- 身体障害者手帳(1〜7級)・精神障害者保健福祉手帳(1〜3級)・療育手帳、それぞれの等級のしくみと違い
- 国の統計データから見る「実際は何級の人が多いのか」
- 等級と混同されやすい「障害年金の等級」「障害支援区分」との違い
障害者手帳の等級は、手帳の種類によって区分そのものが違います。身体障害者手帳は1〜7級、精神障害者保健福祉手帳は1〜3級、療育手帳は自治体ごとの独自区分です。同じ「1級」という言葉でも、手帳の種類が違えば基準は別物になります。まずは自分がどの手帳を持っている(あるいは取得を検討している)のかを確認することが、最初の一歩です。
当サイトで複数の等級解説動画・体験談を確認してきました。そこで感じたのは、「1級が一番重い」という基本ルールは知っていても、なぜ自分の障害でその等級になったのかを説明できる人が少ないということです。この記事では3種類の手帳の等級区分を整理したうえで、国の統計データをもとに実際の分布も見ていきます。あわせて、「障害者手帳の等級」「障害年金の等級」「障害支援区分」という名前の似た3つの制度が混同されやすい点も整理します。
障害者手帳の等級とは?3種類の手帳でしくみが違う
障害者手帳は「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の総称です。この3つは等級の付け方がそれぞれ独立しています。厚生労働省の障害者手帳制度の解説ページでも、3つの手帳は別々の法律・実施要領にもとづいて運用されていると説明されています。
| 手帳の種類 | 対象 | 等級区分 | 全国共通か |
|---|---|---|---|
| 身体障害者手帳 | 視覚・聴覚・肢体不自由・内部障害など | 1〜7級(交付は原則6級以上) | 共通 |
| 精神障害者保健福祉手帳 | うつ病・統合失調症・発達障害など | 1〜3級 | 共通 |
| 療育手帳 | 知的障害 | A・B、1〜4度など自治体ごとに異なる | 自治体ごと |
3つとも「1級(またはA)が最も重度」という点は共通しています。ですが、等級の刻み方も、認定する機関も、根拠となる法律もそれぞれ別物です。人によっては身体障害と精神障害の両方で手帳を持つなど、複数の手帳を併用するケースもあります。以下、手帳の種類ごとに等級のしくみを見ていきます。
身体障害者手帳の等級は1〜7級|障害の種類で用意される段階が違う
身体障害者手帳の等級は1級から7級まであります。数字が小さいほど障害の程度が重いという扱いです。ただし、手帳として交付されるのは原則1〜6級までで、7級単独では交付対象になりません。7級の障害が2つ以上重複する場合、または7級の障害が6級以上の障害と合併する場合は別です。合算して6級以上として認定される仕組みになっています。
すべての障害に7段階が用意されているわけではない
ここが見落とされがちなポイントです。視覚障害や肢体不自由は、1級から6級までフルに等級が設定されています。一方で聴覚障害は、2級・3級・4級・6級しか存在しません(1級・5級は欠番です)。心臓機能障害・腎臓機能障害などの内部障害も同様の傾向があります。1級・3級・4級のみで、2級・5級・6級がないケースが目立ちます。
つまり「自分は3級だから中間くらい」と単純に考えるのは早計です。同じ障害の区分の中で、自分の等級がどの位置にあるかを見る必要があります。例えば聴覚障害で2級を持っている場合、その区分の中では最も重い等級にあたります。等級ごとの詳しい基準は、各都道府県の福祉事務所の障害程度等級表で確認できます。
精神障害者保健福祉手帳の等級は1〜3級|2年ごとの更新で変わることも
精神障害者保健福祉手帳の等級は1級・2級・3級の3段階です。うつ病・統合失調症・てんかん・発達障害など、ほぼすべての精神疾患が対象になります。厚生労働省の判定基準に関する通知では、精神疾患の状態と、日常生活・社会生活における能力障害の状態を総合的に判定するとされています。3級は「日常生活または社会生活に制限を受けるか、制限を加えることを必要とする程度」です。2級は「日常生活に著しい制限を受けるか、制限を加えることを必要とする程度」とされています。1級はさらに重く、日常生活の常時の援助が必要な状態が目安です。
精神障害者保健福祉手帳は、原則2年ごとの更新が必要です。更新のたびに等級が見直されます。症状の変化によって、更新時に等級が上がることも下がることもあります。身体障害者手帳が原則更新不要なのとは対照的な点です。更新の詳しい流れは障害者手帳の更新に関する記事にまとめています。
療育手帳の等級は自治体ごとに基準が違う|東京都「愛の手帳」の例
療育手帳は知的障害のある方に交付される手帳です。等級区分が全国で統一されていないという特徴があります。国の通知ではA(重度)・B(それ以外)の2区分が示されています。ですが、実際の運用は都道府県・指定都市ごとに委ねられています。
- 東京都・横浜市:「愛の手帳」1度〜4度
- 神奈川県:A1・A2・B1・B2
- 兵庫県・大阪府など:A・B1・B2
- 名古屋市:「愛護手帳」
