
4. 審査・交付 審査を経て、1〜3ヶ月ほどで手帳が交付される

障害の種類や等級の判定基準は、障害支援区分とは異なる医学的な観点から決まります。区分との違いが気になる方は障害支援区分をわかりやすく解説した記事もあわせてご確認ください。

まとめ:デメリットより先に確認したい3つのこと

障害者手帳のデメリットとされるものの多くは、制度上の不利益というより、心理面・手続き面の負担です。生命保険への影響のように、正確な理解があれば過度に心配しなくてよいものも含まれています。取得を検討する際は、次の3つを先に確認しておくと判断しやすくなります。

確認すること ポイント
1. 想定される等級 等級によって受けられる支援の範囲が変わるため、事前に窓口で目安を聞く
2. 提示する場面の想定 どの制度で使いたいかを決めておくと、心理的な負担を最小限にできる
3. 保険加入への影響 手帳の有無ではなく傷病の内容が問われる点を理解しておく

よくある質問

Q: 障害者手帳を取得すると、生命保険に入れなくなりますか?

A: 手帳の有無そのものが加入審査の対象になるわけではありません。審査で問われるのは告知した傷病の内容です。すでに加入している保険はそのまま継続でき、新規加入を検討する場合は持病がある方向けの保険という選択肢もあります。判断に迷う場合は複数の保険会社や相談窓口に確認してください。

Q: 障害者手帳を持っていることは、必ず周囲に知られてしまいますか?

A: いいえ。手帳の提示や取得の報告は義務ではなく、割引や助成を使いたい場面だけで提示するという使い分けが可能です。会社に取得を報告する義務もありません。

Q: 障害者手帳を取得すると、必ず障害者雇用枠で働かなければなりませんか?

A: いいえ。障害者手帳を持っていても一般雇用枠での就職・転職は可能で、一般雇用枠と障害者雇用枠の併願もできます。

Q: 診断書代はどれくらいかかりますか?

A: 医療機関によって差がありますが、おおむね5,000円〜1万円程度が相場です。障害年金の申請に使う診断書とは別に用意する必要があります。

Q: 手帳の等級が低いと、支援はほとんど受けられませんか?

A: 等級によって受けられる支援の範囲は大きく変わります。1級と比べると、それ以外の等級では対象となる割引・助成が限定的になる場合があるため、事前に市区町村の窓口で自分の想定等級で受けられる支援を確認しておくと安心です。

Q: 手帳を提示するとき、必ずコピーを取られますか?

A: 場面によります。身分証明として提示のたびにコピーを求められることがある一方、目視確認だけで済むケースもあります。心理的な負担を感じる場合は、提示が本当に必要な場面かどうかを都度判断するとよいでしょう。

Q: 一度取得した手帳は、途中で返納できますか?

A: 返納できます。不要になったと感じたタイミングで、お住まいの市区町村の窓口で手続きが可能です。

Q: 障害者手帳のデメリットとメリット、どちらが大きいですか?

A: 制度上の明確な不利益はほとんどなく、税金控除や医療費助成などの経済的なメリットが上回るケースが多いとされています。心理的な負担をどう感じるかは個人差が大きい部分のため、ご家族や主治医と相談しながら判断してください。メリットの詳しい内容はこちらの記事で解説しています。

制度の内容や助成額、法定雇用率などは年度によって変わることがあります。この記事の数値は目安として捉え、実際に申請する際はお住まいの市区町村の窓口で最新情報を確認してください。

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