この記事でわかること
- 特別支援学校と養護学校が制度上どういう関係にあるか
- 2007年の学校教育法改正で具体的に何が変わったのか
- 今も「養護学校」を名乗る学校が地域によって残っている理由
- 盲学校・ろう学校の名称だけ変わりにくかった背景
- 見学や進路選びの場面で保護者・施設職員が押さえておきたい確認ポイント
Q. 特別支援学校と養護学校の違いは? → A. 呼び方が違うだけで、制度上は同じ学校を指します。2007年の学校教育法改正によって、名称が「特別支援学校」に統一されました。ただし改称は義務ではないため、地域によっては今も「養護学校」の名称がそのまま使われています。自宅の近くにあった「〇〇養護学校」が、いつの間にか「〇〇支援学校」に変わっていて戸惑った、という声を見聞きすることもあります。
この記事では、名称が変わった経緯と2007年の法改正の中身を整理します。今も旧称が残っている理由、そして見学や進路選びの場面で戸惑わないための確認ポイントもあわせて解説します。制度の建前だけでなく、なぜ足並みがそろわなかったのかという背景まで知っておくと、地域による名称の違いに振り回されずに済みます。
特別支援学校と養護学校は同じ?結論から解説
養護学校と特別支援学校、この2つの言葉は別々の制度を指しているのでしょうか。いいえ、養護学校は特別支援学校の旧称です。現在は法律上「特別支援学校」という1つの名称に統一されています。
2007年3月31日までは、障害の種類に応じて「盲学校」「聾学校」「養護学校」という3つの学校種が別々に存在していました。2007年4月1日、学校教育法等の改正によってこれらは「特別支援学校」という1つの学校種に一本化されています。通っている子どもが受ける教育の対象や目的が変わったわけではありません。制度上の呼び方と学校の枠組みが再編されたという理解が実態に近いといえます。
盲学校・聾学校・養護学校がそれぞれ何を対象にしていたか
改正前の3学校種は、対象とする障害によって次のように分かれていました。
改正前の学校種 主な対象 盲学校 視覚障害 聾学校 聴覚障害 養護学校 知的障害・肢体不自由・病弱(身体虚弱を含む)
なぜ「養護学校」から「特別支援学校」に変わったのか
そもそも、なぜわざわざ名称と制度を変える必要があったのでしょうか。直接のきっかけは、複数の障害を併せ持つ子どもが増えたことです。障害種ごとに学校を分ける仕組みでは対応しきれなくなってきました。
改正前の盲学校・聾学校・養護学校では、小学部・中学部に在籍する児童生徒の約43%が複数の障害を併せ持つ「重複障害学級」に在籍していたとされます。障害種ごとに学校を分ける制度のままでは、こうした重複障害のある子どもの教育ニーズに十分応えにくいという課題が指摘されていました。この状況を受け、平成18年(2006年)の学校教育法等改正が行われます。障害種別ごとの学校制度を「複数の障害種別に対応できる特別支援学校」制度へ転換することが決まり、平成19年(2007年)4月から本格実施されました。改正前後の制度の違いは日本障害者リハビリテーション協会の解説資料でも図解されています。
制度改正の背景には、障害者権利条約の理念もありました。障害のある子どもとない子どもが可能な限り共に学べる環境を整えつつ、自立と社会参加を見据えた教育体制を作るという目的です。文部科学省の解説ページでも、通常学級から特別支援学校まで連続性のある多様な学びの場を整備する方針への転換だと説明されています。
2007年の学校教育法改正で何が変わったのか
法律が変わったことで、実際の制度面ではどんな変化があったのでしょうか。大きく分けると「対象障害の複数化」「教員免許の一本化」「地域を支えるセンター的機能の追加」の3点です。
1つの学校が複数の障害に対応できるようになった
改正前は、盲学校なら視覚障害、養護学校なら知的障害・肢体不自由・病弱というように、学校ごとに対象となる障害があらかじめ決まっていました。改正後は違います。設置者の判断により、1つの特別支援学校が複数の障害種別を教育の対象にできるようになりました。重複障害のある子どもや地域の児童生徒数に応じて、柔軟に学部を編成しやすくなった点が実務上の変化です。
教員免許も「特別支援学校教諭免許状」に一本化された
改正前は盲学校・聾学校・養護学校のそれぞれに対応する教員免許が別々に存在していました。改正後は「特別支援学校教諭免許状」という1つの免許制度に統合されています。免許状の中で、担当する障害の領域(視覚障害・聴覚障害・知的障害・肢体不自由・病弱)を定める仕組みに変わりました。
地域を支える「センター的機能」が加わった