判定の目安としては、IQがおおむね35以下の場合に最重度(A・1度など)とされるケースが多いです。他の障害を伴う場合は、IQ50以下で常時の介助が必要であれば最重度とされることもあります。ただしIQだけで決まるわけではありません。日常生活動作や社会適応の状況もあわせて、総合的に判定されます。このため、他の自治体に引っ越すと、同じ状態でも表記される等級名が変わることがあります。転居予定がある場合は、転居先の自治体窓口に事前に等級の読み替えを確認しておくと安心です。
実際は何級の人が多いのか|国の統計で見る等級別の割合
ここまでは制度上の仕組みです。実際の分布を見ると、身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳とでは傾向がまったく逆になっています。厚生労働省の令和3年度福祉行政報告例によると、令和3年度末時点の身体障害者手帳交付台帳登載数は491万98人でした。同時期の衛生行政報告例による精神障害者保健福祉手帳の登載数は126万3,460人です。
| 手帳 | 最も人数が多い等級 | 割合の目安 | 最も少ない等級 |
|---|---|---|---|
| 身体障害者手帳(6段階) | 1級(約157万人) | 全体の約3人に1人 | 5級(約31万人) |
| 精神障害者保健福祉手帳(3段階) | 2級(約74万人) | 全体の約6割 | 1級(約13万人・約1割) |
身体障害者手帳は最重度の1級が最も多く、精神障害者保健福祉手帳では中間の2級が最も多くなっています。逆の傾向が出ている点が興味深いところです。身体障害者手帳で1級が多い背景には、障害の種類別の内訳が関係しています。同じ調査では、身体障害の種類別で肢体不自由が全体の約半数を占めています。次いで心臓・腎臓・呼吸器などの内部障害が約3割です。内部障害は前述のとおり2級・5級・6級が存在しない区分が多いため、1級と4級に人数が集中しやすい構造になっています。
当サイトの独自の見立てですが、精神障害者保健福祉手帳で2級が多いのは次のような理由が考えられます。うつ病や統合失調症の症状が「日常生活に著しい制限」という2級の基準に該当しやすい一方、1級に相当する常時援助が必要な状態までは進んでいないケースが多いためです。あくまで一つの見方として参考にしてください。
等級によって何が変わるのか|税金控除・医療費助成・割引の目安
等級が変わると、税金の控除額や医療費助成、公共交通機関の割引の対象範囲が変わります。代表的な例が税金の障害者控除です。障害者控除についてまとめた記事で扱ったとおり、所得税では一般の障害者控除が27万円、特別障害者控除が40万円です。同居特別障害者の場合は75万円の所得控除になります(住民税はそれぞれ26万円・30万円・53万円)。特別障害者に該当する等級は、身体障害者手帳1〜2級、精神障害者保健福祉手帳1級が代表例です。
医療費助成についても等級差は大きいものです。自治体によっては精神障害者保健福祉手帳の1級のみ医療費が無料になり、2級・3級は対象外(または一部負担)という運用も見られます。障害者手帳のメリットに関する記事でも、同じ自治体内で1級と3級の間に助成の有無という大きな差があるケースを紹介しています。「手帳を持っていれば一律に同じ支援が受けられる」わけではありません。等級によって受けられる範囲が大きく変わるという前提を、押さえておくことが大切です。
一方で、等級を問わず一律で使える割引もあります。映画館の割引(多くの映画館で本人1,000円程度)は、手帳の種類にかかわらず使えることが多いものです。すべてが等級次第というわけではない点も、あわせて知っておくと実際の生活設計がしやすくなります。
「手帳の等級」「障害年金の等級」「障害支援区分」は別物|混同しやすい3つの制度を整理
障害者手帳の等級・障害年金の等級・障害支援区分は、名前が似ているために混同されがちです。ですが、判定する機関も基準もまったく別の制度です。この違いを整理しておくと、それぞれの申請でつまずきにくくなります。
| 制度 | 判定機関 | 等級・区分 | 目的 |
|---|---|---|---|
| 障害者手帳の等級 | 都道府県・指定都市(医師の診断書をもとに判定) | 手帳の種類ごとに異なる | 税金控除・医療費助成・割引の対象を示す |
| 障害年金の等級 | 日本年金機構(認定医が診断書・病歴等を審査) | 障害基礎年金1〜2級、障害厚生年金1〜3級 | 年金給付の対象・金額を決める |
| 障害支援区分 | 市町村(認定調査員による80項目の聞き取り調査+医師の意見書) | 区分1〜6(非該当を含む) | 障害福祉サービスの利用量を決める |
特に紛らわしいのが、手帳と障害支援区分の関係です。「数字の意味」が逆になっています。手帳は数字が小さいほど重度です。障害支援区分は逆に、数字が大きいほど支援の必要度が高いという並びになっています。障害支援区分の詳しい判定の流れは障害支援区分とは何かをまとめた記事で解説しています。
