この記事でわかること
- 特別支援学校の対象となる障害の種類と学部構成
- 特別支援学級・通常学校との具体的な違い
- 教員になるための免許制度から見える学校の位置づけ
- 入学までの流れと卒業後の進路の選択肢
お子さんの就学先を考えているとき、あるいは進路や仕事として関わり始めたとき、「特別支援学校」という言葉の中身が意外とつかみにくいと感じたことはないでしょうか。特別支援学校とは、視覚・聴覚・知的障害・肢体不自由・病弱のいずれかがある子どもを対象に、専門的な教育を行う独立した学校です。特別支援学級や通常学級とは制度上の位置づけが異なり、学級編制の基準や教員の免許制度にも独自のルールがあります。
この記事では、対象となる子どもの範囲・特別支援学級との違い・入学までの流れ・卒業後の進路といった基本情報を整理します。そのうえで、特別支援学校の教員免許制度という切り口から「そこがどんな場所なのか」を掘り下げます。通う側の視点だけでなく、教える側の専門性からも学校の姿を確認していきましょう。
特別支援学校とは?対象となる子どもをわかりやすく解説
特別支援学校とは、学校教育法にもとづいて設置された、障害のある子どもの自立と社会参加を目的とする学校です。「養護学校」という旧称のほうになじみがある方もいるかもしれませんが、学校教育法の改正によって現在は特別支援学校という名称に一本化されています。名称が変わっただけで、障害のある子どものために教育を行う学校という役割そのものは変わっていません。
対象となる5つの障害
特別支援学校が対象とする障害は、法律上、次の5つに分類されています。
| 障害の種類 | 主な特徴 |
|---|---|
| 視覚障害 | 見え方に困難があり、点字や拡大教材などの配慮が必要 |
| 聴覚障害 | 聞こえに困難があり、手話や補聴機器などの配慮が必要 |
| 知的障害 | 認知や判断に困難があり、生活・学習面での個別支援が必要 |
| 肢体不自由 | 身体の動きに困難があり、移動や動作面での配慮が必要 |
| 病弱(身体虚弱を含む) | 継続的な医療や生活規制が必要な状態 |
肢体不自由と病弱の部門では、通学が難しい子どものために教員が自宅や病院を訪問する訪問教育も行われています。どの部門を設置しているかは学校ごとに異なるため、実際の対象や設置状況は、お住まいの自治体の特別支援教育担当窓口に確認するのが確実です。
幼稚部・小学部・中学部・高等部の学部構成
特別支援学校の学部構成はどうなっているのでしょうか。基本的には通常の学校と同じく、幼稚部・小学部・中学部・高等部の4段階です。すべての学校がこの4学部をそろえているわけではなく、小学部・中学部のみ、高等部のみといった構成の学校もあります。高等部単独の学校は「高等特別支援学校」と呼ばれることが多く、卒業後の就労を強く意識したカリキュラムが組まれている傾向があります。
特別支援学校と特別支援学級・通常学校の違いは?
特別支援学校と特別支援学級、名前は似ていますが何が違うのでしょうか。もっとも大きな違いは、独立した1つの学校か、地域の学校の中にある1つのクラスかという点です。この違いを押さえるだけで、就学先を考えるときの混乱がかなり整理されます。
特別支援学級との違い
特別支援学校は校舎ごと専門の学校である一方、特別支援学級は地域の小学校・中学校の中に置かれるクラスの1つにすぎません。特別支援学級は主に知的障害・肢体不自由・病弱及び身体虚弱・弱視・難聴・言語障害・自閉症及び情緒障害の7種類に分かれており、どの種類の学級があるかは学校ごとに異なります。
特別支援学級は通常学級の友達と一緒に過ごす交流学級の時間があるのが特徴です。地域の学校に通いながら学べる点は特別支援学級ならではのメリットといえます。一方の特別支援学校は、その子の状態に合わせて時間割や環境そのものを組み立てられる点が強みです。どちらが優れているという話ではなく、お子さんの状態や家庭の希望に合うかどうかで選ぶ性質のものだと捉えてください。
通常学級・通級指導との違い
就学先の選択肢は、実際には通常学級・通級による指導・特別支援学級・特別支援学校の4つに分かれます。通級指導は通常学級に在籍しながら、一部の時間だけ別室で個別の指導を受ける仕組みです。特別支援学校は、この4つの選択肢の中でもっとも専門性の高い指導体制を組みやすい環境だといえます。2013年の制度改正以降、決められた基準に当てはまる場合でも、家庭や本人の意見を踏まえて総合的に就学先を決められる仕組みになっている点も押さえておきたいポイントです。
特別支援学校ではどんな学び・支援が受けられる?