改正後の特別支援学校には、新しい役割が加わりました。自校に在籍する子どもの教育だけでなく、地域の小中学校に在籍するLD・ADHD等の子どもへの相談・支援を行う「センター的機能」です。福祉・医療・労働の関係機関と連携しながら、就学前から卒業後まで一貫した支援を担う中核としての役割になります。地域の通常学級を巡回して助言を行う特別支援学校の教員がいるのは、この制度改正が根拠になっています。
今も「養護学校」と名乗る学校がある理由
法律上は特別支援学校に一本化されたはずなのに、なぜ今も「養護学校」という校名を見かけるのでしょうか。校名の変更は法律上の義務ではありません。各都道府県・設置者の判断に委ねられているためです。
検索エンジンの調査要約によれば、全国では養護学校の約8割が特別支援学校などへ校名を変更した一方、盲学校・ろう学校は7割ほどが元の名称を継続して使用しているという傾向が報告されています。設置者ごとの判断に差があるため、この割合はあくまで一つの目安として捉えてください。
私が編集部で自治体の公表資料をいくつか確認したところ、校名変更は今もなお進行中の取り組みだとわかりました。たとえば長野県教育委員会は県立特別支援学校18校のうち、「養護学校」の名称を使う14校を「支援学校」へ改称する方針を示しています。神奈川県も県立29校のうち23校で、同様の校名変更を進めています。鹿児島県では2023年4月に12校の名称を一斉に「養護学校」から「特別支援学校」へ変更しました。こうした動きは、今この記事を書いている時点でも各地で続いています。「養護学校」という校名の学校が、すべて過去のものになったわけではありません。
校名が変わっていなくても制度上の扱いは同じ
校名に「養護学校」が残っている学校もあります。そうした学校であっても、法律上の学校種はすでに特別支援学校であり、教育内容や制度上の位置づけに違いはありません。就学相談や書類の手続きで「〇〇養護学校」という校名を目にしても、呼び方が変わっていないだけです。他の特別支援学校と同じ制度のもとで運営されていると理解して差し支えありません。
盲学校・ろう学校の名称が変わりにくかった背景
養護学校の校名変更は比較的進みました。一方で、盲学校・ろう学校で校名変更が進みにくかったのはなぜでしょうか。ろう教育の現場では、「聾」という言葉そのものに強いアイデンティティと誇りを持つ当事者コミュニティが存在します。校名変更に対する反対の声が上がったためです。
ろう文化を大切にする立場からは、「聾学校」という校名がろう者としての自覚や誇りを育ててきたという捉え方があります。手話やろう文化を継承する拠点としての役割も担ってきました。1994年に採択されたサラマンカ声明でも、手話という独自のコミュニケーション手段を必要とする教育の場として、ろう学校の存在意義が国際的に確認されています。実際に静岡県では2008年度、ろう学校の校名を「聴覚特別支援学校」へ変更しました。その際、県議会は「ろうであることの誇りを尊重する」「他の障害種と統合しない」「手話教育・手話文化をおろそかにしない」という付帯条件をあわせて議決しています。
こうした経緯から、盲学校・ろう学校では校名だけでなく学校としての独立性そのものを維持する判断がされやすい傾向にあります。養護学校よりも旧称が残りやすい背景の一つといえるでしょう。
保護者が知っておきたいポイント
就学先を検討する保護者にとって、この名称の違いはどう関係してくるのでしょうか。見学や資料で目にする校名が「養護学校」であっても「支援学校」であっても、制度上の中身や受けられる教育に差はないと考えて確認を進めてください。
ある保護者の体験談ブログでは、印象的なエピソードが紹介されていました。自宅近くにあった「〇〇養護学校」が、実際に子どもの就学先を検討して説明会に足を運んだタイミングで「〇〇支援学校」に名前が変わっていた、という体験です。名称が変わった理由をあとから調べて、初めて2007年の法改正を知ったといいます。こうした戸惑いは今も起こりえます。資料や地図アプリで古い校名のまま情報が残っていても慌てず、教育委員会の就学相談窓口に現在の正式な校名と対象学部を確認するのが確実です。
見学の際は、校名の新旧だけでなく、対象とする障害の種類(視覚・聴覚・知的・肢体不自由・病弱)や設置されている学部(幼稚部・小学部・中学部・高等部)が学校ごとに異なる点も確認しておきましょう。就学相談がスムーズに進みます。この学部構成や特別支援学級との違いについては、特別支援学校とは?対象・種類・違いで基本から整理しています。高等部から入学するケースや、肢体不自由・知的障害・発達障害といった障害種別ごとの対象範囲を先に確認しておくと、見学時に何を質問すればよいかが見えてきます。スクールバスでの通学条件も、校名にかかわらず学校ごとに規程が異なります。あわせて確認しておきたいポイントです。