障害年金との関係も注意が必要です。「身体障害者手帳1級を持っていれば障害年金も1級になる」とは限りません。手帳と年金は審査機関も認定基準も別だからです。手帳2級でも障害年金は不該当というケースもあります。逆に、手帳を持っていなくても障害年金は受給できるケースもあります。ある社労士系の解説動画では、政府統計をもとにした整理が紹介されていました。身体障害者手帳1級を持つ方のうち、障害基礎年金1級に該当する割合はおおむね4割前後にとどまり、残りは2級や不該当に分かれるという内容です。手帳の等級が高い(重い)ほど、年金も上位等級に該当しやすい傾向はあります。ただし完全に連動するわけではないという点は、ヘッジしておく必要があります。精神障害者保健福祉手帳については判定基準自体が障害年金にほぼ準拠しています。そのため他の手帳よりも、等級の対応関係が比較的強いとされています。
等級はどう決まる?認定から交付までの流れ
等級は、指定医が作成した診断書をもとに判定されます。判定を行うのは、都道府県・指定都市が設置する審査機関です。大まかな流れは以下のとおりです。
STEP1 指定医を受診し診断書を作成してもらう
身体障害者手帳の場合は、都道府県知事等が指定した「指定医」による診断書が必要です。かかりつけ医が指定医でない場合は、市区町村の窓口で紹介してもらえます。
STEP2 市区町村の窓口へ申請書類を提出する
診断書、申請書、顔写真、マイナンバーカードなどの本人確認書類をそろえます。それらを障害福祉課などの窓口に提出します。
STEP3 都道府県・指定都市の審査機関で等級を判定
身体障害者手帳の場合は、身体障害者更生相談所などに配置された医師が判定します。診断書の内容を等級表と照らし合わせて審査する流れです。精神障害者保健福祉手帳の場合は、精神保健福祉センターが判定を行います。
STEP4 交付通知・手帳の受け取り
申請から交付までは、自治体にもよりますが1〜2ヶ月程度が目安です。判定の結果、想定より軽い等級になることや、非該当となることもあります。結果に納得できない場合は、審査請求の制度を利用できます。
まとめ:等級で迷ったら、まず確認したい3つのこと
障害者手帳の等級は、手帳の種類によって仕組みがまったく異なります。同じ手帳の中でも、障害の種類によって用意されている段階数が違います。まず確認すべきことは3つです。①自分がどの手帳を持っている(取得を検討している)のか、②その手帳の中で自分の障害にはどこまでの等級が設定されているのか、③受けたい支援(税金控除・医療費助成・割引)が等級ごとにどう変わるのか。この3つを順番に確認することが、遠回りをしないコツです。判断に迷う場合は、自己判断せずに専門窓口に相談してみてください。市区町村の障害福祉課や、身体障害者更生相談所・精神保健福祉センターなどが相談先になります。
よくある質問
Q1. 障害者手帳の等級は、自分で希望を出して決められますか?
いいえ、等級は本人の希望ではなく、指定医の診断書にもとづいて都道府県・指定都市の審査機関が判定します。想定より軽い等級になることや非該当になることもあります。
Q2. 一番人数が多い等級は何級ですか?
身体障害者手帳では1級が最も多く、全体の約3人に1人です。精神障害者保健福祉手帳では2級が最も多く、全体の約6割を占めています(厚生労働省の令和3年度データ)。手帳の種類によって傾向が逆になっている点が特徴です。
Q3. 障害者手帳の等級と障害年金の等級は同じですか?
同じではありません。判定する機関も基準も別の制度です。手帳の等級が高い(重い)ほど年金でも上位等級に該当しやすい傾向はありますが、完全に連動するわけではありません。それぞれ別に申請・審査を受ける必要があります。
Q4. 療育手帳にも「1級」「2級」という言い方はありますか?
自治体によって異なります。東京都・横浜市の「愛の手帳」は1度〜4度、神奈川県はA1・A2・B1・B2など、自治体ごとに区分の名称・数が違います。全国共通の「級」という表記ではない点に注意してください。
Q5. 等級は一度決まったら一生変わりませんか?
手帳の種類によります。身体障害者手帳は原則として更新不要で、等級もそのままです。精神障害者保健福祉手帳は2年ごとの更新で等級が見直されることがあります。療育手帳も自治体・年齢に応じて再判定があります。
Q6. 身体障害者手帳の等級が全部で7段階なのに、6段階までしか手帳がもらえないのはなぜですか?
7級は単独では手帳交付の対象にならないためです。7級の障害が2つ以上重複する場合や、6級以上の障害と合併する場合は別です。合算して6級以上として認定され、手帳が交付されます。
Q7. 等級によって医療費助成の有無が変わるのはなぜですか?
医療費助成は手帳の制度そのものではないからです。各自治体が独自に設けている「障害者医療費助成制度」によるものです。助成の対象等級・自己負担額は自治体ごとに異なるため、お住まいの自治体窓口で確認する必要があります。
Q8. 等級の結果に納得できない場合はどうすればいいですか?
審査請求(不服申し立て)の制度があります。判定を行った自治体の窓口に相談し、必要書類や手続きの流れの案内を受けてください。追加の検査や医師の意見を踏まえて再度審査されることがあります。


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