特別支援学校での学びは、通常の学校の授業とどう違うのでしょうか。教科の学習に加えて「自立活動」という特別支援学校独自の指導領域があり、少人数の学級編制のもとで一人ひとりに合わせた指導が行われます。
少人数の学級編制
学級編制の基準は法律で定められています。根拠となるのは「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」です。この法律にもとづき、特別支援学校の小学部・中学部は1学級6人、高等部は1学級8人を標準としています。障害を複数併せ持つ子どもで編制する学級では、3人が標準です。この基準をもとに各都道府県の教育委員会が具体的な学級編制や教員配置を決定しており、詳しい制度の全体像は文部科学省の特別支援教育の現状ページでも確認できます。1クラスに教員が複数配置されることも珍しくなく、通常の学校に比べてかなり少人数の環境で学べる仕組みになっています。
自立活動と個別の教育支援計画
特別支援学校の教育課程は、特別支援学校学習指導要領をもとに、子ども一人ひとりの障害の状態や発達の程度に応じて編成されます。教科の学習に加えて、日常生活動作の習得やコミュニケーション、身体機能の向上を目的とした「自立活動」の時間が設けられているのが大きな特徴です。一人ひとりの目標や支援内容を明文化した「個別の教育支援計画」にもとづき、学校・家庭・医療や福祉の関係機関が連携しながら指導を進めます。
【教員の視点から】特別支援学校とはどんな場所か
ここまでは通う子ども側から見た特別支援学校を整理してきました。ここからは少し視点を変えて、教員側から見た特別支援学校がどんな場所なのかを確認します。実は、特別支援学校の教員免許制度を知ると、この学校が「教育のプロフェッショナルがさらに専門性を積み増す場所」でもあることが見えてきます。
特別支援学校教諭になるには基礎免許状が前提
特別支援学校の先生になるには、特別支援学校教諭免許状だけを取得すれば十分なのでしょうか。答えは「いいえ」です。特別支援学校教諭免許状は単独では取得できず、幼稚園・小学校・中学校・高等学校いずれかの普通免許状(基礎免許状)を保有していることが前提条件になっています。基礎免許状の上にさらに専門の免許を積み増すという構造になっているわけです。
つまり特別支援学校の先生は、少なくとも1つの学校種の教員免許を持ったうえで、特別支援教育に関する専門的な知識・技能を追加で身につけている人たちだということになります。文部科学省の令和5年度調査によれば、特別支援学校教員のうち担当する障害種の特別支援学校教諭免許状を保有している割合は87.2%です。裏を返せば、免許を保有していなくても特別支援学校の教壇に立つことは制度上可能で、現場によって専門免許の保有率にはばらつきがあることになります。取材した現役教員の話でも「基本的には8割ほどの先生が免許を持っている印象」という体感が語られており、この数字とおおむね符合します。
大学で取得するルートと現職教員が積み増すルート
特別支援学校教諭免許状の取得ルートは、大きく分けて2つあります。
このため、「特別支援学校の先生=経験豊富なベテラン教員だけがなれる場所」という理解は、半分正しく半分不正確です。実務経験ルートで専門性を積み増す教員がいる一方で、大学で基礎免許状と専門免許状を同時に取得し、新卒で特別支援学校に着任するケースも実際にあります。教育のプロフェッショナルが専門性を上乗せしていく場所という位置づけを軸にしつつ、経験豊富な教員が現場での実務経験を経て目指すルートもあると理解しておくと、実態に近い像がつかめるはずです。
免許の取り方について現役の支援学校教員に話を聞いたところ、大学の学部・学科によって取得できる免許の組み合わせが異なるため、進学前に各大学の案内で確認する必要があるとのことでした。また、すでに教員になった後で自治体が開く夏季・冬季の講座や、放送大学のような通信制の課程を利用して免許を取り増すルートもあるといいます。実務経験ルートの具体的な条件は自治体ごとに定められており、たとえば滋賀県教育委員会や鳥取県教育委員会が、必要な単位数や職務経験の年数を公式サイトで公開しています。採用試験についても、自治体によっては特別支援学校と地域の学校を同じ試験区分で実施する場合があります。この場合、合格後に配属先が決まる仕組みになるため、志望する学校種がある方は募集要項を必ず確認しておいてください。
特別支援学校に入るまでの流れは?