施設で働く人が利用者・家族に伝えるときのポイント
障害福祉施設で働く方が、利用者やその家族から「養護学校」という言葉が出てきたときは、どう対応するとよいのでしょうか。まずは「今は特別支援学校という名称に変わっているが、指している学校の種類は同じ」と伝えてください。相手が使っている言葉を否定しない対応が望ましいといえます。
長年支援に携わってきた家族や、卒業してから年数が経っている当事者ほど「養護学校」という呼び方に慣れている場合があります。編集部で複数の自治体資料を確認した限りでも、法律上の名称と現場で使われている呼び方には一定のずれが残っていました。これは利用者側の理解不足ではありません。制度側の移行が、地域ごとに異なるペースで進んだ結果です。書類や制度の説明をする際は、正式名称である「特別支援学校」を基本にしましょう。そのうえで、相手が「養護学校」という言葉を使っていたら同じ学校を指していると補足する、という対応が実務では役立ちます。
また、進路支援やサービス利用の相談を受ける際は注意点があります。障害支援区分とはのように判定の枠組みが異なる隣接制度と混同しないよう、名称の話と制度の話を分けて説明することも意識しておきたいポイントです。
よくある質問
Q. 養護学校と特別支援学校はまったく同じ学校ですか?
A. 制度上は同じ学校種を指します。2007年の学校教育法改正により、盲学校・聾学校・養護学校が「特別支援学校」という名称に一本化されました。校名に「養護学校」が残っている場合でも、法律上の扱いは他の特別支援学校と変わりません。
Q. なぜ校名を変更していない学校が今もあるのですか?
A. 校名の変更は法律上の義務ではなく、設置者である都道府県などの判断に委ねられているためです。検索エンジンの調査要約によれば養護学校の約8割は校名変更が進んだ一方、盲学校・ろう学校は7割ほどが旧称を継続しているとされ、判断は地域差が大きい状況です。
Q. 「〇〇養護学校」に通うと、特別支援学校に通う場合と教育内容が変わりますか?
A. 名称だけの違いであり、教育内容や制度上の位置づけに差はありません。学習指導要領や学級編制の基準などは、校名にかかわらず特別支援学校として共通のルールが適用されます。
Q. 盲学校・ろう学校の校名が変わりにくいのはなぜですか?
A. 「聾」という言葉に強いアイデンティティや誇りを持つろう者コミュニティが存在し、校名変更や統合への反対運動が起きた地域があるためです。静岡県では校名変更の際、手話文化の尊重などを求める付帯条件が県議会で議決されました。
Q. 校名変更はいつまでに完了する予定ですか?
A. 全国一律の期限は設けられていません。2023年に鹿児島県が12校を変更するなど、2020年代に入ってからも改称が続いており、2026年度以降に校名変更を予定している自治体もあります。校名の切り替え時期は自治体・学校ごとに確認してください。
Q. 校名変更にあわせて教育内容も見直されるのですか?
A. 校名変更自体が教育内容の見直しを直接意味するものではありません。ただし、学習指導要領の改訂や地域の実情に応じたカリキュラムの見直しは、校名の変更とは別のタイミングで随時行われています。
Q. 就学相談で「特別支援学校」と「養護学校」のどちらの呼び方を使えばよいですか?
A. 正式名称である「特別支援学校」を使えば問題ありません。相手が「養護学校」と呼んでいる場合も、同じ学校を指しているとわかったうえで会話を続けて差し支えありません。
Q. 校名に「特別支援学校」と入っていない学校は特別支援学校ではないのですか?
A. 校名に含まれていなくても、法律上の学校種として特別支援学校に位置づけられている学校は多数あります。判断に迷う場合は、都道府県教育委員会の特別支援教育担当窓口や学校の公式サイトで学校種を確認してください。
この記事を書いた人:support-s-log編集部
障害福祉・特別支援教育に関する情報を継続的に取材する編集チームです。行政資料や制度解説、専門家・当事者による一次情報をもとに、障害のある方やご家族、福祉施設で働く方・働きたい方に向けて、正確でわかりやすい情報の発信を心がけています。
養護学校と特別支援学校は、2007年の学校教育法改正によって制度上は同じ学校を指す名称になりました。ただし校名の変更は義務ではなく、地域によっては今も「養護学校」という呼び方が残っています。見学や就学相談の場面で校名の新旧に戸惑ったときは、指している学校の中身は同じという前提で、教育委員会や学校の窓口に現在の正式な校名と対象範囲を確認してみてください。


コメント