特別支援学校への就学は、どのような手順で決まるのでしょうか。多くの場合、居住する自治体の教育委員会が実施する「就学相談」を起点に、面談・見学・専門家を交えた話し合いを経て就学先が決定します。
一般的な流れは、おおむね次のようになります。
- 教育委員会の就学相談窓口に相談を申し込む
- 就学時健診や発達の状況確認を受ける
- 特別支援学校・特別支援学級の見学や体験に参加する
- 教育委員会・専門家・保護者が話し合いながら就学先を検討する
- 学識経験者や専門家で構成される会議での審議を経て就学先が決定する
相談の申し込み時期や締め切りは自治体ごとに異なりますが、二次相談の連絡が8月以降になるケースもあるため、早めの相談を心がけておくと安心です。特別支援学校を希望する場合でも、学区の小学校での面談や特別支援学級の見学をあわせて行うよう案内されることが一般的です。一度決まった就学先も、その後の様子を踏まえて「転学」という形で見直すことができます。迷ったときも、決める前も、まずは教育委員会の就学相談に相談してよいというのが基本的な考え方です。
特別支援学校を卒業した後の進路は?
特別支援学校の高等部を卒業した後、どのような進路があるのでしょうか。就職、福祉サービスの利用、大学等への進学という大きく3つの方向性があり、在学中の職業教育や実習を通じて進路を決めていくのが一般的な流れです。
高等部では、企業への就職を見据えた職業教育や現場実習に力を入れている学校が多く、特に高等特別支援学校と呼ばれる学校では就職率が高い傾向にあると語られています。就職先は障害者雇用枠を中心に、事務・軽作業・清掃・接客補助など幅広い職種にわたります。就職以外の進路としては、就労移行支援事業所や就労継続支援事業所などの福祉的就労を利用する道もあり、本人の状態や希望に応じて段階的にスキルを積んでいくケースも少なくありません。福祉サービスを利用する際には障害支援区分の認定が必要になる場合があり、卒業後の生活設計を考えるうえで早めに知っておきたい制度の一つです。大学や専門学校への進学を選ぶ生徒もいますが、割合としては就職や福祉サービスの利用が中心になる学校が多いのが実情です。卒業後の暮らしを経済面から支える制度としては、障害者控除のように税負担を軽くする仕組みもあわせて知っておくと、将来設計の選択肢が広がります。
実際に通った人はどう感じているのか
制度の説明だけでは見えてこない部分として、実際に特別支援学級や特別支援学校に通った経験者の声にも触れておきます。ここで紹介するのはあくまで一個人の体験にもとづく一例であり、すべての学校・すべての生徒に当てはまるものではありません。
ある卒業生は、特別支援学級時代について、校外学習や合同学芸会など学校の外の人と関わる機会が多く、社交的な性格を育てられたことや、自分のペースで学べたことで得意なことを伸ばせたと振り返っています。一方で、周囲との間に一度距離ができると関係を築き直しにくく、いじめの対象になりやすいと感じた経験や、それが二次的な不調につながったと感じた経験も語られていました。
高等部段階で「高等特別支援学校」に進学した別の卒業生は、就職を前提にした職業教育が中心で、校則がかなり厳格だったと感じたと話しています。就職率の高さというメリットと、学校生活の自由度が制限される厳しさ。本人はそのどちらも実感したと振り返っています。進路選びの際は「就職支援の手厚さ」と「学校生活のスタイル」のどちらを重視するかを、事前の見学や体験で確認しておくことが大切だとわかります。規律の厳しさや校則の内容は学校ごとの差が大きい部分のため、進学を検討する際は必ず個別に見学・確認してください。
よくある質問
Q. 特別支援学校と養護学校は同じものですか?
A. はい、同じ学校を指します。学校教育法の改正により、視覚障害・聴覚障害・知的障害などの学校種別を一本化し「特別支援学校」という名称に統一されました。学校名としては、改称後も「〇〇養護学校」の名称を使い続けている学校もあります。
Q. 発達障害だけでは特別支援学校に入れませんか?
A. 発達障害の診断があっても、知的障害等の他の要件を満たさない場合は、特別支援学校ではなく特別支援学級や通級による指導が案内されることがあります。判断は自治体の就学相談を通じて総合的に行われるため、まずは相談窓口に確認してください。
Q. 特別支援学校に入るには療育手帳が必要ですか?
A. 学校や障害種によって必要書類は異なりますが、知的障害を対象とする学級・学校では療育手帳や医師の診断書などにより障害の状態を確認されるのが一般的です。療育手帳は身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳とあわせて「障害者手帳」と総称されることもありますが、対象や交付元が異なる別の制度です。手帳ごとの障害者手帳のメリットや等級による違いもあわせて確認しておくと理解が深まります。手帳を取得していない場合の対応も含め、就学相談で確認しておくと安心です。
Q. 特別支援学校の先生になるのに特別な資格は必ず必要ですか?
A. 制度上は、特別支援学校教諭免許状がなくても、幼稚園・小学校・中学校・高等学校いずれかの教員免許があれば授業を担当すること自体は可能です。ただし文部科学省の調査では担当障害種の専門免許保有率は87.2%(令和5年度)となっており、多くの現場で専門免許の取得が進んでいます。
Q. きょうだいが特別支援学校に通う場合、通常学級のきょうだいと交流する機会はありますか?
A. 学校や地域によっては、居住地の小学校・中学校との「交流及び共同学習」という形で、保護者の同行のもとに地域の子どもたちと関わる機会が設けられています。実施の有無や内容は学校ごとに異なるため、担当の先生に確認してみてください。
Q. 一度特別支援学校に決まったら、通常の学校に転校することはできませんか?
A. 転学は可能です。就学先は一度決めたら固定というものではなく、その後の子どもの様子を踏まえて教育委員会に相談しながら見直すことができます。転学には手続きや相談の期間が必要になるため、迷い始めた時点で早めに教育委員会へ相談してください。
Q. 特別支援学校の高等部だけに入学することはできますか?
A. できます。小学部・中学部を地域の学校で過ごし、高等部から特別支援学校(高等特別支援学校を含む)に入学するケースは珍しくありません。就職を意識したカリキュラムを求めて高等部から選択する家庭もあります。
特別支援学校は、障害のある子どもの自立と社会参加を支えるために設計された、専門性の高い教育の場です。対象となる障害の種類や学部構成、特別支援学級との違いといった基本の制度理解に加えて、教員免許制度から見えてくる「専門性を積み増していく場所」という側面も押さえておくと、この学校の姿がより立体的に見えてきます。就学先や進路を検討する際は、この記事の内容を出発点にしつつ、必ずお住まいの教育委員会の就学相談や学校見学を通じて、お子さんに合った選択肢を確認してください。


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